予知部と弱気な新入生

小森 輝

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予知部と二人の初任務

予知部と弱気な新入生 65

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「あぁ。ちゃちゃ丸さん、これが欲しかったんですね」
 愛先輩から貰っていた猫缶をポケットから取り出して、ちゃちゃ丸さんに見せると、飛びついてきた。
「そうだよ。これだよ。しかも、これはなかなか値が張る猫缶じゃないか!」
「あっ……ちょっと、ちゃちゃ丸さん。そんなに引っ張ったら駄目ですって」
 餌で釣っているとはいえ、ここまでグイグイ来てくれると、猫好きな私にとっては堪らないシチュエーションだ。でも、このままでは話が進まない。
「この……放せ……これは俺のものだ……」
「ちゃちゃ丸さん、待て! 待てですよ、待て。待てぐらい分かりますよね?」
「知るかそんなもの! 俺は犬じゃないんだぞ!」
 全く聞く耳を持たない。これが食べ物の力という奴か。なら、こちらも強行させてもらうしかない。
「もう……ちゃちゃ丸さん……駄目って言ってるじゃないですか!」
 猫缶に引っかかっている爪を器用に外して、ちゃちゃ丸さんが届かない高さまで持ち上げた。
「この……。いい加減にしないと、このスカーレットネイルと呼ばれた俺の爪の鋭さを見せることになるぞ! その綺麗な足を血塗れにしてやるからな!」
 ちゃちゃ丸さんは、牙を剥きだし、丸みがかった爪を見せびらかしている。威嚇されているのは分かるが、それも可愛いと思ってしまう。でも、血塗れは流石に嫌なので、黙って眺めている訳にはいかない。
「駄目ですよ、ちゃちゃ丸さん。そんなことをしたら上げませんからね」
「上げないって、それは昨日の報酬だろ! それを渋るなんて……。これだから後払いは……」
 ちゃちゃ丸さんは、見せつけていた爪で地面を引っかいている。よほど悔しかったのだろう。
 カリカリと音を鳴らしているが、事情を知らなければ爪とぎをしている可愛い猫にしか見えない。
「それじゃあ、私の話、聞いてくれますか?」
「話ぐらいは聞いてやる。だけど、必ず、その猫缶は渡せよ」
「分かってますって」
 一時は、ちゃちゃ丸さんが聞き分けのない悪い野良猫になりそうだったが、どうにか分かり合えたようだ。
「それで、どんな話だ。答えられることがあったら答えてやる」
「ありがとうございます、ちゃちゃ丸さん」
 なんだかんだ言いつつも、ちゃちゃ丸さんは優しい猫ちゃんなのだ。その優しさに甘えて、話を聞いてもらおう。
「一応、先に言っておくと、気のせいかもしれない話なんですけど、いいですか?」
「なんだ。確証もない話なのか」
「そうなんですけど、悪霊かもしれないって話で……」
「悪霊か……。それは気のせいかもでは済まないな」
 やはり、ちゃちゃ丸さんも愛先輩と同様に悪霊を危険視しているようだ。
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