27 / 71
重なり合う運命
ゲームのキャラに恋するのは規約違反ですか? 27
しおりを挟む
作りすぎたと思っていたが、コルテは私の料理を沢山食べてくれた。それら全てに「好きだ」と言ってくれたが、切って盛りつけただけのサラダにまで言われるのは、なんだか複雑だ。
「もう食べれない……。これが満腹の弱体効果なのか」
「弱体って……どちらかというと、最大体力上昇とかのでしょ」
「体力を確認することも出来ないからな……。でも、仮に最大体力が上昇していたとしても、この移動能力低下は間違いなく弱体化だよ」
「移動能力低下?」
私が作った料理に悪いものが入っていたのかと思ったが、すぐに、もっと単純な原因だと理解した。
「あぁ、満腹で動けないってことね」
なんて幸せな弱体効果なんだ。
動けない今のうちに、料理に使った食器を洗い始めた。二人分の食器を洗うのは、初めてかもしれない。
「弱体効果も直に消えるだろうし、そしたら、何をするんだ? 料理を食べたってことは、やっぱりダンジョン? このマップは初めてだからな……。どんなモンスターがいるか楽しみだ」
「モンスターなんかいないし、これから……」
これから、私には役目がある。公務員として市役所で働くという役目が。
ただ、あれだけの量の朝食を食べていたので、いつも家から出ている時間はすでに過ぎていた。
「やっば……」
とりあえず、準備しなければ。
急いで、寝室に入って、クローゼットを開けた。
ファッションは、この際どうでもいい。部屋着を脱いで……。
「はっ……」
部屋着だから当たり前なのだが、ずっとコルテとノーブラで接していた。つまり、最初、起きあがらせてくれた勢いで抱きついてしまったとき……。
「そんな……」
今更だが、恥ずかしさのあまり、顔から蒸気が出そうだ。
「どうしたんだ? 急に」
そんな切羽詰まった状況で、コルテの声が近づいている。
「ちょ、ちょっと待って! 入らないで! そこで待っていて!」
こんな上半身をコルテだろうが男性に見せるなんてこと出来ない。
「あ、あぁ、分かった」
コルテにすけべな下心がなくてよかった。
コルテが寝室に入ってくるはことなく、着替えを終わらせた。後は化粧を……。
「スッピンだった!」
一人暮らしなんだから、帰ったらすぐに化粧を落とすのなんて当たり前だ。突然、魔法陣から理想の男性が出現するなんて、予想できるわけがない。もし、眉毛を全部剃っていたら、一生、後悔していたかもしれない。剃っていなくても、後悔する事には変わりないのだが。
「最悪……」
後悔で泣きたい気持ちだが、泣いていては化粧が出来ないので、必死に堪えて化粧を終わらせる。
「よし、出来た」
いつもより控えめな化粧だが、そもそも公務員なのだから、濃い化粧よりは印象がいいだろう。
とりあえず、準備はできた。時間も、安全運転をしてまだ間に合う。
「急がなきゃ」
寝室のドアを開けると、コルテが目の前で待っていた。
「あ、あの……どう、かな?」
服装は直感で選んだし、化粧は控えめ。髪なんて手櫛で解いただけだ。
「今までの桐江玲もかわいかったけど、今の桐江玲も綺麗だよ」
「……ありがとう。それと、私のことは玲でいいよ。フルネームだと長いから」
「そうか? ルイルルスイールグルドなんて長い上に言いにくい名前の奴もいるけど」
あの赤髪に猟銃を持ったプレイヤーの名前だ。こんな時に私の邪魔をしてくるなんて。
「まあ、君がそう言うんなら、そう呼ばせてもらうよ、玲」
「ありがとう、コルテ」
一歩前進、なのだろうか。
自分のキャラクターに、こんな気持ちを抱くなんて。
でも、今は考えないようにしよう。
動揺してしまったら交通事故を起こしてしまうかもしれないから。
「夜には帰ってくるから。それじゃあ、行ってきます」
「あ、あぁ、行ってらっしゃい」
行ってきますも行ってらっしゃいも何年ぶりだろう。こんなにいいものだったなんて、思わなかった。
「もう食べれない……。これが満腹の弱体効果なのか」
「弱体って……どちらかというと、最大体力上昇とかのでしょ」
「体力を確認することも出来ないからな……。でも、仮に最大体力が上昇していたとしても、この移動能力低下は間違いなく弱体化だよ」
「移動能力低下?」
私が作った料理に悪いものが入っていたのかと思ったが、すぐに、もっと単純な原因だと理解した。
「あぁ、満腹で動けないってことね」
なんて幸せな弱体効果なんだ。
動けない今のうちに、料理に使った食器を洗い始めた。二人分の食器を洗うのは、初めてかもしれない。
「弱体効果も直に消えるだろうし、そしたら、何をするんだ? 料理を食べたってことは、やっぱりダンジョン? このマップは初めてだからな……。どんなモンスターがいるか楽しみだ」
「モンスターなんかいないし、これから……」
これから、私には役目がある。公務員として市役所で働くという役目が。
ただ、あれだけの量の朝食を食べていたので、いつも家から出ている時間はすでに過ぎていた。
「やっば……」
とりあえず、準備しなければ。
急いで、寝室に入って、クローゼットを開けた。
ファッションは、この際どうでもいい。部屋着を脱いで……。
「はっ……」
部屋着だから当たり前なのだが、ずっとコルテとノーブラで接していた。つまり、最初、起きあがらせてくれた勢いで抱きついてしまったとき……。
「そんな……」
今更だが、恥ずかしさのあまり、顔から蒸気が出そうだ。
「どうしたんだ? 急に」
そんな切羽詰まった状況で、コルテの声が近づいている。
「ちょ、ちょっと待って! 入らないで! そこで待っていて!」
こんな上半身をコルテだろうが男性に見せるなんてこと出来ない。
「あ、あぁ、分かった」
コルテにすけべな下心がなくてよかった。
コルテが寝室に入ってくるはことなく、着替えを終わらせた。後は化粧を……。
「スッピンだった!」
一人暮らしなんだから、帰ったらすぐに化粧を落とすのなんて当たり前だ。突然、魔法陣から理想の男性が出現するなんて、予想できるわけがない。もし、眉毛を全部剃っていたら、一生、後悔していたかもしれない。剃っていなくても、後悔する事には変わりないのだが。
「最悪……」
後悔で泣きたい気持ちだが、泣いていては化粧が出来ないので、必死に堪えて化粧を終わらせる。
「よし、出来た」
いつもより控えめな化粧だが、そもそも公務員なのだから、濃い化粧よりは印象がいいだろう。
とりあえず、準備はできた。時間も、安全運転をしてまだ間に合う。
「急がなきゃ」
寝室のドアを開けると、コルテが目の前で待っていた。
「あ、あの……どう、かな?」
服装は直感で選んだし、化粧は控えめ。髪なんて手櫛で解いただけだ。
「今までの桐江玲もかわいかったけど、今の桐江玲も綺麗だよ」
「……ありがとう。それと、私のことは玲でいいよ。フルネームだと長いから」
「そうか? ルイルルスイールグルドなんて長い上に言いにくい名前の奴もいるけど」
あの赤髪に猟銃を持ったプレイヤーの名前だ。こんな時に私の邪魔をしてくるなんて。
「まあ、君がそう言うんなら、そう呼ばせてもらうよ、玲」
「ありがとう、コルテ」
一歩前進、なのだろうか。
自分のキャラクターに、こんな気持ちを抱くなんて。
でも、今は考えないようにしよう。
動揺してしまったら交通事故を起こしてしまうかもしれないから。
「夜には帰ってくるから。それじゃあ、行ってきます」
「あ、あぁ、行ってらっしゃい」
行ってきますも行ってらっしゃいも何年ぶりだろう。こんなにいいものだったなんて、思わなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
夢見るシンデレラ~溺愛の時間は突然に~
美和優希
恋愛
社長秘書を勤めながら、中瀬琴子は密かに社長に想いを寄せていた。
叶わないだろうと思いながらもあきらめきれずにいた琴子だったが、ある日、社長から告白される。
日頃は紳士的だけど、二人のときは少し意地悪で溺甘な社長にドキドキさせられて──!?
初回公開日*2017.09.13(他サイト)
アルファポリスでの公開日*2020.03.10
*表紙イラストは、イラストAC(もちまる様)のイラスト素材を使わせていただいてます。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる