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真の災難

ゲームのキャラに恋するのは規約違反ですか? 46

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 結局、車に荷物を置いてから、ショッピングセンターに戻ることはなかった。
 帰り道にあるスーパーで食品を買って、全ての用事が済んだのは午前中の出来事だ。
「食べ物が悪くなってもいけないから、とりあえず、帰りましょうか」
「あぁ、分かった」
 外の世界が気になっている割には、あっさり帰るのを許してくれた。
 車に乗っている間も静かだし、マンションに着いてからも文句も言わずに荷物を運んでくれた。
 あんなにワクワクしていたのに、そんなにつまらなかっただろうか。確かに、私もつまらない世界だと思ったから、それを補うためにイリス・オンラインを始めた。でも、コルテはまだこの世界を知って二日も経っていない。まだまだ、知らないことはたくさんある。
「あのさ、コルテ。もう少し、私と一緒に外を散歩でもしてみない?」
「いいのか?」
「もちろん!」
 まだ、この世界を楽しんでくれるようだ。
「とりあえず、ランチでも行きましょう」
「ご飯か……それなら、家で食べないか? 食料も買ったんだし。俺の料理レパートリーは朝食では披露しきれなかったからな」
「分かった。それなら、私も手伝おうかな」
 二人で料理に取りかかった。
 ピクニックでもないのに、なぜかサンドイッチを作り、部屋で食べたのだが、これで午後にどこへ行くのかが決まった。
 私はインドア派なので、気晴らしをするとしたら、映画とかカラオケとかになるのだが、コルテは違う。体を動かせるアウトドアな何かがいいだろう。そこで、先ほど思いついた場所が適している。
「午後からは、公園に行きましょう!」
「公園か。確か近くに大きな公園があるらしいな」
「たぶん、その公園。嫌なら別にするけど……」
「いいや、そんなことはない」
「じゃあ、公園に決まりね」
 多少の遊具はあるが、コルテがそれで遊ぶことは想定していない。むしろ、遊ぼうとしたら止めるだろう。
 そう言うことではなく、芝生の上で寝転がって日向ぼっこをしたり、木々を見ながらゆっくり歩いたりしようと考えている。
 毎日が戦いだったコルテにとって、少しでもこの世界が癒やしになってくれればそれでいい。ゲームの中にいたときは、私の我が儘で無理をさせることが多かった。そんな我が儘に答えてくれたコルテには少しでもいいから休んでもらいたい。まあ、コルテが休むような性格じゃないのだが。スキルも禁止されている今、公園で体を動かすと言ったら、走るぐらいしかなさそうだ。それはそれでいいし、ゆっくりすると言えばゆっくりしたらいい。その辺は、公園に着いてから決めよう。
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