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4話 初めてのスキル
しおりを挟む「嫌です、コンビニで働きます」
「ダメだよ!ここで働くの!私のためにと思ってここで働いてほしいな!!」
瑠衣は、絶対に引くもんかと言わんばかりに顔をしかめている。
「り、理由はなんなんですか?」
「いやね?私、ここの事務所で働いているんだけど、最近良いモデルがいなくてね……まぁそれもこれも、あの子が人気すぎるのもあるんだけど。それで、業績が落ちてて……どこかに良い素材が転がってないかなって思ってたら、君を見つけたんだよ!!確かに!あの子よりはカッコ良くない!!だからこそ!そこがいいの!それに、お給料もいいわよ?有名になれば親が見つけてくれるかもしれないし?」
瑠衣は、よく分からない理屈で達也をどうにか丸め込もうと見え見えだった。
だが、達也は一つ気になっていることがあった。
瑠衣が言っている『あの子』
「あの、そのあの子って誰のことなんですか?」
「え?そんなに決まってるじゃない、国の宝石『弥生 実』だよ。最近は、どこもかしくも弥生、弥生って。モデルはもちろん、ドラマに映画にアニメの声優までやってる始末よ。まぁあの子に勝って!って言ってるわけじゃ、な」
「やらしてください。弥生よりも、人気になってみせます。いや、人気にならなくても弥生の人気を落とすことはできます。その為の努力だったら、何でもします」
達也の表情は一変し無表情で瑠衣を見つめている。
「え!?いいの!?普通こんな話聞いたら断るのに……ものすごい、執着を感じるわ。まさか、復讐とかだったりしてね」
瑠衣の推理は相変わらず、キレッキレだった。
もちろん、達也が了承したのには理由がある。
それは、有名になりたいからとは違う。
達也の狙いは、瑠衣のコネクション……いわゆる、繋がりであった。
元々、何かの繋がりがないと弥生には会えないと思っていた。だが、その繋がりを作る当てが達也には全くなかった。
それができる人間が今、目の前にいて自分をその道へ引き摺り込もうとしていた。
こんな上手い話があって良いのかと思ったが、謎の声が言っていた『サービス』を思い出して、どこか安心した。
「あはは!まぁ、想像にお任せしますよ」
「怪しい……まっ、働いてくれるなら理由は聞かないわ。それじゃあ、お礼と言うことで……」
「へ?」
瑠衣はゆっくりと立ち上がり、達也の方は歩いてきた。
ーーえ、え、え!え!?お礼ってまさか、まさか!!了承しただけなのに!?まだ、何も成し遂げてないのにお礼もらっちゃって良いんですか!?あ、やばい!近い!!
瑠衣は、どんどん達也に近づいてきた。
達也の心臓は、爆音となり視界が鼓動に合わせて揺れている。
ーーあの人が誰か知らないけど、最高のサービスだよ。あぁ、もう手の届く距離に……
達也との距離が、手の届くほどの近い距離に瑠衣が来た。
ズボンから出ているきめ細かく白い肌!たるみのないハリのある太もも!頬擦りしたくなる程綺麗な足!そして、目の前をゆっくりお通過していく。
その後を、甘くもサッパリとした匂いが追いかけて行った。
ーーあれ……え?
瑠衣は、達也の前を通り過ぎると厨房は向かっていった。
「良し!今日は久々に気合い入れて作るね!嫌いなものはある?」
ーーあぁ、料理か。いや、嬉しいよ?すごくお腹空いてるし。でも、そうか、そんなに甘くはないか。
「嫌いなものは……淡い期待ですかね……とほほ」
「え?なんて言った??豆腐が嫌いなの?」
「げ、口に出てたのか。はい、豆腐が嫌いです!もう、見るのも辛いです」
「うふふ。君は変わってるね。分かったよ、豆腐は出さないようにするね」
瑠衣は、エプロンを着ると冷蔵庫から数種類の野菜と肉のような物を出し炒め始めた。
ーー独人暮らしだったから、手料理って久々だな……いや、女の子の手料理は、母親以外だと初めてだな。
「よし!出来た!持っていくから机のリモコンどかして」
「了解です!」
机の上にある、リモコンをどけると目の前には大皿に乗った野菜炒めに、昨日の残りなのか炊き込みご飯が一緒に出てきた。
「ごめんね、余り物もあるけど味は保証するよ!」
「ありがとうございます!頂きます!」
野菜炒めを箸で掴み、ゆっくりと口へ運ぶ。
近づくにつれ香ばしい香りが鼻を刺激し、口元に触れ熱を感じながら舌の上に優しく置いた。
「ぶふぉ!?」
ーーなんっっだこれ!!やばい、やばいよこれ。あまい、ものすごく甘い。何入れたらこんなに甘くなるんだよ。
「あれ?もしかして猫舌だった?冷ましてあげよっか?」
瑠衣は、揶揄うように野菜炒めに息を吐き冷まし始めた。
「いや、いや、猫舌なのかな?あ、そうかも知れないです!また舌が痛いので、自分で冷ましますよ」
「ふーふーそんなこと気にしないの。うふふ、はい、あ~ん」
瑠衣は、ニヤけながら地獄のスパイスが掛かった野菜炒めを口元は運んできた。
ーーっく、食えってか?食べろって言うのか!食べたく無い……非常に食べたく無い。でも、食べるしか無い。この人が居なければ僕の復讐を成し遂げることは出来なくなる。そうだ、この人が居なければ……たかが、甘ったるい野菜炒めを食べるだけで良いのなら安い物だ!!
「あ、あ~ん……っく」
達也は、口元まで運ばれた野菜炒めを口に入れた。
変わらず、衝撃的なほど甘く豚肉の油が混ざり異質な味を作り出していた。
「っく……んぐ!お、おいしいぇす!!」
「うふふ、噛むほど美味しかったのは嬉しいよ。私も食べてみよ~っと」
瑠衣は、持っている箸を使い野菜炒めをとった。
ーーあ、あれは間接キス!!っく、逆がよかった。でもこれが美味しいって瑠衣さんの舌はやばいのかもしれない……
「んぶばほ!?まっっず!なにこれ!」
瑠衣は、あまりの不味さに達也の顔に二噛み程された野菜炒めを吹き出した。
達也の顔は、豚肉と甘い匂いのする野菜炒めに包まれた。
「た、達也くん!ごめん!わたし、顔にかけちゃった!すぐタオル持ってくるからまってて!」
「あはは、全然大丈夫ですよ!」
ーー間接キスは出来なかったけど、頬に関節的にキスをされたんだ……ラッキー。
そのあと、達也は綺麗に拭かれ新しいおかずを作ってもらった。
「それで、僕はいつから働くんですか?」
「ん~そうね……なら明日は、顔出ししよっか」
「あ、はい!わかりました!」
「よし!なら、明日は早いからもう寝ようか」
「あの……僕ってどこに寝れば」
「もちろん、あるとも!はい!これ使って」
「あ、はい……」
達也に出されたのは簡易的な組み立てベットだった。
最初はあれやこれやと期待していたが、世の中そんなに甘く無いことを痛感していた。
「達也くんおやすみ、また明日ね」
「はい!おやすみなさい」
瑠衣が寝入って3時間後
「……まだ、寝てるよな」
達也は、ベットの軋む音を最小限にしながら起きた。
けっして、夜這いをしようとしているわけでは無い。
いつなんどきでも、スキルを使えるようにする為に慣らし運転をしようとしていたのだ。
「えっと……まずば……」
達也は、机の上に置いてあったリモコンにスキルを使ってみた。
「手とか翳した方がいいのかな?ちょっと恥ずかしいけど……『透明』。さ、どうだ」
達也がスキルをリモコンに向かって唱えると……
「ん?おぉ!おぉ!!!」
年甲斐もなく興奮した達也の前に置いてあったリモコンから、少しずつ色とりどりの水が流れ出した。
が、問題がすぐに発生した。
リモコンどころか机まで溶け始め、一瞬で全て透明になってしまったのだ。
「いっ!ど、どうしよう!えっと、あ、そうだ!『着色』!」
達也が反対スキルを唱えると、色とりどりの水が空気中から雨のように降り始めた。
それはとても幻想的で、まるで降り注ぐ虹を見ているようにも思えた。
そして、その雨はリモコンと机を一瞬で色付けした。
ーーす、凄すぎる……地味だと思ってたけど思いの外、派手だったな。このスキル使えば、金儲けまでできてしまうな。意外に、この世界で成功してる人間は、スキルを持ってたりするのかもな。
達也の思っていた事は、後に現実となる。
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