ゴルゴーンロンド

狸屋アキ

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1章 ローレン

3話 脱出

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 0723は朝昼晩の飯時、そして入浴着替え時にのみ現れるようだった。
 何をされるのかと思っていたが、毎日毎日なにか検査されるのみでこちらに害はなかった。しかし、それは4日目の朝に起きる。
「…?なんだ…?」
 朝から部屋の外がバタンバタンとうるさい。ドアのステンドグラス部分から眼を凝らすと、解体王と0723ではないメイドと、あと一人はわからない。
「手間をとらせるな。自分の足で歩けんのか醜女よ」
「ヴ…ぁ…」
 一人は女らしく、声をあげているようなのだが、機械をひとつ通したような唸り声だ。
「全く、楽器にしてやろうと思った途端暴れおって。顔から下は美しいものなのだから暴れるな。怪我でもしたら価値が下がる」
 解体王の手が光り、白の十字が現れたと思うと、女の顔(ケープで顔は見えない)を壁に串刺しにした。
「うっ…!?」
 あまりの衝撃にもどしそうになる。が、音を出すと覗いているとばれるので堪える。
「アっ…ぐゥ…ッ」 
 壁に張り付けになった女はもがいている様子であったが、すぐにだらんと肩を落とした。
「そこで大人しくしていろ。明日には美しいヴァイオリンにしてやる」
 楽器。人を楽器に?僕はやはり、ここを出ねばならないらしい。

 夜になった。0723は、とても無防備だったので、ドアを開けられるよう細工するのは簡単だった。音を出さないようドアを開ける。部屋を出ると、朝の女がまだ張り付けのままでそこにいた。
「生きてる…のか…?」
「ウッ、不、」
「待って、抜いてあげるから」
 白の十字を抜こうと掴むが、熱くて触れたものではなかった。
「あっつ…!?え…」
 女の串刺しにされた部分をよく見ると、肉が焼けているものの高速で修復を繰り返しているようだった。
「どうだ、それこそ不死の女。私が今まで探し求めていたもの」
「解体王…」
 声の方向を振り替えると、解体王が佇んでいた。手に大きな鋏を携えている。
「お前は…お前ら王はなんなんだ」
「ふん、良かろう。冥土の土産だ、聞くがよい。我らはこの世の創造神、ファケレ・マリアを守護する者」
「ファケレ…マリア…?」
「貴様は知らんでよい。何故なら

      今から死ぬのだから」
 解体王が飛びかかってくると身構えた瞬間、僕と解体王の間の壁が爆発し僕は巻き込まれ吹き飛び、爆煙のなかに人影が見えた。女を抱えている。
 爆煙が消え、姿がはっきり見える。その青年と言うには若く、少年と呼ぶには老けた男は、金髪を光らせ、紅い目が六つ。腕も六本と異形の形をとっていた。そして、発言する。


「どうも、俺の妹がお世話になりまして」
 
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