ゴルゴーンロンド

狸屋アキ

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3章 壁内の騎士

21話 ローズネクタ

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 あれから起き上がるのに、3日を要した。ベットから起き上がれるようにはなったものの、骨が軋んでいる。
「起きたか、ローレン」
 ユリィだ。あれからうちのバーで働いている。そして、僕の魔眼のいわば家庭教師も兼ねている。それはマスターの一言からだった。
「ユリィに見て貰えばいいじゃねぇか」
 煙草をふかしながら、マスターは言った。
「わ、私?」
 ユリィも驚いていた。確かに、ユリィのが魔眼については僕なんかよりよっぽど使い慣れている。
「今日は、なんの勉強?」
 ユリィは教えるのが存外うまかった。スパルタではあるが、ダビデやディーバがものを教える時よりよっぽどわかりやすい。
「魔眼の契約要素についてだ。これを見ろ」
 いそいそ持ち出したのは小さな黒板だった。黒板には、僕とユリィと思われる人が描いてある。
「私達の魔眼は、便利だが本当の持主にと契約して借り入れているだけだ。だこら力としては、50%使えたらいいほうなんだ。ましてや、ローレンの魔眼は本物じゃない模造品。でもこの間の戦いを見て気付いた。あの力は、契約者の出し得る力じゃない」
 そういうと、ユリィは黒板の僕の隣に蛇、ユリィの隣に骸骨を描いた。ゴルゴーンと死神のつもりだろう。そして、ユリィを赤、死神を青で塗りつぶし、僕と蛇は青で塗りつぶされた。
「お前の中には、ゴルゴーンがいると私は思っている」
 僕の中にゴルゴーンが?
「その通り。実際、お前がリリンと戦った時に出て来た人格はなんだ?」
 僕にもわからない。あの時の記憶なんてまったくないんだから。
「そうか…。しかし私もお前も、違う種族と契約するなんて馬鹿げてるよなぁ」
 自分を嘲笑うような笑みを見せる。そういえばユリィって見かけは僕…人間にそっくりだが、人間ではないんだろうか。
「ニンゲン…?なんだそれ。私はミミコネって種族のビョウという型だ。見ときな」
 ユリィの髪がモゾリと動くと、猫の耳がにょきりと立ちあがる。ピルピルと動いている。
「かわいいね」
「かわっ!?馬鹿言うなよ!これでも壁外でも有数の戦闘民族だぞ。…まあそれも昔か。で、ローレンはそのニンゲンて部族なのか?」
 かくかくしかじかと、このバーにたどり着いた経緯を話す。
「へえ。じゃあなんでその義眼になったかわかんないんだ。難儀だね」
 そうだ。記憶がないというのは億劫だ。何者かもわからないのだから。
「……。それさ、ローズネクタならわかるかもね」
 ローズネクタ。たしか壁内のことだったろうか。
「ローズネクタにはこの世界の秘密が隠されてるんだ。だから、たぶんローレンがどう生まれたかわかるよ」

「……ミミコネがなぜ滅びたかもさ」
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