上 下
14 / 61
1章: Love is hate against itself.

6

しおりを挟む
 小さな衣擦れの音がして、アンリの足元にはらりと布地が落ちた。
「な、な・・・・・・」
「あら、随分と外しやすいパンツなのね。殿方がことを成しやすいためのご配慮かしら?」
「い、いやあぁ!!」
 アンリは羞恥に顔を赤らめて、その場にしゃがみ込んだ。
「立ちなさい。誰が座っていいといったの?」
 半ば強引に、アンリは立たされる。もちろん、下着を付け直す暇は与えられていない。
「そんな脱げやすいパンツを履くあなたが悪いのよ。でもあなた、意外と几帳面なのね」
「何が、言いたいんですか?」
「だって、下の方のお手入れを随分とマメになさっているじゃないの」
「はっ!!」
 アンリは慌てて自分の秘所を手で隠した。
「なるほどね。もしかしてあなた、既に初夜は経験済みではなくて?」
 アンリは涙目のまま、何も言わない。
「どうやら今年は、初々しい新入隊員に混じってとんでもない泥棒猫が紛れ込んでいたようね」
 エリー小隊長は腰の剣を抜いた。
「ひっ!」
 剣先を突き付けられたアンリが腰を抜かす。
「そんな穢れた体を殿下に差し出そうなんて、言語道断。この場で成敗してあげますわ」
「いい加減にしてくれませんか!!」
 アンリの隣から抗議の声が上がった。
 チハルがエリー小隊長を睨みつけている。
「この私に、口答えするつもり?」
 エリー小隊長はまるで動じていない。
しおりを挟む

処理中です...