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1章: Love is hate against itself.
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エリー小隊長との決闘は、チハルの想像以上に長引いた。
持久戦には不利と侮っていたバトルアックスは衰えることなく、一撃でチハルの命を消し飛ばす勢いだ。
いかにチハルが日本刀武術の機敏さで攻撃から逃れようとも、斧の刃はすぐ背中まで迫ってくる。
一つでもミスを冒せば、餌食になることは間違いない。
「ほら、逃げてばかりでは決着がつきませんわよ!」
エリー小隊長の挑発に乗って、一度は反撃の刃を打ち込んだが、斧の厚刃に阻まれて岩に斬りつけているみたいだった。
斧は最強の武器であると同時に、堅牢な盾にもなりえたのだ。
今は逃げ回って、攻撃の隙を探す以外に道はない。
恐ろしいのは、エリー小隊長の膂力と体力の底が計り知れないことだ。
その間に一撃も喰らえば無様な死体を彼女の前で晒すことになるだろう。
その次は、アンリがなで斬りにされることは必至だ。
近衛兵とはいえ、彼女に身を護る術はない。
もとい近衛兵など、王族の見栄えのための飾りに過ぎないはずだった。
本来は戦闘とは皆無のはずで、エリー小隊長のような化け物の方がかえってイレギュラーなのだ。
だからアンリはこの世界に夢を見て、今までの自分を変えようとした。
そんな何の非もない少女の願いが、一人のエゴイズムによって潰されようとしている。
思えば転生前にも、似たような経験があった。
どんなに頑張っても、上司の一言でこれまでの苦労が水の泡になったこと。
手塩にかけて作った初めての作品が、市場で全く売れなかったこと。
だからせめて、アンリには同じ失望を味合わせたくない。
そのためには一歩を踏み出さなければ。
「もう逃げられませんわ!」
疲労するどころか、エリー小隊長は跳躍して斧を振り下ろそうとしている。
ゲームでも大ダメージ確実の跳躍斬りだ。
そういえば、ああいう斬撃をする時は必ず振り下ろす側の足を上げるよう描けって、デザインの先生から言われたのを思い出す。
――あれ? それって、斬撃の軌道が読めるって事じゃん?
持久戦には不利と侮っていたバトルアックスは衰えることなく、一撃でチハルの命を消し飛ばす勢いだ。
いかにチハルが日本刀武術の機敏さで攻撃から逃れようとも、斧の刃はすぐ背中まで迫ってくる。
一つでもミスを冒せば、餌食になることは間違いない。
「ほら、逃げてばかりでは決着がつきませんわよ!」
エリー小隊長の挑発に乗って、一度は反撃の刃を打ち込んだが、斧の厚刃に阻まれて岩に斬りつけているみたいだった。
斧は最強の武器であると同時に、堅牢な盾にもなりえたのだ。
今は逃げ回って、攻撃の隙を探す以外に道はない。
恐ろしいのは、エリー小隊長の膂力と体力の底が計り知れないことだ。
その間に一撃も喰らえば無様な死体を彼女の前で晒すことになるだろう。
その次は、アンリがなで斬りにされることは必至だ。
近衛兵とはいえ、彼女に身を護る術はない。
もとい近衛兵など、王族の見栄えのための飾りに過ぎないはずだった。
本来は戦闘とは皆無のはずで、エリー小隊長のような化け物の方がかえってイレギュラーなのだ。
だからアンリはこの世界に夢を見て、今までの自分を変えようとした。
そんな何の非もない少女の願いが、一人のエゴイズムによって潰されようとしている。
思えば転生前にも、似たような経験があった。
どんなに頑張っても、上司の一言でこれまでの苦労が水の泡になったこと。
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だからせめて、アンリには同じ失望を味合わせたくない。
そのためには一歩を踏み出さなければ。
「もう逃げられませんわ!」
疲労するどころか、エリー小隊長は跳躍して斧を振り下ろそうとしている。
ゲームでも大ダメージ確実の跳躍斬りだ。
そういえば、ああいう斬撃をする時は必ず振り下ろす側の足を上げるよう描けって、デザインの先生から言われたのを思い出す。
――あれ? それって、斬撃の軌道が読めるって事じゃん?
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