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5章: 侵略された民

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 結局、全員が俺の指示に従った。
 従えば九割の確率で助かり、刃向かえば破滅必至なのだから、判断として間違っていない。
 だが、確率論とは所詮、確率論に過ぎない。
 もし自分が当たりになれば、それまで信じてきた数字など全く意味をなさなくなる。
 賭博で掛け金を失うならまだしも、今まさに生死の狭間に立たされている側から見れば、生存率九割という数字は単なる気休めにもならないだろう。
「ど~れにしようかな?」
 両手の人差し指を真っ直ぐ天に向けた俺は四つん這いで背中越しにこちらを見上げるエルフを品定めした。
 俺が通り掛かる度、連中の尻が震えているのが見て取れる。









「死にたくない、死にたくない・・・・・・お願いだから、隣の子にして」
 ふと俺は、そう呟いているエルフの女を見つけた。
「まずはお前だ!」
ずぶっ!!
「はんぎゃぁ!!!」

 四つん這いになりながら、背中を反らせたエルフはあっという間に沈黙。
 隣に並ぶエルフ達が冷や汗をかきながら、自分ではなかったことにほっとした。
「さあ、次だ」









「お前で決まり!!」
べべり!!
――おっ
「あ、のああぁ!!!」
 俺としたことが、手元が滑って思ったより奥まで突き刺してしまった。
 エルフの消化器系については詳しくないが、多分大腸あたりまでは届いたと思う。
 それだけの苦痛を受けた臀部は本来の機能を失い、人知れずため込んでいたものが決壊する。
ぷおぉっ!!
 聞いたことのない放屁の音が、俺の耳朶を打った。
 その音を聞かれただけで、俺でさえ身がよじれるほど恥ずかしいのだが、不幸中の幸いか、カンチョーの痛みで先に意識を失ったエルフはそれを知らずに済んだ。

「ひいぃ!!!・・・・・・・あ」
 あと一歩ずれていれば、自分がこうなったかもしれない。
 それを思い知らされた左右のエルフもまた、同時に気を失った。


「じゃあ、最後の一人だな」
「ハアァ? 私達二十八人よ! 三十人じゃないのよ! もう十分でしょ?」
「だまらっしゃい!!」
じゅぼっ!!
「うわえああ!!!」

「余計な口出しをしなければ、助かったものを」
 こうして生き残ったエルフ達は、憐れな犠牲者達に黙祷しつつも安堵していた。

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