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4章: 血縁なき絆

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 中庭に巨大な火柱と黒煙が立ち上り、囲んでいた建物の窓ガラスが割れ、壁に亀裂が走った。
 中庭に集められた学生だけでなく、士官学校外からも何事かと人々の押し寄せる気配がした。
「少しやりすぎたか・・・・・・」
 レムダはしまったと思い、顔をしかめる。
「少しどころじゃないでしょうが!!」
 フェリスが眉を吊り上げて抗議する。
「すごい! 大穴だ!」
 シアが辺りを駆け回る。
 大岩どころか、それが鎮座していた台地さえ大きく削れ、真っ黒に焼けただれた大穴だけがそこにある。
「さて、どちらの魔法の威力が優れていたかな?」
 レムダが見遣ると、アイシャの姉を含む三人はその場に呆然と立ち尽くしていた。
「あ、あわわわ・・・・・・」
 取り巻きの一人が白目をむいて失神する。
「ひえぇ!!」
 もう一人は腰を抜かし、その場で大泣きしていた。
 アイシャの姉だけが何とか立っていられている。
「ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待ちなさいよ!! こんなの、おかしいじゃない!!」
「おかしいって、何が?」
「アンタが置いた袋、あれは何なのよ!! これだけの爆発、魔法で出来るわけないじゃない!」
「ああ、あれですか? ご察しの通り、中身は火薬ですよ」
「か、火薬!?」
 ちなみにこの世界でも火薬の存在は知られている。
 ただ発明の黎明期であり、魔法の技術でも代替できるので、兵器としての用途はそれほど発展してはいない。
「火薬って、あの燃えやすい砂じゃない!! そんなもの置いたら、これだけの惨事になって当たり前でしょ! こんなのインチキだわ!」
「そうでしょうか。火薬は確かに燃えやすいですが、そもそも火種がなければ燃えることはありません」
「だからその火種をアイシャの魔法にして、爆発の威力を不当に底上げしたんでしょ? こんなの、アタシがやっても同じじゃない!」
「本当に、そうでしょうか?」
 レムダは同じ図多袋をもう一つ、用意していた。
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