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1章: 学院内権力組織
黒幕の正体
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「こんな・・・・・・」
シュロムはいきり立って告知の貼り紙を引きちぎる。
「でっち上げだ! 今すぐ統制委員に抗議してやる! こんな公式戦は無効だ!」
「あっ! 何をするのです!」
「お前も来い!」
もう片方の手が抗議の声を上げたティラの襟首をつかんだ。
「わっ! な、何をするのです! 私はこれから授業が・・・・・・」
「誰のせいでこうなったと思っているんだ!」
これが単に勝敗を決するだけの行事ならば、シュロムもここまで本気になることはなかった。
だがこれは公式戦。
公式戦とは公を前にしての決闘というだけの意味ではなく、その勝敗がグラン=アカデミーでの立場を正式に左右するハイリスクな勝負事だった。
勝者はクラスを昇格できる半面、敗者はクラスを降格することになる。
これは売名行為や謀略を目的としての不正行為を抑止するためにグラン=アカデミーで定められたルールだ。
では、シュロムのようなクラス降格の余地がないFクラスの生徒が負ければどうなるのか。
答えは除籍である。
言い換えると、グラン=アカデミーを追い出され、それまでの在籍資格も無効となる。
そうなった場合、シュロムが最も懸念するのは今後魔導書が手に入らなくなることだった。
魔導書は金さえあれば誰にでも売ってもらえる代物ではなく、国家機関の役人やグラン=アカデミーのような魔法の教育機関関係者など相応の人物でなければ購入できないと法に定められている。
今のシュロムは曲りなりにFクラスとはいえ、グラン=アカデミーの生徒として魔導書の購入を許可されているのだから、公式戦での敗北は彼にとって致命的だった。
シュロムの風魔法にはまだ完成度を上げる余地があり、そのためにはもっと多くの魔導書から学ばなければならない。
しかるにこんなことでグラン=アカデミーを追い出されるわけにはいかなかった。
「失礼します!」
統制委員の本部前。
荒々しく桐のドアを叩き、部屋の主の返事も得ないうちからシュロムはドアを開けた。
「あら、そんなに慌ててどうしたのかしら?」
あたかもシュロムの来訪を予見していたかのように、エナメスは執務室の机で悠長に構えていた。彼女の周りにいた取り巻きたちにそれは知らされていなかったようで、突然の闖入者に彼女達はエナメスを庇うかのように立ち回った。
エナメスは静かに片手を上げて、彼らの警戒心を解く。
「どういうことですか! 俺がコイツと公式戦をするって! そんなの申請を出した覚えなんてありませんよ!」
握りしめた貼り紙を見せつけながら、シュロムは猛然と抗議する。
「今更そんなことを言われても、統制委員としては申請を承認するだけの立場ですから」
――こんな時だけ謙虚になりやがって
「その申請が偽物なんですよ! コイツが勝手に俺の名前を使ったんです!」
今度はティラを正面に突き出した。
「え? 何の話なのです?」
「とぼけるな! お前、俺を一方的に恨んでいるだろ? それで公式戦に持ち込もうと思って偽物の申請書を出したんだろうが!」
「・・・・・・私にそんな覚えはないのです」
ティラは大きな双眸を丸くしてきょとんとしていた。
「おい、お前じゃないのか?」
「私はてっきり、あなたが本当に出したと思っていたのです」
「え? じゃあ、その申請書は誰が?」
シュロムがふと前を向くと、エナメスが含み笑いをしていた。
――コイツが黒幕か
シュロムは直感だけで確信した。
シュロムはいきり立って告知の貼り紙を引きちぎる。
「でっち上げだ! 今すぐ統制委員に抗議してやる! こんな公式戦は無効だ!」
「あっ! 何をするのです!」
「お前も来い!」
もう片方の手が抗議の声を上げたティラの襟首をつかんだ。
「わっ! な、何をするのです! 私はこれから授業が・・・・・・」
「誰のせいでこうなったと思っているんだ!」
これが単に勝敗を決するだけの行事ならば、シュロムもここまで本気になることはなかった。
だがこれは公式戦。
公式戦とは公を前にしての決闘というだけの意味ではなく、その勝敗がグラン=アカデミーでの立場を正式に左右するハイリスクな勝負事だった。
勝者はクラスを昇格できる半面、敗者はクラスを降格することになる。
これは売名行為や謀略を目的としての不正行為を抑止するためにグラン=アカデミーで定められたルールだ。
では、シュロムのようなクラス降格の余地がないFクラスの生徒が負ければどうなるのか。
答えは除籍である。
言い換えると、グラン=アカデミーを追い出され、それまでの在籍資格も無効となる。
そうなった場合、シュロムが最も懸念するのは今後魔導書が手に入らなくなることだった。
魔導書は金さえあれば誰にでも売ってもらえる代物ではなく、国家機関の役人やグラン=アカデミーのような魔法の教育機関関係者など相応の人物でなければ購入できないと法に定められている。
今のシュロムは曲りなりにFクラスとはいえ、グラン=アカデミーの生徒として魔導書の購入を許可されているのだから、公式戦での敗北は彼にとって致命的だった。
シュロムの風魔法にはまだ完成度を上げる余地があり、そのためにはもっと多くの魔導書から学ばなければならない。
しかるにこんなことでグラン=アカデミーを追い出されるわけにはいかなかった。
「失礼します!」
統制委員の本部前。
荒々しく桐のドアを叩き、部屋の主の返事も得ないうちからシュロムはドアを開けた。
「あら、そんなに慌ててどうしたのかしら?」
あたかもシュロムの来訪を予見していたかのように、エナメスは執務室の机で悠長に構えていた。彼女の周りにいた取り巻きたちにそれは知らされていなかったようで、突然の闖入者に彼女達はエナメスを庇うかのように立ち回った。
エナメスは静かに片手を上げて、彼らの警戒心を解く。
「どういうことですか! 俺がコイツと公式戦をするって! そんなの申請を出した覚えなんてありませんよ!」
握りしめた貼り紙を見せつけながら、シュロムは猛然と抗議する。
「今更そんなことを言われても、統制委員としては申請を承認するだけの立場ですから」
――こんな時だけ謙虚になりやがって
「その申請が偽物なんですよ! コイツが勝手に俺の名前を使ったんです!」
今度はティラを正面に突き出した。
「え? 何の話なのです?」
「とぼけるな! お前、俺を一方的に恨んでいるだろ? それで公式戦に持ち込もうと思って偽物の申請書を出したんだろうが!」
「・・・・・・私にそんな覚えはないのです」
ティラは大きな双眸を丸くしてきょとんとしていた。
「おい、お前じゃないのか?」
「私はてっきり、あなたが本当に出したと思っていたのです」
「え? じゃあ、その申請書は誰が?」
シュロムがふと前を向くと、エナメスが含み笑いをしていた。
――コイツが黒幕か
シュロムは直感だけで確信した。
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