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1章: 冒険者の条件

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 エスマイアは共感した様子だった。
「なるほど、やはりそちらでもそうでしたか」
「ということは、セリヴェアの方でも?」
「ええ、恥ずかしながら、ここ数年で学院の学生達の質は低下傾向にあると言わざるを得ません。それも能力と人格の両面において」
「要するに、学院の信頼に傷がつくと?」
「それだけで済めばよいのですが、実はもっと深刻な弊害が発生していまして」
「と、言いますと?」
「冒険者特権の濫用が問題になっているのです。ご存じの通り、冒険者学院を卒業してギルドに冒険者登録を受ければ、出入国の自由、免税、資源の採掘権とモンスターの討伐権利、その他諸々の恩恵が受けられます。かつて冒険者稼業がまだ始まっていなかった頃は、モンスターの討伐はその地を統べる領主の責務でした。しかし、モンスターの討伐に軍事力を割き切れなくなった各国は自らの手勢を使わなくとも、冒険者にその責務を肩代わりさせる代わりに、彼らの特権の一部の移譲を認めました。これが冒険者の始まりと言われています。ところが最近、その手の特権だけを目当てに冒険者としての資格を得て、卒業後に密輸や人身売買などの悪事に冒険者が手を貸すケースが増えたのです」
「それはつまり、純粋にギルドの仕事でくいっぱぐれた落ちこぼれが、悪事で日銭を稼いでいるということですか?」
 エスマイアは静かに頷きながら付け加える。
「このままでは最悪、冒険者制度の廃止も議論されることになりましょう。その前に、私は冒険者学院の長として、輩出する学生達に責任を持たなければなりません。あなたにはその手伝いをしてもらいたいのです」
「それで、話は戻りますが僕に何をしろと?」
「あなたにお願いしたいのは、ダンジョンのボスモンスターになってくれませんか?」
「は?」
「失礼しました。こんな言い方をしても伝わりませんよね。要するに、あなたにとあるダンジョンに潜むボスモンスターになってもらって、不適格な学生を篩に掛けて欲しいのです」
「・・・・・・面白いことを言いますね。肝試しでもさせるつもりですか?」
「脅かすだけでなく、少しばかりお仕置きしてあげても構いませんよ。命を奪ったり重傷を負わせるのは論外ですが、気絶させる程度であれば問題ありません」
――ある意味問題だらけなような気がするが?
「それで、学生達の素行が改善されるとでも?」
「少なくとも、生半可な学生は一度死にかけただけでこのまま冒険者としての道を歩むべきか、考えるでしょう。覚悟の座っている学生ならば、自らの不覚を恥じて鍛錬に励むはず。それを期待しているのです」
「それは名案かもしれませんが、どうして僕にその話を? そちらの学校にも、腕の立つ教員はいるのでは?」
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