落第のケルベロス~落ちこぼれ冒険者はチュートリアルダンジョンでヒロインを攻略することになりました~

自慰煽情のアリア

文字の大きさ
12 / 27
1章: 冒険者の条件

5

しおりを挟む
 どうやら人だかりの中心に何かが置かれ、皆はそれを見下ろしているかのようだった。
 人々の足間から垣間見えるのは木製の細長い板。
 前後に取っ手が付いているのを見ると、担架のようなものらしい。
 そこには人の足も乗っていた。
「全く、無謀にも程があるぜ」
 今しがたそれを担いできたと思しき村の大男が大きな溜息をついた。
「何があったんですか?」
 イシルは人だかりの最後尾にいた野次馬に尋ねた。
「何でも、冒険者が重傷を負って運ばれたらしい」
 案の定、村の者達の手引きで村の医者が夜にもかかわらず飛んできた。
 簡単な触診の後、彼は残念そうにつぶやく。
「命には別条がないが、残念ながらこの足はもう駄目だ」
「だってよ。これで今月は何人目だ?」
 この辺りに難易度の高いダンジョンがあることはイシルも話に聞いていた。
 もっとも冒険者として認められない彼が潜ったところで功績を称えられるわけはないのだから、身の危険を冒してまで近づこうとすら思っていない。
 そうこうしている間に彼よりレベルの低い冒険者が次々と挑戦しては敗退しているようだった。
 村人の数える指は、既に十を超えている。
「それにしても運が良かったぜ、コイツは。ダンジョンに行き着く前に道に迷って、崖から足を滑らせた程度で済んだんだからな」
「え? ダンジョンにまだ潜ってないのにこのザマかよ?」
 村人達は呆れ返ったように顔を見合わせた。
 冒険者というのに、目的地にたどり着く前に負傷するなど前代未聞だった。
 どんな顔をしている奴かとイシルも興味半分で顔を覗き見る。
 意外にもそれは、見覚えのある顔だった。
「お前・・・・・・ハルスか?」
「その声は、イシル?」
 イシルの呼びかけに振り返る青年は間違いない。
 かつてガランティア冒険者学院で一緒に卒業試験を受けたハルスという学生だった。
「お前、どうしてこんな所に?」
「お前こそどうしたんだよ? お前のレベルじゃ、ここのダンジョンは到底無理なのに」
「・・・・・・ハハハ、そうだよな。でもさ、初級者向けのダンジョンなんて、もう狩り尽くされてしまっているんだよ。報酬欲しさに、危ない山に手を出したのが間違いだったな。こんなことになるくらいなら、最初から冒険者なんか目指すべきじゃなかったよ」
 ハルスの自嘲的な笑みは、イシルの心に深く突き刺さる。
――何だよ、それって
 イシルはこの二年間、自分だけが全てを背負い込んでいるものと思い込んでいた。
 自分だけが冒険者になれず、こんな僻地で明日はどうなるかもわからぬ生活を強いられている。
 それも他の学生達を救った見返りとして。
 だが事実はそうではなかったのだ。
 あの卒業試験でイシルが余計なことをしなければ、ハルスやイルマのような、冒険者となるべきではない学生達を無理に合格させることもなかったのだ。
 イシルが不幸にしたのは自分だけではない。
 自分が冒険者になれないのは理不尽な王国の命令だけではなく、あるいは彼らの運命に干渉した天罰だったのかもしれない。
 犯した罪の重さに、イシルはようやく気が付いた。
 償いなど、今のイシルにはどうすることもできない。
 万能な彼も、時を遡って運命を変える力など持ち合わせてはいなかった。
 そんな悲嘆にくれるイシルの前に、まるで救済の機会を与えるとでも言いたいかのように、エスマイアが再び前に現れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...