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1章: 冒険者の条件
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どうやら人だかりの中心に何かが置かれ、皆はそれを見下ろしているかのようだった。
人々の足間から垣間見えるのは木製の細長い板。
前後に取っ手が付いているのを見ると、担架のようなものらしい。
そこには人の足も乗っていた。
「全く、無謀にも程があるぜ」
今しがたそれを担いできたと思しき村の大男が大きな溜息をついた。
「何があったんですか?」
イシルは人だかりの最後尾にいた野次馬に尋ねた。
「何でも、冒険者が重傷を負って運ばれたらしい」
案の定、村の者達の手引きで村の医者が夜にもかかわらず飛んできた。
簡単な触診の後、彼は残念そうにつぶやく。
「命には別条がないが、残念ながらこの足はもう駄目だ」
「だってよ。これで今月は何人目だ?」
この辺りに難易度の高いダンジョンがあることはイシルも話に聞いていた。
もっとも冒険者として認められない彼が潜ったところで功績を称えられるわけはないのだから、身の危険を冒してまで近づこうとすら思っていない。
そうこうしている間に彼よりレベルの低い冒険者が次々と挑戦しては敗退しているようだった。
村人の数える指は、既に十を超えている。
「それにしても運が良かったぜ、コイツは。ダンジョンに行き着く前に道に迷って、崖から足を滑らせた程度で済んだんだからな」
「え? ダンジョンにまだ潜ってないのにこのザマかよ?」
村人達は呆れ返ったように顔を見合わせた。
冒険者というのに、目的地にたどり着く前に負傷するなど前代未聞だった。
どんな顔をしている奴かとイシルも興味半分で顔を覗き見る。
意外にもそれは、見覚えのある顔だった。
「お前・・・・・・ハルスか?」
「その声は、イシル?」
イシルの呼びかけに振り返る青年は間違いない。
かつてガランティア冒険者学院で一緒に卒業試験を受けたハルスという学生だった。
「お前、どうしてこんな所に?」
「お前こそどうしたんだよ? お前のレベルじゃ、ここのダンジョンは到底無理なのに」
「・・・・・・ハハハ、そうだよな。でもさ、初級者向けのダンジョンなんて、もう狩り尽くされてしまっているんだよ。報酬欲しさに、危ない山に手を出したのが間違いだったな。こんなことになるくらいなら、最初から冒険者なんか目指すべきじゃなかったよ」
ハルスの自嘲的な笑みは、イシルの心に深く突き刺さる。
――何だよ、それって
イシルはこの二年間、自分だけが全てを背負い込んでいるものと思い込んでいた。
自分だけが冒険者になれず、こんな僻地で明日はどうなるかもわからぬ生活を強いられている。
それも他の学生達を救った見返りとして。
だが事実はそうではなかったのだ。
あの卒業試験でイシルが余計なことをしなければ、ハルスやイルマのような、冒険者となるべきではない学生達を無理に合格させることもなかったのだ。
イシルが不幸にしたのは自分だけではない。
自分が冒険者になれないのは理不尽な王国の命令だけではなく、あるいは彼らの運命に干渉した天罰だったのかもしれない。
犯した罪の重さに、イシルはようやく気が付いた。
償いなど、今のイシルにはどうすることもできない。
万能な彼も、時を遡って運命を変える力など持ち合わせてはいなかった。
そんな悲嘆にくれるイシルの前に、まるで救済の機会を与えるとでも言いたいかのように、エスマイアが再び前に現れた。
人々の足間から垣間見えるのは木製の細長い板。
前後に取っ手が付いているのを見ると、担架のようなものらしい。
そこには人の足も乗っていた。
「全く、無謀にも程があるぜ」
今しがたそれを担いできたと思しき村の大男が大きな溜息をついた。
「何があったんですか?」
イシルは人だかりの最後尾にいた野次馬に尋ねた。
「何でも、冒険者が重傷を負って運ばれたらしい」
案の定、村の者達の手引きで村の医者が夜にもかかわらず飛んできた。
簡単な触診の後、彼は残念そうにつぶやく。
「命には別条がないが、残念ながらこの足はもう駄目だ」
「だってよ。これで今月は何人目だ?」
この辺りに難易度の高いダンジョンがあることはイシルも話に聞いていた。
もっとも冒険者として認められない彼が潜ったところで功績を称えられるわけはないのだから、身の危険を冒してまで近づこうとすら思っていない。
そうこうしている間に彼よりレベルの低い冒険者が次々と挑戦しては敗退しているようだった。
村人の数える指は、既に十を超えている。
「それにしても運が良かったぜ、コイツは。ダンジョンに行き着く前に道に迷って、崖から足を滑らせた程度で済んだんだからな」
「え? ダンジョンにまだ潜ってないのにこのザマかよ?」
村人達は呆れ返ったように顔を見合わせた。
冒険者というのに、目的地にたどり着く前に負傷するなど前代未聞だった。
どんな顔をしている奴かとイシルも興味半分で顔を覗き見る。
意外にもそれは、見覚えのある顔だった。
「お前・・・・・・ハルスか?」
「その声は、イシル?」
イシルの呼びかけに振り返る青年は間違いない。
かつてガランティア冒険者学院で一緒に卒業試験を受けたハルスという学生だった。
「お前、どうしてこんな所に?」
「お前こそどうしたんだよ? お前のレベルじゃ、ここのダンジョンは到底無理なのに」
「・・・・・・ハハハ、そうだよな。でもさ、初級者向けのダンジョンなんて、もう狩り尽くされてしまっているんだよ。報酬欲しさに、危ない山に手を出したのが間違いだったな。こんなことになるくらいなら、最初から冒険者なんか目指すべきじゃなかったよ」
ハルスの自嘲的な笑みは、イシルの心に深く突き刺さる。
――何だよ、それって
イシルはこの二年間、自分だけが全てを背負い込んでいるものと思い込んでいた。
自分だけが冒険者になれず、こんな僻地で明日はどうなるかもわからぬ生活を強いられている。
それも他の学生達を救った見返りとして。
だが事実はそうではなかったのだ。
あの卒業試験でイシルが余計なことをしなければ、ハルスやイルマのような、冒険者となるべきではない学生達を無理に合格させることもなかったのだ。
イシルが不幸にしたのは自分だけではない。
自分が冒険者になれないのは理不尽な王国の命令だけではなく、あるいは彼らの運命に干渉した天罰だったのかもしれない。
犯した罪の重さに、イシルはようやく気が付いた。
償いなど、今のイシルにはどうすることもできない。
万能な彼も、時を遡って運命を変える力など持ち合わせてはいなかった。
そんな悲嘆にくれるイシルの前に、まるで救済の機会を与えるとでも言いたいかのように、エスマイアが再び前に現れた。
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