【BL】できそこないΩは先祖返りαに愛されたい

ノルジャン

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「……イチロ?おいイチロ!」

 タイセーに話しかけられているにもかかわらず、その声が耳に入って来ないままずっとラッセルさんの動向に目が離せなかった。
 目を離したらその隙に喰われそうで怖い。
 にゅるっとその尻尾で腰回りを掴まれて頭からパクリと飲み込まれそう、なんてそんなことばかり頭に考えていた。

「……イチロさん?」
 
 大蛇はその猫目をこちらに向けてきて、その瞳孔が俺を見て大きく膨らんだ。首を傾げながら俺の名を呼んだ。

「はひっ!」

 掴まったタイセーの肩をぎゅむーーっと掴んで答えたら、いたたた!と肩が悲鳴を上げた。それでも力は弱まらない。

「お前そんな緊張しいだっけ?人見知りとかじゃなかったよな?」
「あ、ああ、大丈夫……」

 ドッドッドッと心臓が尋常じゃないくらい強く鳴っていて、冷や汗が止まらない。
 
 タイセー!お前はなんでこんなにも鈍感でいられるんだ?!同じ弱小のハムスターならこの脅威的なまでの圧を感じ取れるはずなのに。

「ラッセルだ。見ての通り、先祖返りのヘビ獣人だ。よろしく」
「ラッセル……さん」
「ラッセルと呼び捨てでいい」
「じゃあ、俺もイチロと呼び捨てで……」

 全然表情が変わらない……!
 ピクリとも動かないためなんの感情も読めない。

 ギョロっと目を向けられるだけで悲鳴を上げそうになるのを堪えて、会話をする。それで精一杯の俺。

「こいつほんっとに表情筋ないからさー初対面だとすげー怖いよなー、やっぱ種族柄?ってやつなん?」
「種族と、家族の遺伝ってやつかもな。俺の家族はみんなこんなだから。他のヘビ獣人でもっと表情豊かな奴はいっぱいいる」
「そっかー。それはそうと、立ち話もなんだからさ、早く中に入れてくれよ」

 おいー!タイセー!お前こっちはお願いしてる立場なのにその言い草はないだろうが!しかも自分から話を振っておいて!

「ああ、悪い。まだ本格的な冬じゃないが、寒くなってきてるし、風邪をひいたら大変だ。さぁ、遠慮せず中に入ってくれ」
「おじゃましまーす!」
「お、お邪魔、します……」

 俺はラッセルの反応に逐一びくびくと体を逆立たせていた。だが、タイセーの態度を気にした様子もなく、ラッセルはタイセーと俺を家の中へと案内してくれた。

 そろりと家の中に入る。ちょっと前に引っ越したばかり、ということで物は少ないようだ。家が大きくて広いので家具の置いていない空間が目立ち、まだまだ殺風景な感じではある。
 それでも生活していくには十分だろう。今までの俺の住まい――ボロアパートに公園の遊具――を考えたらここは天国だ。
 けれど、けれどもだ。住み込みということはここに俺も住むことになるわけで、ヘビ獣人と……。うん、考えただけで震えてくる。

 ――俺ってもしかして食べられちゃう?食料として雇われた……?

 なんて考えもしたが、それだったらこんな痩せ細ったハムスターをわざわざ選んで食べないだろう。それよか隣のもっと肉付きのいいコイツがいるし。
 じっと、不遜な目でタイセーを見たのに気づいたのか、「おっ!なんだ?いまゾワっと来たっ!ここ出るのかっ?」なんて騒ぎ始めた。アホの子だ。

 いつものフレンドリーなタイセー、悪く言えば馴れ馴れしい。いつもならそんなタイセーの気さくで親しみやすい性格に救われた気持ちになるのだが、今日ばかりは何度もやめてくれ!と叫びそうになるほどだった。

「ここのゲストルームを好きに使ってくれて構わない」
「おー!ここも広いなぁ。ベッドも収納棚もあるし、しかもクローゼットも!なぁ、イチロ?」
「ああ、そうだな」

 ずかずかと部屋の中を意気揚々と散策する楽しげなタイセーが恨めしい。
 しかし本当に広い部屋だ。どんなVIPなゲストが来るっていうんだろう。追い出されたワンルームよりも広いし綺麗だ。今日からここに寝泊まりできることに安堵する反面、今までの生活と違い過ぎて戸惑いを隠せない。
 それに、自分の稼ぎだけではあのボロアパートに住むのがやっとだったということを、まざまざと思い出せてくる。その通りなのだけど、やはり少し落ち込んだ。
 けれど落ち込んでいても仕方がない。この部屋に住まわせてもらうのだから、それ相応の仕事をしようと意気込みを入れ直した。
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