【BL】できそこないΩは先祖返りαに愛されたい

ノルジャン

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「いや、汗臭いんじゃなくて、なんか甘くて良い匂いがする……」
「甘い匂いなんかしないけどなぁ。そんなこと言われたの初めてだな」
「なんかオレンジっぽい甘い匂い……なんかどっかで嗅いだことあるような良い香りがする、……アロマとかかなぁ」

 香水なんてつけてないし、アロマなんてそんなものに興味はない。柔軟剤か?いやでも、いつも使っているのはソープの香りだし。

 甘い匂い、……ってまさか。
 まさかとは思うけど、もしかして……俺オメガのフェロモンを発している?
 
「そ、そうそう!最近アロマ始めたんだよ!それの匂いがうつったんだよ」
「へー、アロマの香りって結構良いもんだな」

 アロマなんておしゃれなもの持ってない。完全なる口から出たでまかせだった。それで納得してくれたタイセーに安堵した。
 
 だが同時に俺は内心ひどく焦っていた。冷や汗も出てきたくらいだ。やっぱりフェロモン数値が上がっていたのは一時的なんかじゃなかったんだ。

 タイセーにシャワー室を案内した後は、俺も自室のシャワー室へ駆け込んで石鹸で体をゴシゴシと洗った。洗ってフェロモンの匂いが落とせるなんて聞いたこともなかったけど、何もしないよりはマシだと思った。

 


 ◇

「ラッセル、今日は買い物に言ってくるから」
「なんでだ?今週の買い出しはすませていなかったか?」
「うん、だけどちょっと買い足したいものがあってさ。俺一人で大丈夫だから」
「そうか、わかった。俺は一日家にいるから」

 ――ごめん、ラッセル。終わった後にちゃんと買い出しはするから。

 内心で俺はラッセルに嘘をついたことを謝った。オメガクリニックでフェロモン数値を見てもらいに行くために外出するのだ。まだラッセルにはオメガだと告げていない。なのでクリニックに行くことを伏せて外出の理由を作った。
 今日は定期検診の日じゃないけどクリニックに行く。俺はあまり例のない不妊のオメガなので、何か異常を感じれば定期検診でなくても受け付けてくれる。

 クリニックで受付を済ませて待合室で待つ。あま待合室には数人のオメガと思われる獣人たちが大人しく座って待っている。
 この分だとすぐに俺の番がくるだろう。

 少し待っていると俺の名前と番号が呼ばれたので次診察室へと入った。看護師さんに血液をとられて分析結果が出るまで先生の診察を受けた。

「イチロさんの血液検査の結果ですが、フェロモンが確かに出ていますね。この距離で私でも匂いを嗅ぎ取ることができていますので」

 先生はベータであるので、その先生がフェロモンを嗅ぎ取ることが出来るということは、当然アルファであるラッセルにも匂いがわかってしまう。

「ご自身の鼻はどうですか?フェロモンを嗅ぎ分けることができますか?」
「いえ、自分のフェロモンの匂いは感じません」
「他のオメガやアルファのはどうです?」

 待合室のオメガのフェロモンの匂いはしなかったし、いつも一緒に住んでいるラッセルのアルファの匂いを感じたことは今までない。
 
 俺はふるふると頭を左右に揺らした。
 
「ないですか……。ではフェロモン以外の匂いはどうですか?」
「料理してる時の匂いなんかはわかるので、ちゃんと匂いはしてると思います」
「そうですか、依然としてフェロモンに対する鼻だけは効かない……と。うーん、そうですねぇ……。イチロさんは中々珍しい症例なので、あまりはっきりとは言えないんですが、フェロモンが体から出ない異常はこれで改善されたと言っていいと思います」

 血液検査の結果が書かれた紙を渡された。色々な名称と数値が書かれていて、今回フェロモンと書かれた隣に「正常値」という文字が表示された。

 フェロモンだけ正常値になったとしても何の意味もない。ただ生きづらくなっただけ。

「また何かありましたら遠慮なくクリニックを受診して下さい。最後に受付で抑制剤を貰って下さい。念のために多めに処方しておきましたので、外出の際も持ち歩くようにして下さいね」
「わかりました、ありがとうございました」
 
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