55 / 58
番外編
番外編 1-1
しおりを挟む「イチロさん、あなた、妊娠してますよ」
「……ふへ?」
妊、娠……?
――なんで?どうして?だって俺は不妊症のはずだろ?ずっと前から診断されてきたし、長年そう言われてきた。それがどうして妊娠なんて……。
発情期だってきてないから、妊娠なんてしないはず。
先生に告げられた言葉が信じられなくて混乱した。
今日は、最近の体調不良で何か悪い病気にでもかかったのかと思ってクリニックを受診したのだ。
体は熱っぽいし、吐き気があるのに食欲は増加。好物のひまわりの種に、知らない間に手を伸ばしてポリポリと食べるようになっていた。
そして、なにより、ぼうーっとしているといつの間にかラッセルの服をベッド上に投げてこんもりと山を作っていることが多くなった。
妊娠?今の俺は動揺と混乱で受け止め切れない。座っているのかも、立っているのかもわからない。どうしよう?どうすればいい?
何もわからなくて、真っ白な状態からすぐに不安が押し寄せてきて泣き出しそうになった。いや、もう、ちょっと涙出てきてるよこれ。感情の起伏が激し過ぎて、自分でもついていけない。
「イチロさん、もう一度言いますよ。あなたは妊娠しています」
現実を突きつけるかのようにそう先生がハッキリと俺に言った。
◇
ラッセルと心と体が繋がり合ってから、次の日の朝、「番いになろう、俺とパートナーになって欲しい」と言ってくれた。いつも無表情の顔はいつになく真剣で、俺はすぐに返事をした。
「こんな俺で良ければ、ずっと一緒にいてください。番いになろう。ラッセルのパートナーになりたい」
そう答えたら、ラッセルは涙を流して俺を抱きしめた。俺も泣いていた。二人でずぴずぴと鼻を鳴らして嬉し泣きした。
番いになる時は、強い方が相手のうなじを噛む。獣の性を持つ獣人なので、その強さは簡単に言えば力の強さ、相手をねじ伏せることが出来る強さの事を言う。
だが、今の現代の獣人社会では少し変わってきている。肉体的に弱くとも、精神的に強い方が相手を噛むこともあるらしい。変わったカップルでは、お互いが対等に、とうなじを噛み合ったりもすると聞いている。
第二次性のアルファ、オメガでもそこのところの事情は変わらない。
俺とラッセルの場合は、ラッセルが俺を噛むことになると勝手に思っていたんだけど……。というか噛んで欲しい。
ラッセルが一向に俺を噛んでくれない。俺は俺で、うなじを見せびらかしてアピールしてるつもりなんだが、ラッセルはその誘いに全く乗ってこないのだ。
自分の口から「噛んで」なんて直接的過ぎるし、俺は恋愛経験がないからどう誘っていいのかわからない。
うじうじとしている間に、一週間、二週間と経ってしまった。
誰かに相談したいけど、タイセーに相談なんて絶対に無理!
今思えば、ラッセルと俺が抜き合いっこしてるってタイセーに伝えたも同然だった。そんなの恥ずかしいったらない。
まぁ最終的にはラッセルと分かり合えたんだから良いんだけど。それでも恥ずかしいものは恥ずかしい。
悩みながらいつものように朝ご飯を作っていたら、体が急に熱くなってきた。
風邪かな?と思って放っておいたら、立っていられないくらい体中から熱が出て、抑えようのない衝動が頭をいっぱいにした。
――シたい。ムラムラする……。
ラッセルはどこにいるんだろう。
はぁはぁと息が荒くなって、呼吸が困難になってきた。ずるずると体をキッチンのカウンターに預けて体勢を少しでも楽にしようとした。
体中が求めてる。愛する人を。
どくどくと心臓が爆音を上げている。下半身の疼きが収まらず、頭は熱に浮かされ始めた。
じゅくじゅくと後孔は熟して、とろとろに蜜が噴き出てきている。入れて欲しくてたまらない。もうそれしか考えられない。
応援ありがとうございます!
6
お気に入りに追加
564
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる