『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ

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17 村で育てよう~

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妖精の雫の種を、定期的に分けてもらえるようになった。

 そしてある日、俺はふと思った。

「この“妖精の雫”……料理に使ったら美味しいんじゃないか?」

 そのつぶやきに、周囲の反応が――

「「「「「何だってぇーーっ!?」」」」」

 ものすごい勢いで、皆の顔が迫ってきた。……近い、近い!

 妖精の雫は、蜂蜜よりも優しくて爽やかな甘さのシロップだった。

「……やっぱ、ダメか。デザートとかに合いそうだと思ったんだけど、無理かな~。残念だけど――」

〈作りましょう!!〉

「私も賛成よ!!」

 なぜか、ベルとステイの熱量が一気に跳ね上がった。

「お、おぉ……じゃあ、二人の勢いに押されて、デザート作り開始~!」

* * *

「…………あっ。タマゴが、ないです」

「何でーっ!? タマゴないのよ!」

「全部、昨日のご飯に使っちゃいました……」

「………………」

「よし!村で鶏、飼おう!それならタマゴには困らないし!」

「「「「賛成!!」」」」

 な、なんだこの一体感。

 俺の中の“何か”が囁く――
 《この村では、食に逆らってはいけない》と……。

* * *

 そして――

「……これ、コカトリスじゃないか……?」

 運ばれてきたのは、見覚えのある魔獣だった。

 魔獣界でも手強いとされるコカトリス。その対のつがいが、なぜか今ここに。

「フェンリル、お前が連れてきたのか……?」

〈これで、美味しい料理を作って~♪〉

 軽~いノリで言ってのけた、我が家の問題児フェンリル。

 とはいえ、目の前のコカトリス二匹は、恐ろしい何かを見たような表情でプルプルしている。

「お前ら……大丈夫か?ほんとにタマゴ産めるのか?」

〈ギャーゥギャー〉

 ブンブンと首を縦に振るコカトリス。

「……大丈夫、らしいな」

 哀れに思った俺は、急遽コカトリス専用の庭を整備。
 ふかふかの土と水場も作って、リラックスできる環境を用意してやった。

* * *

 ――翌朝。

「おぉぉぉっ! タマゴが三個も!お前ら偉いぞー!!」

 頭をナデナデしてやると、嬉しそうにクークー鳴いていた。

 それを見ていたフェンリルが、

〈妾にも、なでなで……してもいいぞ?〉

「くぅっ……!かわいすぎか、お前ら!!」

 そして俺はその日、コカトリス二匹とフェンリルに囲まれて、
 半日みっちり、激しくじゃれ合うことになったのだった。

* * *

「では、いよいよ! デザート作ります!」

「「「「「待ってましたー!!」」」」」

 みんなの期待が爆発している。よーし、張り切っていこう!

「まずは小麦粉に砂糖と塩を少々~、そこに新鮮なコカトリスタマゴを投入!空気を含ませるように混ぜて、熱したフライパンに流し入れて~……ぷつぷつしてきたら裏返して、ふわふわパンケーキの完成!」

「仕上げにホイップクリームと妖精の雫シロップをトッピングして――はい、できあがり!」

「「「「「「いただきまーす!!!」」」」」」

* * *

「「「「「旨すぎるぅぅぅぅぅ!!!幸せすぎるぅぅぅぅぅ!!!」」」」」

 村に甘い香りと笑顔が溢れた。

 ……ちなみに。

 この後、コカトリスたちにもパンケーキを食べさせてみたところ――

 とても喜んで、その日からタマゴの生産数が倍増したとかしないとか。


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