『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ

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閑話 とある冒険者

 ワースト国の街・ワンス。

 そこには、誰もが認めるSランク冒険者――アントスがいた。

 そして、アントスに次ぐ人気を誇るのが、Aランクパーティー『銀の翼』。

 リーダーで剣士のダン、魔術師ミラ、斥候ババ、弓士シバの4人パーティーだ。

 

 ダンは、アントスと同時期に冒険者として登録した。

 ……だが、かつてはダンの方が一歩リードしていた。

 ダンの憧れは、伝説のSSランク――ジーク。

 しかし、ジークに憧れるあまり話しかけられず、何も伝えられぬまま……ジークは突然、冒険者を引退した。

 

「なんでなんだよ……! ジークさんが引退なんて……」

「なんでアントスだけ、あんなにジークさんと仲がいいんだ! 依頼まで一緒に受けてやがって!」

 そのうち、気づけばアントスはSランクへと昇格。

 ダンは、徐々に焦り始めていた。

 

 ある日、ギルドに1件の依頼が届いた。

 内容は――サライバス山のドラゴン討伐。

 たまたまアントスが留守だったため、Sランク以外の者にも依頼の門戸が開かれていた。

 

「これだ……! この依頼を成功させれば、俺たちもSランクになれる……!」

 ダンは、迷いなく手を挙げた。

 

 魔術師ミラが、不安げに声をかける。

「ダンさん、本当に……私たちだけで大丈夫なんですか?」

「心配すんな。いつも通りにやればいいだけだ!」

 

 弓士のシバは、苛立ちを隠さない。

「ダン、あんた最近、無理な依頼ばっか持ってくるじゃないか!」

「決まったことに文句言うな。準備しろ!」

「チッ……わかったよ」

 斥候のババは、沈黙したまま準備を続けていた。

 

 

 ──そして、サライバス山。

「ついたぞ……ここがドラゴンの棲み処だ。ここから慎重に行くぞ!」

「「「おう!」」」

 

 その時だった。

 

「ダン! 空、見て!」

 見上げた空に――信じられないほど巨大なドラゴンが飛んでいた。

 

「な、なんだあのデカさは……!」

「ダンさん……無理ですって! あんなのと戦えるわけ……!」

「そうだよ! あんなの倒せるの、ジー――」

 ババの言葉が終わる前に、森の中から閃光が走った。

 次の瞬間、ドラゴンの尻尾が吹き飛び、バランスを崩したドラゴンは森の奥へと墜落。

 その尻尾だけが、ダンたちの目の前に落ちてきた。

 

「……あのドラゴン、死んだんじゃないか?」

 

 だが、その時ダンたちは――やってはいけない選択をした。

 

「この尻尾を討伐証明にすれば……依頼は完了だ。みんな、いいな?」

「「「……うん!」」」

 

 こうして、彼らは“虚偽の討伐報告”でSランクへと昇格した。

 

 ――それが、“地獄の始まり”になるとも知らずに。


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