25 / 67
23 商会ギルドが大騒ぎ
その日、サニアは村で物々交換でもらった品を街に売りに出た。
彼女自身はもちろん、ジークもアントスも知らなかった。
――あの村で手に入る物が、いかに「とんでもない代物」かを。
たとえば、ドワーフたちが造る酒。
今では“幻の銘酒”として語り継がれ、二度と出回らないとされていたもの。
武器や防具も同様、初期モデルですら目玉が飛び出るほどの値段で取引されている。
つまり――
村で暮らすあの“無口で無骨な兄弟”たちは、とんでもない超有名職人だったのだ。
街では、サニアが店先に品を出すやいなや、騒然となった。
「お前のような新人商人が、なんでこれを持ってるんだ!?」
「どこから入手した!?答えろ!」
「うちの商会と提携してくれ!」
「いや、うちで雇うぞ!破格の条件で!」
あっという間に取り囲まれ、商会の人間が列を作る始末。
そして、その混乱を受けて――
サニアの元に、商会ギルドから“お呼び出し”が届いたのだった。
***
商会ギルド本部・応接室。
サニアは、緊張した面持ちでギルドマスター・ゼニスキの前に立っていた。
「サニア、と言ったな。……これは一体どういうことだ?」
机に並べられたのは、妖精の雫、ドワーフ製の酒、そして防具。
「この“幻の品”ばかりを、どうやって手に入れた?その供給元を話してもらおうか」
サニアは迷いなく、頭を下げた。
「……申し訳ありません。取り扱っている品について、詳しいことはお答えできません」
「なんだと?ギルドマスターの私に言えないというのか。商会ギルドを敵に回すつもりか?」
サニアは、真っすぐ目を見て答えた。
「敵に回すつもりはありません……。でも、それを話すくらいなら、ギルドを辞めます」
ゼニスキの顔がピクリと引きつる。
――マズい。
この娘を逃がせば、取り扱っている品の供給ルートが絶たれる。
「……ふむ。無理に聞いた私が悪かった。今後も定期的に取引できるなら、それで構わん」
「ありがとうございます。ただ……妖精の雫だけは、確認しないとわかりません」
「確認……?どういう意味だ?」
「育ててるのですが、その……そちらでも使うらしく、余ったぶんしか回せないんです」
「育ててる……?それは、まるで妖精族がそこにいるような――」
「い、いえっ!わ、私の勘違いですっ!!」
「……ふむ。まあいい。とにかく、定期的に納品してくれればいい」
「はい、それは大丈夫です」
「……では、今日はもういいだろう。ご苦労だったな」
「失礼します!」
――その直後、応接室の扉が閉まる。
ゼニスキは指を鳴らす。
すると、部屋の隅から黒装束の男が音もなく現れた。
「……今すぐサニアを監視しろ」
ゼニスキの口元が、にやりと歪む。
「妖精の雫を“育てている”など、聞き捨てならん。
……もし本当に妖精族と繋がっているなら……手段は選ばんぞ……くくく、ははははっ!」
――平穏な村に、にわかに不穏な影が迫っていた。
---
あなたにおすすめの小説
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
ガチャから始まる錬金ライフ
盾乃あに
ファンタジー
河地夜人は日雇い労働者だったが、スキルボールを手に入れた翌日にクビになってしまう。
手に入れたスキルボールは『ガチャ』そこから『鑑定』『錬金術』と手に入れて、今までダンジョンの宝箱しか出なかったポーションなどを冒険者御用達の『プライド』に売り、億万長者になっていく。
他にもS級冒険者と出会い、自らもS級に上り詰める。
どんどん仲間も増え、自らはダンジョンには行かず錬金術で飯を食う。
自身の本当のジョブが召喚士だったので、召喚した相棒のテンとまったり、時には冒険し成長していく。
ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ
高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。
タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。
ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。
本編完結済み。
外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。
家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。
希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。
手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。
「このまま死ぬのかな……」
そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。
そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。
試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。
「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」
スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。
たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。
※本作は小説家になろうでも投稿しています。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム
前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した
記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた
村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く
ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた
そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた
私は捨てられたので村をすてる
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**