『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ

文字の大きさ
58 / 67

番外編 これからの事

しおりを挟む
「そういえばさ、由香里。よく俺がここにいるってわかったな!?」

 

「――あっ、そうよ!それそれ!」

由香里が、思い出したようにぽんっと手を打つ。

「実はね……駅前で探してたら、急に目の前にマップが出てきたのよ! フィールドマップってやつ!」

 

「はぁ!?」

俺は目を剥いた。

「それ、異世界のスキルだろ? なんでこっちで発動してんだよ!?」

 

地球でスキルが使えるなんて――正直、意味がわからない。

「いやいや、異世界だからアリだっただけで、現代日本でスキルとか……それもう、無敵すぎるだろっ!」

俺は思わず突っ込んでしまった。つーか、由香里が冗談を言うタイプだったっけ?

 

「じゃあさ~、悟。未来視のスキル、使ってみてよ!」

由香里が、ニヤッと楽しそうに言う。

「試すだけ試してみればいいじゃない?」

 

未来視は、指定はできないけど……何かしら映像が出るはずだ。

 

「……まぁ、やってみるか。――未来視!」

 

スキルを発動した瞬間、俺の脳内に強制的に映像が流れ込んできた。

 

――そこには、一ヶ月後の地獄のようなテスト用紙と、真っ赤な×印が並ぶ成績表が映っていた。

 

しかも、赤点3つ確定という大惨事。

 

「……っな、な……なんてこった……終わった……」

俺は絶望にうちひしがれた。

 

「えっ? どうしたのよ!? ねぇってば! スキル、使えたの!?」

 

「……由香里。使えた。バッチリ使えたよ。だからお願いだ……勉強教えてください!!」

 

俺は、ほとんど土下座ポーズで頭を下げる。

 

「ふふっ、悟って本当に勉強苦手だったもんね~」

由香里はちょっと嬉しそうに笑った。なんか悔しい。

 

「……まぁ、少なくとも、スキルが使えることは確認できたな」

でも、これは逆に……悩ましい話でもある。

あっちの世界で生きてた時間、俺たちはただの夢なんかじゃなくて、しっかり十年を過ごしてきたんだ。

ジークやティムだって、まだ向こうに――

 

「正直、こっちに戻れたのは嬉しいけど……私は、やっぱり異世界に帰りたいと思ってるわ」

 

由香里の瞳に、揺れる迷いと決意が見えた。

「だって、十年も住んでたのよ? ……私たちの、子供もいるんだもの……」

 

「……ああ。だよな」

俺も、同じ気持ちだった。

 

「まずは、自分たちが何をどこまで使えるか……一つずつ確認していこうぜ」

 

「ええ。やってみましょう――ステータス!」

 

由香里の声とともに、空中に青白いウィンドウが浮かび上がる。

そこには、異世界で見慣れたあのステータス画面が――。
しおりを挟む
感想 60

あなたにおすすめの小説

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

【完結】魅了の魔法にかけられて全てを失った俺は、最強の魔法剣士になり時を巻き戻す

金峯蓮華
ファンタジー
戦に負け、国が滅び、俺ひとりだけ生き残った。愛する女を失い、俺は死に場所を求め、傭兵となり各地を漂っていた。そんな時、ある男に声をかけられた。 「よぉ、にいちゃん。お前、魅了魔法がかかってるぜ。それも強烈に強いヤツだ。解いてやろうか?」 魅了魔法? なんだそれは? その男との出会いが俺の人生を変えた。俺は時間をもどし、未来を変える。 R15は死のシーンがあるための保険です。 独自の異世界の物語です。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

収奪の探索者(エクスプローラー)~魔物から奪ったスキルは優秀でした~

エルリア
ファンタジー
HOTランキング1位ありがとうございます! 2000年代初頭。 突如として出現したダンジョンと魔物によって人類は未曾有の危機へと陥った。 しかし、新たに獲得したスキルによって人類はその危機を乗り越え、なんならダンジョンや魔物を新たな素材、エネルギー資源として使うようになる。 人類とダンジョンが共存して数十年。 元ブラック企業勤務の主人公が一発逆転を賭け夢のタワマン生活を目指して挑んだ探索者研修。 なんとか手に入れたものの最初は外れスキルだと思われていた収奪スキルが実はものすごく優秀だと気付いたその瞬間から、彼の華々しくも生々しい日常が始まった。 これは魔物のスキルを駆使して夢と欲望を満たしつつ、そのついでに前人未到のダンジョンを攻略するある男の物語である。

処理中です...