「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」

チャチャ

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第4章:王国の姫と謎の魔物

「お、お兄ちゃん……!」

いつものように朝の散歩をしていたハルトは、森の入り口で倒れている少女を見つけた。
服は泥で汚れ、呼吸は浅く、腕にはかすり傷がある。

「おい、大丈夫か!?」

慌てて駆け寄り、そっと肩を支える。
少女はうっすらと目を開け、震える声で囁いた。

「た、助けて……追われて……るの……」

その直後――背後の茂みが不自然に揺れた。

「チッ、やっぱりか!」

すぐに《天穿の剣》を抜く。
次の瞬間、木々の影から現れたのは、見たこともない異形の魔物だった。
黒い甲殻に覆われた体、赤い双眼。そして、異常なまでの殺気。

「……あれは、魔獣“影喰い”……!?」

近くにいた村の狩人が、恐怖に顔を引きつらせた。
影喰い――通常は王都近郊の封印区画にしか現れない、Aランク以上の危険種だ。

「なんでこんなとこに……!?」

魔獣が少女に向かって跳躍する。
一瞬の判断で、ハルトは剣を構え、前に出た。

「させるかよッ!」

剣が閃き、魔獣の爪と激突する。
――が、重い。これまでの魔物とは比べ物にならない圧。

「クッ……!」

だが、“運”は味方していた。
次の瞬間、足元の地面が崩れ、魔獣はバランスを崩す。

「……ありがとな、地形!」

チャンスを逃さず、ハルトは渾身の一撃を叩き込んだ。

《クリティカルヒット!》
《魔獣“影喰い”を討伐しました》

「……マジでスキル頼みだな、俺」

少女は気を失っていたが、魔獣を退けたことで村に運ぶことができた。


---

数日後。
少女が目を覚ました。

「……あの、ここは?」

「リーネ村。君は森で倒れていたんだ。追われていたみたいだけど、何があった?」

ハルトの問いに、少女は小さく口を開いた。

「……わたし、リアナ・アストレア。アストレア王国の、第一王女です」

静まり返る納屋の空気。
そしてハルトは、静かに頭を抱えた。

「……ほら来た。スローライフ、どんどん遠ざかってる……!」

だが、リアナの話はそれだけでは終わらなかった。

「父が急死し、後見人だった叔父が王国を乗っ取ろうとして……私は、命を狙われて逃げてきたの」

王都を揺るがす政変。
それに巻き込まれた少女。
そして、偶然にも“幸運”によって出会ってしまったハルト。

「私を……王都まで、送ってくれませんか?」

静かに、だが強く見つめてくる瞳。
ハルトは大きくため息をついた。

「……スローライフどこ行ったんだ、ほんと……」

だが、不思議と悪い気はしなかった。

「……わかったよ。送るだけな。巻き込まれる気はないからな」

「ありがとうございます!」

こうして、ハルトとリアナの旅が始まる。
ただの“送り届け”のはずが、後に王国の運命を変える冒険になるとは――このとき、誰も知らなかった。


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