『スキル〈お片付け〉で世界最強!? 掃除するだけで経験値25倍生活』

チャチャ

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第36話 ギルド依頼板——“未整頓”の束をほぐす

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昼のギルドは、紙と鉄と肉まんの匂い。
依頼板は満杯で、紙が肩車していた。

受付のアマリアが手を振る。

「今日の板、未整頓が積もってる。数字の人、助かる?」

「助かる側でもある。——段取りは三つ。分ける→計画→着手」

ノラがメモを構える。

「理論上、貼り方から片付けると早い」

カイルが板の前で位置取りする。

「人の流れ、俺が押さえる。……へっ、我慢」

「ナイス克己」

私は〈仕分けタグ〉を三色で貼る。
赤=急(安全・衛生)。黄=中(生活動線)。青=後(記録・美観)。
紙は素直で、色があると自分の席に戻る。

【清浄度:板面 18→46/閲覧待ち -20%】

黄の束から、目につく一枚を抜いた。
「孤児院・倉庫“ゴミ屋敷討伐(軽)”」。
納期は“できるだけ早く”。説明の字が弱っている。

「ここから行く」

アマリアが親指を立てた。

「院長さん、腰悪いの。助かる」

——孤児院の裏庭。
倉庫は背の低い石造り、戸口だけ元気に歪んでいた。

院長が腰を押さえて会釈する。

「ごめんねえ、もらい物がねえ、どうにも」

「もらい物は“未整頓”の名札がつく。——帰る場所を作りましょう」

段取りは三つ。分ける→拭く→風。
まず、分ける。赤=危険物。青=使用中。黄=“見てから”。
〈問答整理〉の小札を地面に置き、声を短くする。

ノラが箱の口を押さえる。

「理論上、布と紙が混ざってる」

「現実上も。布は青、紙は黄。金物は赤に寄せる」

次に、拭く。
床の“つまずき帯”と棚の前縁を光磨布で縦に通す。
きゅっ、きゅっ。
足が利き、箱が素直に滑る。

【清浄度:倉庫内 21→57/行動 -6%】

箱の影で、灰色の流れがさらさら動いた。
**紙魚(しみ)**の群れ。角が好き、湿りが好き、記録は嫌い。

「“洗って”退ける。——淡水霧→縦拭き→上抜き」

霧で静電気を落とし、棚下を縦に一枚。
糸の風を細く上へ。
紙魚は暗い隙間へ退いた。

【被弾 -8%/紙粉落下 -40%(短時間)】

布の山の下から、ぬるっと光る背。
布食いナメクジ。染料の匂いに寄る。

「重曹を点で。——横拭きで逃がし、縦で一枚、通す」

ぬめりが切れて、背がつんと立つ。
カイルが短距離で踏み込み、通路だけ押さえる。

「頭上も足元も、クリア。……へっ、我慢」

最後に、風。
倉庫の換気口は小さい。
〈風紋表示〉を出し、横→上の二段で細く抜く。
匂いは“手前”で止まり、湿りだけ上へ逃げる。

【清浄度:57→100】
【清浄波:小スタン1.5秒/湿気層 -2段階(体感)】

黄箱の底から、薄い筒がころり。
封は古く、紙はやけに強い。

ノラが目を細める。

「“街区風路の古図(破片)”。理論上、王都の古い風の道」

「発掘、ありがとう」

次の箱から、透明な小石が一つ。
芯に糸みたいな気泡。

「“高純度魔石(微)”。常設の微調整に向く」

院長が両手を合わせた。

「布と紙が“息してる”。匂いも優しくなって……ありがとねえ」

「帰る場所ができたから、帰っただけです」

――――
【作業結果(孤児院・倉庫)】
清浄度:21→100(所要 15分)
方式:仕分け(三色)→拭く(光磨布)→風(横→上)
妨害:紙魚・布食いナメクジ(洗い→退避)
効果:湿気層 -2段階/転倒 0件/取り出し時間 -40%(体感)

【発掘判定】
清浄度:100/整理度:A/タグ精度:A → レア⭐︎⭐︎
【発見】
・街区風路古図(破片)(品質B+/王都古インフラの手掛かり)
・高純度魔石(微)(品質A/微調整用)
――――

帰り道、ノラが古図の端をそっと撫でる。

「理論上、迷路区画の“抜け道”が増える」

「現実上も。図書庫で照合しよう」

カイルが顎でギルド方向を示す。

「板、まだ満杯。……へっ、我慢」

「名誉(くしゃみ)も満杯にしないで」

——ギルドに戻る。
依頼板の前は、少しだけ息がしやすい。
赤の束は半分、黄は三分の一、青は“後回しでも回る”。

アマリアが手を振った。

「ひと息ついた。で、その筒、見せて」

私は〈記録封緘〉の写しを添えて渡す。
アマリアは目を走らせ、口笛を短く鳴らした。

「古図。王都の“風の骨格”。——これ、地図係が泣いて喜ぶやつ」

「泣く前に、照合。貼り替えずに読むでいきます」

ノラが頷く。

「理論上、地図が通れば、道も通る」

掲示板の端で、茶色い毛玉が袋をかじっていた。
紙兎。食べるのは紙、苦手なのは酢。

「噛む前に“洗う”。——酢水の霧→縦拭き」

紙兎は舌を出して退く。
板の紙は、まっすぐ立つ。

【板面 清浄度:46→64】

「今日の残りは、赤:貯水槽のぬめり/黄:路地の照明不具合/青:記録の再ファイル」

アマリアが札を三枚手渡す。

「赤からお願い。腰に“水の匂い”が悪いの」

「了解。——段取りは変えない。分ける→拭く→風」

視界にお知らせが灯る。

【ステータス】
名前:ミナ・ハルノ/職業:清掃士/レベル:34
体力:178/178 魔力:148/148 運:44(↑)
固有スキル〈お片付け〉Lv5
新規:〈依頼編成〉(板の案件を“赤・黄・青”で最適順に並べ替え/移動ロス -30%)
既存:光磨布/〈夜間拡散〉〈煙道調律〉〈路地網〉〈日次点検〉〈潮路調整〉〈封止調律〉〈泥落とし〉〈風紋表示〉〈熱整流〉〈発掘補正〉〈問答整理〉〈筆跡照合〉〈透読〉〈封緘解析〉〈撤収導線〉〈逆流検知〉〈現場放送〉〈会場設計〉〈夜間案内〉〈案内標生成〉〈群衆整理〉〈書類整頓〉〈記録封緘〉〈除塩拭き〉〈消臭調合〉〈結束術〉〈背ラベル生成〉〈仕分けタグ〉〈除菌配分〉〈動線マップ〉
相棒:洗剤スライム・ポンポン(満腹度 58%/紙はおやつじゃない)

アマリアが笑う。

「“依頼編成”か。板が片付くと、街が片付く」

「板は道標。数字は帰り道」

カイルが槍を肩で整える。

「赤、貯水槽。……へっ、我慢」

ノラがペンを耳に挟む。

「理論上、ぬめりは“洗い討ち”で落ちる」

「現実上も。——拭いて、乾かして、風」

私は光を縦に一度だけ通した。
依頼板の紙の背が、そろって立った。
次は、貯水槽。
湿りの道を、数字で通す。

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