異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ

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第2章 村の仲間と恋の予感

第11話「にぎやかな朝と、旅商人の足音」

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「できた……!」

 ひなのは両手で持てる小さなパンを、そっと木皿にのせた。
 まだほんのりあたたかくて、こんがりきつね色。
 初めての異世界料理にしては、かなりの出来だと思う。

「すごい、見た目完璧じゃん」
 はるとがのぞき込む。

「わ、焦げてない! 味見していい?」

「お兄ちゃん、ちょっと待って。写真……って、カメラないんだった」

「異世界あるあるすぎるな……」

 代わりにリンネが小さなスケッチブックを開き、パンの絵をささっと描き始めた。

「記録用イラストで保存ね。ひなのちゃん初のパン、これは残さなきゃ~」

 焼きたてのパンには、昨日しぼったばかりのナナちゃんミルクと、村人からもらったはちみつが練り込まれていた。
 ほんのり甘くて、ふわっとしていて──

「うまっ」

「これ、普通に売れるレベルじゃない?」

「えへへ……やった~!」

 みんなが笑顔になった瞬間だった。

 ──カラン、カラン。

 遠くから、荷馬車の鈴の音が響く。

「あっ、あれ……」

 門の前に、荷車とともに現れたのは、褐色の肌に赤いスカーフを巻いた青年だった。

「よお、おはよう。新顔さんかな?」

「え、誰?」

 青年は口元だけで笑いながら、手綱を止める。

「俺の名はエルド。旅商人さ。定期的にこの辺りを回っててね。新しい牧場ができたと聞いて、ちょっと挨拶に来たってわけ」

「旅商人……ってことは、何か売ってるんですか?」

「もちろん。今はちょうど“ニワトリ”の入荷があってね。新米牧場主さんにはピッタリだと思って」

「ニワトリ!? マジか! 欲しい!」

 はるとは即答した。
 畑→牛と来て、次に導入したいと思っていたのがまさにそれだった。

「一羽でいいんですか?」

「いや、できれば二羽。オスとメスで。卵を孵せれば増える可能性もあるし」

「さすがわかってるねえ」

 エルドは軽く指を鳴らすと、荷車の後ろから藁に包まれた小さな鳥かごを取り出す。
 中には、ふわふわの白いニワトリが二羽、ちょこちょこ歩いていた。

「この子が“ポコ”、こっちが“モモ”。仲良し夫婦さ」

「……名前、もうついてるんだ……」

「生産者がつけたらしいよ。ま、気に入らなければ変えてもいい」

「いや、ポコとモモでいこう」

 その場で即決。
 エルドは笑いながら取引を済ませると、さらっとパンに目を留めた。

「ん? それ……自家製パンかい?」

「あ、はい。今朝わたしが焼いたんです」

「……ひとつ、試していいかい?」

 ひなのがうなずくと、エルドはひとくち食べてから、口元を緩めた。

「……これはいい味してる。君たち、村の市場に出店してみる気はあるかい?」

「えっ、市場……?」

「君らが作ったミルク、卵、そしてパン──全部需要ある。収穫祭も近いし、今なら村の“青空マーケット”に簡易出店できるようになるはずさ」

「それ、やろう!」

 はるとは即答。
 こうして牧場に「にわとり」と「次の目標」が同時にやってきた。


---

 その日の午後、はるとたちはさっそくにわとり小屋の設置作業を開始。

「こっちが止まり木で……この辺に餌箱……」

 リンネがスケッチをもとに配置を考え、はるとがハンマーをふるい、ひなのが掃き掃除と準備を担当。

「ポコ~、モモ~、ここが君たちの新しいおうちだよ~」

 小屋の中に入ったポコとモモは、少し首をかしげたあと、のそのそと止まり木に登った。

「……なじんでる」

「なじんでるね……」

 その日の夜。
 ポコが、初めての卵を一個、産んでくれた。

「うわああああ! 本当に産んだああ!」

 牧場に、小さなガッツポーズと、笑い声が響いた。


---

【新施設:にわとり小屋を設置しました】
・ニワトリ「ポコ」「モモ」が仲間に加わりました!
・卵の採取が可能になりました
・ミルク×卵=パンの組み合わせで出店が可能です!

【次の目標:村の青空市場に出店しよう!】


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