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第4章 兄妹の再会と賑やか二人暮らし
第34話「ひなのの調合技術が進化」
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夜明け前、牧場の大気はひんやりしているのに、ひなのの胸は熱かった。
昨日の夕食会で村人たちが見せた笑顔。――あの笑顔を、もっと“守れる力”にしたい。
蝋燭一本の明かりだけを頼りに、調合所の窓をつと開ける。黒い空が群青に溶け、東の稜線がわずかに白む頃。
机の上には、薬草村から取り寄せたアーベルの実、森で摘んだカムリアの若葉、そして秘蔵のラフィア粉末。ひなのは深呼吸し、分量を決める指先を落ち着けた。
> 「今日のテーマは“万能強壮薬”。
病気にも寒さにも強い、家畜も人も飲める――そんなレシピを作る!」
---
1 うねりを刻む乳鉢の音
ラフィア粉末を小皿に一さじ。その香りは切り立ての青リンゴのように爽やか。
カムリア若葉はすぐ酸化するので、石のまな板の上で素早く刻む。みずみずしい緑の汁がしずくとなって滴った。
乳鉢へ――。
乳棒が“くる、くる”と回るたび、ハーブの汁が粉末を湿らせてクリーム色へ変わる。
アーベルの実を半分に割ると、赤くて粘ついた果肉が宝石のように光る。甘い香りが夜明けの空気の中でひときわ強い。
「甘味と粘度で粉を包んで、溶けやすく。……よし!」
刻んだ葉と粉を練り、最後に果肉を加える――が、ここで粘度が不安定になった。乳鉢の中身が“もっさり”団子状になり、かき混ぜても粘りが戻らない。
「まずい……糖分と水分のバランスが崩れた」
額に汗がにじむ。焦げ付きやすい粘度。火にかけりゃ固まる。だが、諦めずに乳棒を逆方向へ混ぜ返す。
そのとき、背後で小さなノック音。
「まだ夜が明けきってないぞ。寝ててもいいんだぞ?」
悠翔の低い声。髪は寝癖で跳ねているのに、目は冴えていた。
「ごめん、お兄ちゃん。でももう少しで掴めそうなんだ」
ひなのは振り返らず、手だけを休めて言った。
「アーベルは糖分高いから粉が抱きこみすぎるんだ。乾燥ハーブをひとつまみ追加してみろ。水分を吸ってちょうどいいペーストになる」
悠翔は寝ぼけ半分、しかし農学と調合の知恵を合わせた助言を落とすと、静かに調合所を出ていった。
「あ、ありがとう……」
言い終わらぬうちに扉が閉まり、早朝の調合所に再び静寂。
ひなのは棚の瓶から乾燥ナツメシダをひとつまみ。砕いた粉を生地へ混ぜ込むと――粘度がゆっくりほどけ、艶のある淡紅色のペーストへ落ち着いた。
---
2 蒸留と凝縮、そして香り立つ
ペーストを小鍋に移し、弱火で湯煎。温度は65度をキープ。湯気がほの甘い潮騒のように立ちのぼる。
鍋の底に膜が張ったら火を止め、木べらで練り返す。滑らかな“葛餡”の手触りが指先に伝わった瞬間、ひなのの脳裏にインスピレーションが灯る。
「……これ、蜜蝋と合わせたら携帯用のペーストになる!」
夜明けの空が淡金色に染まっていく。蝋燭の代わりに窓から差し込む光で鍋を照らすと、ペーストが桃色に艶めいて見えた。
小瓶に詰め、蜜蝋を少し溶かしてシールする。最後に薄い樹皮のラベルを貼り、羽ペンで名前を書く。
> 【ハーブブースト・ゼリー】
効果:軽疲労回復/免疫向上/家畜用可
「……完成……!」
ペンダントの中で女神の紋が穏やかに光り、システムウィンドウが開く。
> ◆スキルログ──
ひなのが《調合・応用初級》を進化させました!
新レシピ【万能強壮ペースト】習得!
---
3 朝の試飲会
納屋前、赤い朝陽が牧草を黄金色に染める。
牛舎からナナが近寄り、鼻先で瓶を小突く。「ちょっと待って」とひなのが笑いながらさじでひとすくい。
「甘い匂いがする。……はい、どうぞ」
ナナはぺろりと舐め、満足げに長い舌で自分の鼻をぺろんと拭った。少し離れた所では、羊たちが興味津々に鳴き、朝日を浴びた鶏たちが翼を伸ばす。
そこへ悠翔が戻ってきた。手にはまだ湯気の立つミルクマグ。
「ちょっと味見させてもらおうかな」
ひなのが匙でひとくち分をミルクに溶かす。淡桃色の渦が白いミルクに溶け込み、桜色へ変わる。悠翔がゆっくり口に含むと、驚いたように目を見開いた。
「甘すぎないのにコクがある……体が内側から温かくなるな」
「成功、かな……!」
ひなのの頬がほころぶ。いつの間にかリンネも現れ、鼻先をくんくん。
「私もー!」
朝の空気に笑い声が弾け、夜通しの苦労が報われる音がした。
---
4 ミーナの審査
昼過ぎ、温室に届けられたサンプルを受け取り、ミーナが小匙で一滴舐めた。眉ひとつ動かさず味を吟味する薬師長。
「……甘味、粘度、後味、すべて悪くない。副作用も見当たらん。見習い尺を超えたレベルだな」
「ほ、本当ですか!?」
「これを村の診療所にも卸せ。量産体制は悠翔殿と相談しろ。瓶の密封は改良の余地ありだ」
ミーナは冷たく見えて、目の奥にわずかな賞賛の光を宿している。ひなのは深々と頭を下げた。
---
5 夕暮れの畑、新たな苗
夕方、兄妹は余ったペーストを畑の苗へ施す実験を始めた。希釈した液体を潅水用のジョウロに入れ、畑の端からゆっくり撒いていく。
やがて地面が落ち着きを取り戻すと、葉は少し色を濃くし、苗がしゃんと背筋を伸ばしたように見えた。
「……これ、すごいな。翌日には発芽速度が上がるかもしれない」
「ほんと? じゃあ明日の観察が楽しみだね!」
西の空が群青と蜜柑色を混ぜたグラデーションに染まる。帰り際、ひなのは畑を振り返り、小さく拳を握る。
(もっと、みんなの役に立つ調合師になる!)
---
【イベント完了:万能強壮ペースト完成】
・新レシピ〈万能強壮ペースト〉登録
・スキル「調合・応用初級」→「調合・応用中級」に昇格!
・家畜の体調管理効率+15%/作物発芽ブースト効果(小)付与
・ミーナの評価+10/村診療所へ新規納品契約締結
【次の目標:冬祭り準備&小さな恋の予感】
・冬祭り出店メニューを考案せよ!
・村の青年リオとのイベントフラグが点灯中…?
昨日の夕食会で村人たちが見せた笑顔。――あの笑顔を、もっと“守れる力”にしたい。
蝋燭一本の明かりだけを頼りに、調合所の窓をつと開ける。黒い空が群青に溶け、東の稜線がわずかに白む頃。
机の上には、薬草村から取り寄せたアーベルの実、森で摘んだカムリアの若葉、そして秘蔵のラフィア粉末。ひなのは深呼吸し、分量を決める指先を落ち着けた。
> 「今日のテーマは“万能強壮薬”。
病気にも寒さにも強い、家畜も人も飲める――そんなレシピを作る!」
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1 うねりを刻む乳鉢の音
ラフィア粉末を小皿に一さじ。その香りは切り立ての青リンゴのように爽やか。
カムリア若葉はすぐ酸化するので、石のまな板の上で素早く刻む。みずみずしい緑の汁がしずくとなって滴った。
乳鉢へ――。
乳棒が“くる、くる”と回るたび、ハーブの汁が粉末を湿らせてクリーム色へ変わる。
アーベルの実を半分に割ると、赤くて粘ついた果肉が宝石のように光る。甘い香りが夜明けの空気の中でひときわ強い。
「甘味と粘度で粉を包んで、溶けやすく。……よし!」
刻んだ葉と粉を練り、最後に果肉を加える――が、ここで粘度が不安定になった。乳鉢の中身が“もっさり”団子状になり、かき混ぜても粘りが戻らない。
「まずい……糖分と水分のバランスが崩れた」
額に汗がにじむ。焦げ付きやすい粘度。火にかけりゃ固まる。だが、諦めずに乳棒を逆方向へ混ぜ返す。
そのとき、背後で小さなノック音。
「まだ夜が明けきってないぞ。寝ててもいいんだぞ?」
悠翔の低い声。髪は寝癖で跳ねているのに、目は冴えていた。
「ごめん、お兄ちゃん。でももう少しで掴めそうなんだ」
ひなのは振り返らず、手だけを休めて言った。
「アーベルは糖分高いから粉が抱きこみすぎるんだ。乾燥ハーブをひとつまみ追加してみろ。水分を吸ってちょうどいいペーストになる」
悠翔は寝ぼけ半分、しかし農学と調合の知恵を合わせた助言を落とすと、静かに調合所を出ていった。
「あ、ありがとう……」
言い終わらぬうちに扉が閉まり、早朝の調合所に再び静寂。
ひなのは棚の瓶から乾燥ナツメシダをひとつまみ。砕いた粉を生地へ混ぜ込むと――粘度がゆっくりほどけ、艶のある淡紅色のペーストへ落ち着いた。
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2 蒸留と凝縮、そして香り立つ
ペーストを小鍋に移し、弱火で湯煎。温度は65度をキープ。湯気がほの甘い潮騒のように立ちのぼる。
鍋の底に膜が張ったら火を止め、木べらで練り返す。滑らかな“葛餡”の手触りが指先に伝わった瞬間、ひなのの脳裏にインスピレーションが灯る。
「……これ、蜜蝋と合わせたら携帯用のペーストになる!」
夜明けの空が淡金色に染まっていく。蝋燭の代わりに窓から差し込む光で鍋を照らすと、ペーストが桃色に艶めいて見えた。
小瓶に詰め、蜜蝋を少し溶かしてシールする。最後に薄い樹皮のラベルを貼り、羽ペンで名前を書く。
> 【ハーブブースト・ゼリー】
効果:軽疲労回復/免疫向上/家畜用可
「……完成……!」
ペンダントの中で女神の紋が穏やかに光り、システムウィンドウが開く。
> ◆スキルログ──
ひなのが《調合・応用初級》を進化させました!
新レシピ【万能強壮ペースト】習得!
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3 朝の試飲会
納屋前、赤い朝陽が牧草を黄金色に染める。
牛舎からナナが近寄り、鼻先で瓶を小突く。「ちょっと待って」とひなのが笑いながらさじでひとすくい。
「甘い匂いがする。……はい、どうぞ」
ナナはぺろりと舐め、満足げに長い舌で自分の鼻をぺろんと拭った。少し離れた所では、羊たちが興味津々に鳴き、朝日を浴びた鶏たちが翼を伸ばす。
そこへ悠翔が戻ってきた。手にはまだ湯気の立つミルクマグ。
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ひなのが匙でひとくち分をミルクに溶かす。淡桃色の渦が白いミルクに溶け込み、桜色へ変わる。悠翔がゆっくり口に含むと、驚いたように目を見開いた。
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ひなのの頬がほころぶ。いつの間にかリンネも現れ、鼻先をくんくん。
「私もー!」
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ミーナは冷たく見えて、目の奥にわずかな賞賛の光を宿している。ひなのは深々と頭を下げた。
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5 夕暮れの畑、新たな苗
夕方、兄妹は余ったペーストを畑の苗へ施す実験を始めた。希釈した液体を潅水用のジョウロに入れ、畑の端からゆっくり撒いていく。
やがて地面が落ち着きを取り戻すと、葉は少し色を濃くし、苗がしゃんと背筋を伸ばしたように見えた。
「……これ、すごいな。翌日には発芽速度が上がるかもしれない」
「ほんと? じゃあ明日の観察が楽しみだね!」
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