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7章 空鈴の夜置きと、復翼の走法
第58話 夜走の合い、風棚肩で拍を再整
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闇は浅く、風は層で流れた。
復翼した封球は重さを取り戻し、しかし呼吸はさらに静かだ。胸の裏で返鈴綾は“薄通し”に落とし、待機の糸だけ保っている。
《行程ログ:外縁北路—夜走/目標=風棚の肩で“拍再整”》
《搬送:復翼(二核)=同期 高/返鈴綾=薄通し(待機)》
《周辺:紙見=低/影鍵=点在/鎖鈴=無》
「“夜走の合い”で行く。三撫は同じ――綾→空転→撫照合。締めは触れず」
セリューナが低く言い、ロゥナが前方の起伏に横受け座を細かく散らす。
砂背を二つ越えた先、黒い灌木の影に薄い輪線。
影の鍵鈴――音を使わず影の“揺れ”で押印する夜仕様だ。
「踏まずに返す」
刃の背で影をはじき、俺は偽車輪の撥を空振りで前半に置く。
セリューナが綾で逆相を細く流し、ロゥナが横受け座の角を丸くした。
輪線の噛み口は半拍遅延し、鍵は空噛みして砂へ沈んだ。
《影鍵鈴:押印失敗/残留=無》
◇
丘の裾に息留め石(予備)が薄く光る。
昼間に登録した“撫照合・非刻印”の座だ。今夜は素通り。位置だけ胸の裏で吸って戻す。
《息留め石(予備):照合=撫・非接触/通過(停留なし)》
風は次第に硬くなり、岩背の肩が段へと変わる。
前方、白っぽい岩棚が幾重にも張り出した――風棚の肩。
昼より冷え、石羽の束が霜のように敷かれている。
「“拍再整”。――二核の位相を夜走へ」
セリューナが小瓶を出す。返鈴冷却油を綾の結び目へ一滴。
ロゥナは横受け座を互い違いに敷き、足の底を丸く保つ。
《再整 手順:
① 綾=冷却→張力 微増
② 偽車輪=半拍 空転(間の付与)
③ 道鈴A=触れず撫で(層合わせ)
④ 二核=拍合わせ→“夜走位相”へ》
石羽が擦れようと持ち上がり、しかしセリューナの薄水の皮で角が丸められる。
俺は道鈴Aを触れず撫で、層だけ通す。
拍が沈んで戻り、二核が夜の層にぴたりと重なった。
《再整:完了/二核 同期=高/搬送揺れ=微小》
◇
肩の上段で、空に骨だけの凧枠が一枚。
遠い。だが、風の層の“形”を読む姿勢だ。夜は音を嫌う相手――こちらの術も同じだ。
「“無音の四撫”に増やす。――綾→空転→撫照合→横受け反転」
セリューナが囁く。
俺は綾を一撫で、偽車輪を半拍空転、道鈴Aを触れず撫で。
ロゥナが前→後の横受け反転を一拍で入れ替える。
凧枠の計算は“余白過剰”で迷い、形の確度が落ちた。
《骨凧:形写し 確度 低下→観測継続(干渉なし)》
その隙に、棚板の影から紙砂の簾が細く降りた。
行末に句点を打つ夜の癖――打たせない。
「句点は延ばす」
撥を空振りで前半に置き、セリューナが粒の張力を崩す。
ロゥナが横受け座を斜に差し、簾の落ち口を半拍遅らせた。
粒は句点になれず、棚の外へ流れる。
《紙砂簾:句点形成 失敗→散》
◇
再整を終え、肩を抜ける。
復翼の重みは安定し、息は深い。返鈴綾は薄通しのまま、ただ約束として残す。
《復翼 搬送:外拍=高安定/疲労=低》
《返鈴綾:薄通し 維持/切離し=待機》
岩背の陰で短い休憩。
セリューナが封球の外膜を撓み検査、ロゥナが偽車輪の枠を再度締める。
俺は胸で三吸二吐、道鈴Aを撫でで層を吸って戻す。
《点検:外膜=良/偽車輪 枠=良/照合=旅(撫・非接触)》
その時、背風に無音の息がひとつ、短く明滅した。
――夜の合いは、静かに返せ。
鳴らさずに、触れずに。
セフィアの調子。頷き、立ち上がる。
◇
肩の先は、砂と草が交じる浅い鞍部。
遠くで小さな風見杭が星明りに縁取りされ、さらに先に低い黒帯――夜の外縁北路が続く。
《旅路ログ:風棚肩—拍再整 完了/妨害=無音解》
《追跡:紙見=遠在/影鍵=散発/危険度=低》
《次行程:外縁北路 夜走→“北端の渡り棚”→第59話》
「行こう。――復翼のまま、鳴らさず、触れず、撫でて」
風が裾を一度だけ持ち上げ、前へ押す。
二核の拍は外拍にぴたりと合い、夜の道は音のない明るさで続いていった。
復翼した封球は重さを取り戻し、しかし呼吸はさらに静かだ。胸の裏で返鈴綾は“薄通し”に落とし、待機の糸だけ保っている。
《行程ログ:外縁北路—夜走/目標=風棚の肩で“拍再整”》
《搬送:復翼(二核)=同期 高/返鈴綾=薄通し(待機)》
《周辺:紙見=低/影鍵=点在/鎖鈴=無》
「“夜走の合い”で行く。三撫は同じ――綾→空転→撫照合。締めは触れず」
セリューナが低く言い、ロゥナが前方の起伏に横受け座を細かく散らす。
砂背を二つ越えた先、黒い灌木の影に薄い輪線。
影の鍵鈴――音を使わず影の“揺れ”で押印する夜仕様だ。
「踏まずに返す」
刃の背で影をはじき、俺は偽車輪の撥を空振りで前半に置く。
セリューナが綾で逆相を細く流し、ロゥナが横受け座の角を丸くした。
輪線の噛み口は半拍遅延し、鍵は空噛みして砂へ沈んだ。
《影鍵鈴:押印失敗/残留=無》
◇
丘の裾に息留め石(予備)が薄く光る。
昼間に登録した“撫照合・非刻印”の座だ。今夜は素通り。位置だけ胸の裏で吸って戻す。
《息留め石(予備):照合=撫・非接触/通過(停留なし)》
風は次第に硬くなり、岩背の肩が段へと変わる。
前方、白っぽい岩棚が幾重にも張り出した――風棚の肩。
昼より冷え、石羽の束が霜のように敷かれている。
「“拍再整”。――二核の位相を夜走へ」
セリューナが小瓶を出す。返鈴冷却油を綾の結び目へ一滴。
ロゥナは横受け座を互い違いに敷き、足の底を丸く保つ。
《再整 手順:
① 綾=冷却→張力 微増
② 偽車輪=半拍 空転(間の付与)
③ 道鈴A=触れず撫で(層合わせ)
④ 二核=拍合わせ→“夜走位相”へ》
石羽が擦れようと持ち上がり、しかしセリューナの薄水の皮で角が丸められる。
俺は道鈴Aを触れず撫で、層だけ通す。
拍が沈んで戻り、二核が夜の層にぴたりと重なった。
《再整:完了/二核 同期=高/搬送揺れ=微小》
◇
肩の上段で、空に骨だけの凧枠が一枚。
遠い。だが、風の層の“形”を読む姿勢だ。夜は音を嫌う相手――こちらの術も同じだ。
「“無音の四撫”に増やす。――綾→空転→撫照合→横受け反転」
セリューナが囁く。
俺は綾を一撫で、偽車輪を半拍空転、道鈴Aを触れず撫で。
ロゥナが前→後の横受け反転を一拍で入れ替える。
凧枠の計算は“余白過剰”で迷い、形の確度が落ちた。
《骨凧:形写し 確度 低下→観測継続(干渉なし)》
その隙に、棚板の影から紙砂の簾が細く降りた。
行末に句点を打つ夜の癖――打たせない。
「句点は延ばす」
撥を空振りで前半に置き、セリューナが粒の張力を崩す。
ロゥナが横受け座を斜に差し、簾の落ち口を半拍遅らせた。
粒は句点になれず、棚の外へ流れる。
《紙砂簾:句点形成 失敗→散》
◇
再整を終え、肩を抜ける。
復翼の重みは安定し、息は深い。返鈴綾は薄通しのまま、ただ約束として残す。
《復翼 搬送:外拍=高安定/疲労=低》
《返鈴綾:薄通し 維持/切離し=待機》
岩背の陰で短い休憩。
セリューナが封球の外膜を撓み検査、ロゥナが偽車輪の枠を再度締める。
俺は胸で三吸二吐、道鈴Aを撫でで層を吸って戻す。
《点検:外膜=良/偽車輪 枠=良/照合=旅(撫・非接触)》
その時、背風に無音の息がひとつ、短く明滅した。
――夜の合いは、静かに返せ。
鳴らさずに、触れずに。
セフィアの調子。頷き、立ち上がる。
◇
肩の先は、砂と草が交じる浅い鞍部。
遠くで小さな風見杭が星明りに縁取りされ、さらに先に低い黒帯――夜の外縁北路が続く。
《旅路ログ:風棚肩—拍再整 完了/妨害=無音解》
《追跡:紙見=遠在/影鍵=散発/危険度=低》
《次行程:外縁北路 夜走→“北端の渡り棚”→第59話》
「行こう。――復翼のまま、鳴らさず、触れず、撫でて」
風が裾を一度だけ持ち上げ、前へ押す。
二核の拍は外拍にぴたりと合い、夜の道は音のない明るさで続いていった。
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