『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ

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1章 転生ガチャで始まる異世界スローライ フ!? ポンコツ神と無自覚最強の村暮らし

第5話「グレン峡谷の影、古代の囁き」

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 ギルド掲示板に張り出されていた新しい依頼。それは、グレン峡谷周辺の調査だった。

「最近、峡谷の周辺で地盤の揺れや、不可解な光の目撃が相次いでるらしい」

 受付嬢のリセルが、資料を片手に説明してくれる。

「でも、そこって確か……」

「そう。古代遺跡の埋没地帯。しかも、過去に“調査中に行方不明”って報告が何件も」

「物騒な場所だな。報酬は?」

「ランクA依頼と同等。つまり、危険ってことよ」

 俺は少し悩んだが、すぐに決めた。

「受けるよ。風が導いてる気がする」

「……レクさんらしいですね。じゃあ気をつけて」

 ギルドを出ると、風がひと吹き。まるで応援してくれてるようだった。

◇◇◇

 グレン峡谷は、地図で見るよりもはるかに巨大だった。

 岩肌むき出しの断崖絶壁、霧に覆われた谷底――
 そこには確かに、何かが眠っている“匂い”がした。

「主よ、周囲の魔力密度が高まってます。この下、何かあります」

「やっぱりな。降りてみるか」

 滑車で吊るされた古びたエレベーターを使い、俺たちは谷底へと降下した。

 ……が、数分後。

「な、なんだこれ……!」

 霧の中に浮かび上がったのは――巨大な門。

 そしてその中央には、見覚えのある刻印。
 ルーレ村で手に入れた“魔導刻印の欠片”と、同じ紋章が刻まれていた。

「ここが、すべての始まりか……?」

 風が唸った。新たな冒険の扉が、今、開かれようとしていた。

 門の前に立つと、空気の密度が一気に変わった。
 風が流れず、魔力が淀んでいる。まるで――この場所そのものが“息をひそめている”。

「主よ、この門は“封印型”です。中から魔力が漏れている……つまり、何かが封じられている可能性が」

「開けていいかどうか、わからんな……でも、刻印がある以上、何かのつながりがある」

 門の表面を撫でると、手の中の“魔導刻印の欠片”が淡く発光した。

「……共鳴した?」

 すると、門が――低いうなり声とともに、ゆっくりと開いた。

 中は、朽ちた石造りの通路。そして、床のあちこちに散らばる魔導装置の残骸。

「完全に古代文明の遺跡か……」

 薄明かりの中、慎重に歩を進める。

「主よ、複数の魔力反応が……これは、動く魔導兵かもしれません」

「了解。いつでも戦えるようにしておこう」

 と――。

 ガシャン、と何かが落ちる音。

 直後、通路の奥から金属音とともに、“それ”は現れた。

 鋼鉄の装甲、青白い魔石の眼、そして――背にはギルド印を模した模造装飾。

「またか……! こいつら、誰かが“ギルドの印”を悪用して、何かを隠してる!」

「主よ、迎撃態勢を!」

 風をまとい、剣を抜く。

 敵の腕が伸び、打ち下ろしてくるのを、横に飛んで回避――

「“風牙閃撃”!」

 風刃が敵の関節部を斬るが、完全には止められない。

「硬いな……でも、弱点は見つけた!」

 俺は“風読の慧眼”を発動し、敵の内部構造の流れを見る。

(中央コアに魔力集中……あそこだ!)

 踏み込んで、剣に風を纏わせ――

「“烈風穿突”ッ!!」

 一点に絞った風の刃が、鋼の装甲を貫いた。

 金属音を立てて、魔導兵は崩れ落ちる。

「ふぅ……まだ奥が深そうだな」

 そのとき――

 通路の奥、石壁の上に浮かぶ文様が青白く光った。

「これは……“試練式の導印”。次の間に何かあるようです」

「やれやれ、イベント続きってわけか」

 遺跡の深部へ、足を進める。

✳✳✳


 “試練式の導印”を越えると、そこは石造りの大広間だった。
 中央には魔法陣が刻まれ、四方の壁には精霊の紋章。

「主よ、この部屋……ただの遺跡ではありません。“契約の間”の可能性があります」

「契約? つまり、精霊とかと?」

「はい。ここには“風の精霊”の加護が残っています。ですが、非常に古く、荒れている」

 たしかに、空気の流れが奇妙だった。風が、循環せず淀んでいる。
 まるで、“何か”がうまく機能していないような。

 すると、魔法陣が淡く光を帯び始めた。

「主よ、魔力が流れ始めました。これは――」

 次の瞬間、魔法陣の中心から風が吹き荒れ、渦となって立ち上がる。

「……契約者よ。我が眠りを乱す者」

 風の中に、少女のような姿が浮かび上がった。
 白銀の髪、透き通る緑の瞳。そして、空気に溶けるような声。

「あなた……精霊?」

「名を《セフィア》。古より風の座に在りし者。我が力、試練を越えた者に与えん」

 なるほど、これが“契約試練”か。

「主よ、これは“実体化した試練空間”です。戦闘準備を!」

「よし……行こうか、精霊セフィア!」

 風が巻き起こる。俺は風刃を構え、目の前の試練へと突入した。

 セフィアの攻撃は、刃のような高速風圧。防御よりも、回避と読みが重要だ。

「来るぞ……!」

 空気の流れを読み、タイミングを計る。

「“風読の慧眼”、最大展開!」

 視界に風の流れが“線”として見える。
 それを頼りに、跳ぶ、滑る、駆ける――

「“風牙連撃”!!」

 風を纏った連続斬撃が、セフィアのバリアを少しずつ削る。

「良い風を纏うな……だが、まだ足りぬ!」

 セフィアの風が一気に暴風と化し、天井を削り取る勢いで襲いかかる。

 この攻撃……受けられない。だが――

「“風導石”、今だ!」

 懐から風導石を取り出し、スキルに共鳴させる。

───────────────  
《風読の慧眼》進化条件を100%達成  
スキル進化中――  
《風律の神眼(ふうりつのしんがん)》へ変化  
───────────────

「これで……読める!」

 風の“律動”が、すべてスローに見えた。
 俺はその隙間を縫って、最後の一撃を叩き込んだ。

「“裂風穿牙”――ッ!!」

 風が吠え、精霊の身体を貫いた。

 静寂の中、セフィアが微笑む。

「……よくぞ我が風を制した。我が名を以て、汝に加護を与えん」

 その瞬間、光の紋章が俺の左手に刻まれた。

「精霊契約……成立、か」

 契約の瞬間、空気が一変した。

 吹き抜ける風は穏やかで澄んでいて、まるで精霊セフィアそのもののようだった。

「主よ、契約が成立したことで遺跡の構造が――」

 その言葉通り、床に描かれていた魔法陣が青白く光り、遺跡の奥の壁が音を立てて開いた。

「……隠し通路、か」

 奥から吹き抜ける風は、これまでとはまったく違う匂いを帯びていた。
 それは“外の世界”では感じたことのない、異質な“古代の気配”。

「この先……何があるんだ?」

 セフィアが静かに答えた。

「我が記憶の底に、微かに眠る影。かつて世界を揺るがした、“古の試み”の残滓かもしれません」

 階段を降りた先は、円形の広場だった。
 その中央に浮かぶのは、直径2メートルほどの黒い石板。空中に静止し、魔力を放っている。

「これは……転移装置、か?」

「ですが、かなり古く劣化しています。座標も不明……安全ではないかと」

 それでも、俺の足は止まらなかった。

 なぜなら――

 石板の周囲に浮かぶ五つの紋章、そのうちの一つが、“風の契約刻印”と一致していたのだ。

「これ……もしかして、精霊との契約で鍵が揃っていく装置?」

「その可能性は高いです。つまり主よ……これが“世界の鍵”なのかもしれません」

 世界の鍵――
 それは冒険譚によくある、失われた古代文明の遺産であり、伝説の起点。

「まだわからないけど……少なくとも、これは旅の次の指標になりそうだな」

 俺は、黒い石板に触れた。
 すると、淡く魔力が反応し、風の紋章だけが光を放った。

「よし……次は、別の精霊を探そう。風だけじゃ足りないらしいからな」

「主よ、今後は“属性の精霊”を探す旅となりますね」

「ああ。火、水、土、雷……他にもあるかもな」

 未知の地へ。精霊との契約を求める旅が、いま始まった。

 遺跡を後にした俺たちは、グレン峡谷を抜けて東の高原地帯へと足を向けた。

「次の精霊は、火属性が濃い地方にいる可能性が高いです」

「となると、あの火山帯か……距離はあるが、行ってみる価値はあるな」

 途中、立ち寄った町では、石版に似た“精霊装置”の伝説が語り継がれていた。

「かつて、大陸には“精霊の柱”と呼ばれる石塔があったらしい。精霊たちが眠る神殿への道標だったとか」

「なるほど……精霊の契約とリンクしてるとすれば、次はその柱を目指せばいいか」

◇◇◇

 町での情報収集を終えた頃、ギルドからの招集が入った。

「“古代遺跡で発見された精霊石の反応”……お前が提出した報告書の影響みたいだな」

 再びリセルが俺にそう伝える。

「ギルド本部が正式に調査班を組織するようです。ですが、精霊契約者である貴方の協力を求めています」

「まさか俺が、ギルドの調査対象になるとはな……」

 だが、悪い話ではない。正式に協力すれば、情報や資源の支援が受けられる。

「わかった。協力するよ。ただし、俺の旅は止めない。精霊の導きを優先する」

「それで十分です」

 こうして、俺は“自由契約冒険者”という肩書きを得た。
 ギルドに縛られず、精霊探索の旅を続けながら、時には彼らの力も借りられる――理想的な立場だった。

◇◇◇

 出発の日。
 荷馬車に荷物を詰め終えたところで、セフィアがふわりと現れた。

「……レク。我は、次の精霊の気配をうっすらと感じる。東南の“焔哭山(えんこくざん)”だ」

「火の精霊、か」

「そこには、長らく“人の手が届かぬ地”がある。我ら精霊にとっても、干渉しづらい領域」

「つまり、誰も触れられなかった契約が眠ってる可能性があるってことか……」

 俺の旅路は、“偶然”ではなく“導き”によって進んでいる気がしてならなかった。

 焔哭山へと続く街道は、荒野と断崖に挟まれた過酷な道のりだった。
 旅人の姿も少なく、代わりに魔物の痕跡ばかりが目立つ。

「……火山帯が近づくにつれて、魔力の密度が変わってきてるな」

「はい、主よ。特に“熱属性”の偏りが強くなってきました。異常なレベルです」

 そんな中、俺たちは奇妙な一団に遭遇した。
 黒ずくめのローブをまとい、顔を隠した五人の集団。しかも、明らかにこちらを意識していた。

(……嫌な気配だ)

 その予感はすぐに現実となる。

「レク・エルディアス……精霊契約者として、お前の力を“捧げよ”」

「……やっぱり来たか。ギルド印、無し。お前ら、何者だ?」

「我らは“焔哭の徒”。古き契約を守り、次なる時代の“鍵”を開く者」

「つまり……面倒なカルトってわけだな!」

 次の瞬間、火の球が飛来。即座にセフィアが展開した風障壁がそれを弾いた。

「戦闘、回避不可能!」

 俺は地面を蹴った。

「“風牙閃撃”!」

 一人のローブを裂き、下から現れたのは赤い刺青で覆われた男。瞳が光り、口元がゆがむ。

「……我らの力、見せてやろう」

 次の瞬間、五人が結界陣を展開。空間が歪み、巨大な火の魔獣が召喚された。

「召喚術か!? しかも、この魔力量……!」

 咆哮とともに襲い来る火炎――

 セフィアが叫ぶ。

「主よ、あれは“精霊の核”を無理やり抽出して具現化した魔獣! 精霊を穢した禁術です!」

「……許せねぇな。そんなもんに精霊を使いやがって!」

 俺の中に、怒りと風が渦巻く。

「“風律の神眼”……全開!」

 空間の歪み、魔力の流れ、敵の動き――すべてが“線”として浮かび上がる。

「お前らが穢した精霊の怒り、まとめて食らいやがれ!」

「“烈風穿牙・解放式”ッ!!」

 剣が唸り、風が雷鳴のごとく炸裂する。
 魔獣の中心を貫き、風が内側から爆発――

 黒衣の一団は吹き飛び、結界も砕けた。

 残されたのは、焼け焦げた地面と、揺れる空気。

「……今のは、明らかに誰かに操られてたな」

 セフィアが頷く。

「はい。この先、精霊の契約を狙う組織の影が……濃くなりそうです」

 戦闘を終えた俺たちは、焦げ跡の残る谷を抜け、ようやく焔哭山のふもとにたどり着いた。

 そこは、灰と赤岩の入り混じる荒涼とした台地。
 遠くには噴煙を上げる山の姿が、夕暮れの空に黒い影を落としていた。

「ここが……焔哭山」

 セフィアが、風を読んで呟く。

「火の精霊の気配、確かにある。ですが、極めて不安定です」

 近くの岩肌には焦げたような痕跡と、古代文字がうっすらと刻まれていた。

『——此処より先、契約なき者、踏み入るべからず——』

「警告か? それとも、封印……」

「いずれにしても、簡単には辿り着けないようです」

 そのとき、俺の背後で風が渦を巻いた。
 セフィアが力を使い、何かを感じ取っているようだ。

「……レク。この山に眠る火の精霊、ただの存在ではありません。“旧き戦争”に関わった個体のようです」

「戦争……?」

「我ら精霊が、かつて神代の終わりに巻き込まれた争いです。人と精霊の、信頼が最も断たれた時代」

 まさか、そんな背景が隠されていたとは。

「つまり、その精霊は……今でも“人間を敵視”してるかもしれないってことか」

「可能性は高いです。だからこそ、主の“風の契約”が、試される時でもある」

「俺が……どう向き合うか、だな」

◇◇◇

 翌朝、俺たちは焔哭山の登山口に立っていた。

 背後には、ギルドの支部から派遣された案内人と、護衛の戦士たち。

「お前が精霊契約者……“風読みの剣”ってやつか。悪いが、こっちは素人だ。無茶はすんなよ?」

「ああ。俺の目的は契約、戦うのは最後の手段だ」

 風が吹く。
 火と風は相反する属性。しかし、だからこそ“調和”の可能性もある。

 俺の旅は、ただの冒険者のものではなくなっていた。

「よし、行こうか。火の精霊に、俺の風が通じるか――試してみよう」

 そして、俺は一歩、灼熱の地へと足を踏み出した。

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