inしたい

高嶺沁

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おそろい

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「あきらーっ」

「莉緒、待った?」

 今日は、大好きな晃とデートの日!


『学校もクラスも一緒で、毎日会ってるのにデートするの?』と中学からの友人·亜里沙がからかいがてら言ってくる。 

「いいの! 好きなんだもん。だったら、亜里沙も好きな子作りなさいよ」と返すと、笑ってはいはいと返される。


「ね、昨日の塾のプリント出来た?」

 学校もクラスも一緒なのに、唯一違うのが塾。私は、中学時代から亜里沙と同じ塾に通ってて、晃は他の学校に通う友達と同じ塾のに通っている。

「なんとかな。お前は?」

「ギリギリ間に合った」

 違う塾でも、系列は同じだから出すプリントや試験日程も同じ。

「赤点だったら、今日外出禁止だったから、亜里沙に教えて貰った」

「あいつ、頭はいいもんな。学年トップだし」

 亜里沙は、中学の時も3年間学年トップだったし、生徒会長もやった位の成績優秀者で、ほんとは私とは違う高校から是非にと推薦が来たらしいけど、頑として首を縦に振らなかったと中学の時の担任が言っていた。

「それか? ラインで送ってきたやつ。似合うじゃん」

 この日の為に、亜里沙に服を選んで貰った。

『こういうふわふわしたのは、莉緒に似合うよ』そう亜里沙が言ってくれた、キャンのワンピース。

「ほんと! ありがと」

 胸元が少し開いてるから、ちょっと恥ずかしいけど···。

「行こうか。今日は、何時までに帰ればいいの?」

 晃は、私のバッグを持ちながら言った。

「十八時かな。パパが、十九時には帰ってくるから」

 デートの時、いつも晃が自宅まで送ってくれる。だから、ママにもパパにも評判がいい。

「ほんとは、もうちょっと長くいたいけど···」

「俺も。うちの兄貴なんかさ···」

 肩に置かれた晃の手。少し固いのは、部活のせいかな。その手に自分の手を重ねてみた。

「こっちのがいい?」と晃が手を伸ばし、その手を握って笑う。

「今日は、これだ!」と空いた左手にはお揃いのリング。

「私も···。ありがと」

 このリングは、私の誕生日のサプライズでジュエリーショップで働いている晃のお兄さんが手頃な価格の物を選んでくれたらしく、私のお気に入りなもの。

「あと2年···。高校卒業したら、絶対結婚しような!」

「うん」

 私の友達カップルとかは、もうアッチの経験あったり、学校辞めて結婚しちゃった女の子もいるけど、私と晃はソノ経験はない。


『したいと思わないの?』と亜里沙は、笑いながら聞いてくるけど、

「なんか怖いもん。しちゃったら、ずっとソレばっかになるとか、に、妊娠しちゃったりとか···」周りの話を聞くと、まだ早いかな?と思うし、そういう話を晃ともした事もある。

『俺は、お前の事が好きだし。もしもの時、まだ責任取れないから』と言ってくれた。


「バイト頑張ってるみたいじゃん。ママ、見たって。私もバイトしたいけど、駄目だって言われてるのに」

「だって、お前先月16になったばっかじゃん」

「でも、したいぃ。いいよね、お兄さんがお店持ってる人は!」

 晃のお兄さんは、ジュエリーショップのオーナーだから。だから、うちのママも少し安く帰るの。

「いいよ、しなくて。家の手伝いで金でも稼ぎな」とまやパパみたいな事を言ってきた。

「もぉ、晃までそれ言う?」

 少し拗ねた感じで言いながらも、最初の目的地の東○ハンズに着いた。

「でも、不思議だよな」

「なに? これなんかどう?」

「亜里沙だよ。お前より上かと思ったけど、まだ15だったとはな」

「そう? あんま言うと睨まれるよ?」

 亜里沙の誕生日を来週に控え、そのプレゼントを選びにきた。

「かもな。なんか、いつも睨まれてる気がする」

 話はするのに、晃と仲良く接してると亜里沙が割り込んできたり、晃を睨んだり···。喧嘩でもしたのかな?

「そういや、これお前持ってなかったか?」と晃が指さしたのは、進級祝いでパパが買ってくれた万年筆。

「うん。そうだよ。たまには、本物を···って、たかっ!」

 イングランの万年筆、こんな高いの?5万?パパのお小遣いよりも上だよ?

 的な言葉が頭を過った。

「高いな。じゃ、これは? 3000円だけど···」

 その隣には、ちょこんと小振りな万年筆が置いてあった。花柄やチェック柄もあって。

「これ! この紺色のチェックのにする!」と亜里沙好みのが丁度あり、それを包んで貰った。

「ほら、これ。やる」と晃は晃で買ったピンクのチェック柄の同じ万年筆を私に寄越した。

「それなら、お揃いだろ」

「いいの? なんか、私貰ってばっかだよ? 誕生日には、そのアレだったけど···」

 お店の外で、貰った袋をプレゼントと一緒にバッグにしまった。


 16歳の誕生日の時、初めてキスをした。むちゃくちゃ、ドキドキして、鼻に晃の唇が当たってやり直して、2度目で触れた晃の唇。

『甘い』と言ったら、ちゃんと唇を拭いてから、キスをした。

 その日は、家に帰っても思い出しては、ひとりキャーキャー言ってたけど、ママもパパも何も言わなかった。


「ここ? マジ?」

 新しく出来たタピオカのお店は、外観も中身もピンク一色で···

「男、いね。あ、いた」

 客層は、ほぼ女の子だけど数人の男の子がいた。

「ね、どれにする?」

 貼られてるメニュー表を見ながら、互いに注文し、晃がお金を払う。たまに、私も払うけど、次のデートでそれ以上に奢られる。

「で、なにそれ? パンケーキ? パフェ?」

「いちごパフェ! アイスとミニパンケーキの。食べてみる?」とアイスを一口晃に食べさせたら、固まった。

「激甘だ。俺のは?」と今度は晃が頼んだゼリービーンを食べさせて貰ったけど、普通に美味しかったのに、甘いのが苦手な晃は、毎度固まる。

「そんな苦手なら、無理しなくてもいいのに」と言っても、
「いいの。俺が食べたいだけだから!」と言い返してくる。

 優しい···。

 大好き!


 甘さで身体を癒やして、今度は晃の友達の誕生日プレゼントを買いにスポーツショップへ。

「1個上なの?」

「あぁ。いい奴だよ。ちょっと身体が弱かったみたいで、元気だったら高校3年」

 晃の友達の石川くんという男の子(名前と顔はラインで)は、私が住んでる百田から二駅離れた市に住んでて、晃も中学はそっちの学校だった。

「同じ高校受けなかったんだ」

「ま、な。俺は行きたかったのに、断られた」

 私は、亜里沙に勧められてここにきたけど。男の子の友達でも、いろいろあるんだね。

「運動全く出来ないけど、あいつ靴だけはミツキが好きなんだよ」

 ミツキとは、ブランドメーカーとしては、国内トップレベル。パパもここのを持っている。履いてはいない。飾ってある。

「ふぅん。見た感じサッカーやってそうだけどね」

 晃は、サッカー部に所属してるし、中学もサッカーやってたって聞いた。

 店内をぐるぐる周り、黒字に赤や黄色の細いラインの入った軽い靴にした。

「そうだ。これ貰ったけど行ってみる?」と手にしたのは、駅ビルでやっている抽選券。

「それ、補助券なら持ってる!」

 私のと合わせて、3回抽選が出来、晃が2回やって私が1回やった。

 結果、外れたけど、3個のチョコ棒はふたりのお腹に無事収められた。

 ウインドーショッピングしたり、本屋で立ち読みしたり、カフェ巡りしたり、楽しいふたりの時間はあっと言う間に···

「じゃ、月曜日ね。今日は、ありがとう」

「いーえ。俺も楽しかった。じゃな!」

 いつものように、自宅まで送ってくれて、こっそりとキスされて···

「ただいま」と家の中に入る。


「もぉっ! くっつきすぎ。ムカつく」

 デートって楽しそうに言うのが、気になった私は、こっそりとふたりの後を遠巻きについていった。

 私といる時とは違う笑顔を出す莉緒に軽く寂しさを感じながらも、そんな莉緒を見て喜ぶ私。

 諦めようとは思ったけど、諦めるどころか、逆に好きな想いが募って···

 莉緒?私が、あなたのこと好きだって知ってる?中学で初めてあなたに声を掛けられた時からずっと莉緒···あなただけを見てきた。

 莉緒···

 あなたが持っている文房具も雑貨も同じの持ってるわ。

 あなたが、修学旅行で買ってくれたお揃いのストラップ。今も大切に使ってる。

 莉緒···。

 誕生日、あなたと過ごせる事が出来たら···

 莉緒···

 莉緒の部屋の灯りがつくのを確認した私は、誰にも見られないように静かにその場所をさった。

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