剣と竜の世界に生まれて〜田舎村の怪力娘。強すぎて戦場で武勲を挙げまくる〜

林美鈴

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第一章 爆速出世街道!蛮族を屠り、陰謀を砕き、巨人の王に認められるまで

第11話 暗室の会談。敵貴族たちの密約。怪力を利用し、騎士を汚すための非道な策略

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 時は少し遡る。

 男、ビスタニオ子爵は酒を呷っていた。

 庶民には一生手が出ない極上の美酒。
 その香りを楽しむ間もなく、杯が次々と空になる。

 ビスタニオは王国子爵であり、貴族である。そして、商才あふれる忠臣である。

 少なくとも、自身の評価はそうであった。

 運河の権益を固め、コツコツと商売を伸ばしてきた。

 それをあの女。サラ・ハイアンがぶち壊しにしたのだ。あの女は、やれ奴隷だ。薬物だと、商売の邪魔をしては、運河の権益に手を出してきた。

 法がどうしたというのだ。私は子爵である。

 民を奴隷にして何が悪い。民が好んで買う薬物で利を得て何が悪い。

 あの女のなんと傲慢なことか。

 そんな夜だった。

 ビスタニオのもとに来客があった。
 人数は二人。リヒテンハイム公爵からの使者である。

 リヒテンハイム公爵といえば、国王陛下の従兄弟の血筋であり、大変な権勢を誇る大貴族だ。
 私のようなものに何用だろうか。
 ビスタニオは、警戒しつつも、使者を受け入れた。

 子爵家の応接間に通された使者たちは、片膝も付かずに、目深にフードを被っていた。
 後ろにいる一方のものは、片手に杖をついていた。

 ビスタニオは、無礼である、と叱りつけようかとしたが、公爵の使いであることを思い出し、自重した。

 前にいる使者が口を開く。

「ハイアン侯爵、あの者は国家の安寧に仇なす逆臣です。ビスタニオ子爵。あなたこそ、その奸臣を誅するにふさわしいお方なのです」

 フードの男の言葉は、まさにビスタニオが日頃思っていたことであった。

「そうだ。我こそは国を憂う忠臣であるのだ」

 フードの男は言葉を続ける。
「閣下。ハイアン侯は、王都に末娘を置いております。この者をならず者に攫わせ、あの女狐に、閣下に逆らうことがどれほど愚かな行いであるか、示してはいかがでしょうか」

 ビスタニオは、表情を変える。
 あのハイアンが邪魔であることは確かである。

 しかしながら、正面から向かい合うには、自らの力はまだまだ弱い。
 そのような行動に出て良いものか。

「ご安心ください。私の言葉は公爵閣下のお言葉。ビスタニオ子爵閣下は、その御意志を受け継いでらっしゃるのです」
 ビスタニオは、公爵という権威に飛びついた。

「そうであるな。我が意は公爵閣下と共にある。あの女狐の鼻を明かしてやろうではないか」
「流石は子爵閣下。素早いご決断。頭が下がる思いです」
 フードの男は甘い言葉を囁く。

「して、私はどのようにすれば良いか」
 ビスタニオは、フードの男が家臣であるかのように振る舞った。フードの男の企み通りであった。

「は。閣下のお手の者から、荒事の得意なものら五十名をいただきたく存じます」

 流石のビスタニオも怪訝な顔をする。
「はて、他ならぬ公爵閣下であれば、その程度のこと造作もないこと。何故私などに命ぜられるのか」
 フードの男はゴマをする。

「ひとえに、子爵閣下のお手柄とするためと愚考いたします。事がなれば、公爵閣下の御派閥に子爵閣下を迎え入れるための布石となるかと」
 ビスタニオは満足げにうなずいた。

「なるほど、なるほど。公爵閣下は、既に次の事態を考慮されておるのだな。私も公爵閣下と共に国の安寧に汗すること、この上ない喜びである。すぐに用意させるゆえ、使うが良かろう」

 ビスタニオは手を叩き、使用人を呼ばわった。
「すぐに人を集めよ。この者に託すのだ」

「ところで、先ほどからいる後ろのご使者。一体どなたなのかな」
 ビスタニオは疑問を口にする。

「私は魔法使いにございます。人の心を操る術を修めております」
 地獄の底から這い出たような恐ろしい声だった。

 ビスタニオは、その恐ろしげな声に恐れつつも尋ねる。
「魔法使いどの。そなたも力を貸してくれるのか」

「もちろんにございます。ロザリア侯爵令嬢が囚われた際には、これを暗殺者とすることも可能です」

 ビスタニオは目を見開く。

「なんと、さすがは公爵閣下の魔法使い。素晴らしい魔法であるな」
 ビスタニオは満足げに微笑む。
 先ほどまでの酒が、本来の美酒の味を取り戻していた。

 後に、ビスタニオ子爵は知る事となる。

 集めた五十名は港湾労働者崩れの盗賊たちで、大層荒っぽく、命令を理解せず、あわやハイアン侯爵の娘を殺害するところであったことを。

 そしてそれを救ったのが、若き騎士カミーユであることを。

 それはともかく、ビスタニオ子爵は、リヒテンハイム公爵の陰謀に加担することとなった。
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