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第一章 爆速出世街道!蛮族を屠り、陰謀を砕き、巨人の王に認められるまで
第29話 父王の願いの毒針。千人戦士ダノンとの友情を背に、飛竜の尾から英雄の証を奪取する誓い
しおりを挟む
カミーユは巨人たちに担がれていた。
それは祭りのようだった。
新たな勇者、カミーユという御輿を担ぎ、巨人の戦士たちは舞い踊った。
カミーユはしばしその揺れに身を任せていた。
改めて疲労感が押し寄せ、思考が定まらなかった。
五分間ほど神輿にされたあと、カミーユは周囲の戦士たちに声をかけた。
「下ろしてくださいませんか。私にはやるべき事がございます」
戦士たちは大人しくなり、カミーユは下ろされた。
巨人の戦士たちの中で最も位の高いもの、新たな千人戦士であるカミーユの言葉を聞かぬ戦士はいない。
カミーユは大の字に倒れる戦士ダノンに近づいた。
そして、自らの身体に流れる竜の血から汲み上げた魔力で、戦士ダノンの傷を癒やした。
戦士ダノンの呼吸が落ち着くのを確認すると、カミーユは自身の顔の傷も治す。
戦士ダノンが目を開け、カミーユの方を見る。
「そうか。俺は負けたか」
カミーユは戦士ダノンを見る。
「はい。勝たせていただきました」
「おい、俺の顔はどうしたっていうんだ。折れた歯まで生えているじゃないか」
顎を押さえながら、戦士ダノンは上体を起こした。
「試し合いかと思いましたので、傷は治させていただきました」
カミーユは戦士ダノンと目線を合わせて話した。
「そうかい。試し合いの割には、良い拳だったぜ。カミーユ」
戦士ダノンはカミーユを呼ぶ時、人間の、を付けることをやめた。
「ダノン。あなたの剣も拳も本当に強かった。不意を打ち、組み打ちに持ち込まねば、私が負けていたと思います」
窓から晩春の日が差した。
光の中、カミーユは手を差し出す。
「ダノン。人間の挨拶で、友愛を示すために互いの手を握ります。私の手を取っていただけますか」
ダノンはカミーユの小さな手を握りしめた。
「もちろんだカミーユ。偉大な戦士よ。俺はお前の友であることを誇りに思う」
カミーユは微笑み、ダノンは豪快に笑った。
カミーユはその後、戦士たちに連れられ、食堂に導かれた。
ベラルーン王国の人間の食事は、主に朝と夜の二食である。
巨人族の戦士は、それに加えて昼食を取る。
当然、カミーユもそれに呼ばれた。
「千人戦士カミーユよ。大いに飲め、大いに食べよ」
戦士ダノンの弟、戦士ブルガが甲斐甲斐しくカミーユのテーブルに食事を持ってくる。
その量は朝食のときより多く、大きな骨付きの肉が凡そ百本、蒸した芋もそれに劣らないほど積まれている。
もちろん、分厚い縁を持つジョッキに注がれたエールも置かれている。
「ありがとうございます。戦士ブルガ。しかしながら、私はそれほど食べられないのです」
無礼に当たるかと思われたが、カミーユはそれらの歓待の食事を辞した。
カミーユは少食ではないが、これらの量はカミーユの常識を遥かに超えていた。
「そうか、千人戦士カミーユ。あなたがそう言うのなら、無理にはすすめない。だが、食事の席には居てほしい。千人戦士を食事の輪から蹴り出したなどとなれば、我らの名誉が傷つけられる」
百人戦士グルドがカミーユに願い出る。
無論、カミーユはそれを受け入れる。
「もちろんです。戦士グルド。私も少しだけいただきます」
カミーユはそう言うと、肉を手に取り頬張った。
これだけの量を食べる戦士たち。
そして、カミーユが勝ったとはいえ、恐ろしい武芸を誇る戦士たち。
カミーユは改めて、巨人族の国の武力を思い知った。
兵多く、精強で名高いベラルーン王国と、少数の巨人族は、長きにわたり争った。そのことにも頷けた。
「そう言えば、千人戦士が二人になってしまったな。我ら戦士を急に倍にはできぬぞ。どうする千人戦士ダノンよ」
エールで顔を赤くした百人戦士グルドが、戦士ダノンに問いかける。
「千人戦士はあくまで名誉。実際には戦士の数が千に届かなくとも、問題はあるまい」
カミーユの誠実さが口から飛び出す。
「ダノン。人間の私がいる前で、戦士の数を話すのは、父王陛下のご意思に反しませんか」
ダノンは笑いながら答える。
「他の人間の前では語らぬさ。だが、友の前だ、憚ることはなかろうよ」
カミーユは、戦士たちの信頼を心に刻んだ。彼らの友愛に背くわけには行かない。
「ありがとうございます。ダノン。私はその信頼、決して忘れることはありません」
戦士たちが昼食を終える頃、父王の側仕えの衛兵が食堂へ入ってきた。
「カミーユ。人間の騎士カミーユはいるか」
その声は高らかであり、騒がしい食堂でもよく通った。
「はい。カミーユは私です。何の御用でしょうか」
カミーユも同じく、よく通る声で答えた。
「父王陛下がお呼びである。王宮の大樹まで来られよ」
「かしこまりました。今うかがいます」
カミーユは座席を飛び降り、衛兵に従った。
王宮の大樹への道すがら、衛兵はカミーユに尋ねる。
「普段より騒がしかったが、何があったのか」
カミーユは少し考えて答える。いずれわかることだ。
「皆様、私が千人戦士となったことを、祝ってくださいました。それで、いつもよりも大きな声が出ていたのだと思います」
カミーユの声は凛々しく、朗々としており、そこに疑う余地はなかった。
「なんと、たしかにあの場には千人戦士ダノンもいた。これは失礼した。千人戦士カミーユ」
衛兵は、偉大な戦士に頭を下げた。カミーユはその真下から見上げる。
「良いのです。あの騒ぎではいずれあなたたちにも伝わったことと思います。それよりも、父王陛下が何故私を呼ばれたか、ご存知でしたら教えていただけますか」
カミーユは、道すがらの話しとして衛兵に尋ねた。
「父王陛下からは、人間の、すまない。千人戦士カミーユを連れてくるように、命じられただけなのだ。詳しいことは直接聞いてくれ」
カミーユは頷いた、話しているうちに、王宮の大樹へたどり着いた。
昼間に見る王宮の大樹は、陽の光を浴び、天空の葉は輝き、その幹もまた、磨いたかのように輝いていた。
そこからは、溢れる生命力が感じられた。
王宮の大樹は生きている。
大樹は、カミーユにそのように思わせた。
カミーユは衛兵に付き従い、大樹の周りの豆の蔓の上に作られた階段を登った。
過日降りるときにも感じたが、カミーユには一段一段が高い階段であった。
カミーユは今日も跳んでそこを通った。
カミーユは王宮の執務の間に入った。
そこはエトナ姫を送り届けた後宮と違い、多くの文官と思われる者たちが忙しなく働いていた。
文官たちは、戦士たちが着る革の鎧ではなく、麻のような衣をまとっていた。
カミーユは衛兵に従い、その間を抜ける。
文官たちの手には、粘土板が乗せられていた。あの文字は本来粘土板に彫るものであったのか。
カミーユは、師ゴダールが見せてくれた巨人族の書物の文字の楔のような形を思い出した。
カミーユたちはそのまま歩き、扉の前にたどり着いた。
「千人戦士カミーユをお連れいたしました」
衛兵が扉を開け、カミーユを中に導いた。
カミーユの眼前に机が見えた。それは大きく、カミーユの目には、机の天板の端までしか見通すことができなかった。
「騎士カミーユ。ただいま参上いたしました」
カミーユは立礼し、机の向こうにいると思われる、父王陛下に向かって声を発した。
「よく来た。千人戦士カミーユ。余はそなたの武芸、嬉しく思うぞ」
父王は立ち上がり、その姿を見せた。ゆっくりと机の横へ周り、そこにある椅子に腰掛けた。
カミーユと父王の距離は近い。自然と父王の魔力がカミーユに感じられた。
それはどこか遠くに、老いを感じさせるものであった。
カミーユは片膝を付いて頭を垂れた。
「父王陛下の御心に応えられたこと。光栄に思います」
カミーユは答え、父王の言葉を待った。
「千人戦士カミーユ。そなたに余の願いを伝える。これを叶えたならば、此度の姫の件、水に流そう」
カミーユは深く頭を垂れる。
「黒鉄の飛竜。と言う竜がいる。その名の通り、そのは鱗は鋼のように固く、空を飛び、その尾の先には猛毒の針を隠し持っている」
父王は一旦言葉を区切る。
「その飛竜の毒針を取ってくる。そして余に手渡す。それが余の願いだ」
普段のカミーユならば、王が椅子から立ち上がり去る。
それを待っただろう。
しかし、ここはベラルーン王国ではなく巨人の国である。
王国の代表として、それが正義の行いであるか、見定める必要があった。
カミーユは頭を下げ、言葉を発する。
「父王陛下。言葉を挟む無礼をお許しください。何故、その針が必要なのでしょうか。お下知に精励するためにも、お教えいただきたく存じます」
父王はしばし口をつぐんだ。そして言葉を発した。
「余の父祖らは、安住の大樹を得るまで、獣や飛竜の脅威にさらされていた。その時、飛竜の群れの長を倒し、皆を守ったものがいた。それが始まりの父王となった」
父王は言葉を続ける。
「以来、父王を継ぐものは、飛竜の長、黒鉄の飛竜の毒針を持ち帰る。それが習わしとなった。しかし、今ではそれは儀礼的なものとなり、戴冠の際に新たな毒針を身につける。そういった物となった」
父王は目を伏せる。しばしあり、言葉を続けた。
「余は長子カミンを、次の父王と考えておる。しかし、余の弟アルゴは、その子ドブルを次の父王にせんと企てておるのだ。それに、王弟アルゴは、ベラルーン王国との同盟を破棄しようと考えておる気配がある」
カミーユは王の言葉を待つ。
「千人戦士カミーユよ。余は老い、いつ倒れるやもしれぬ。その前に、わが幼き長子カミンに、あとを継がせたいと思うのだ。これが余の願いだ」
頭を垂れてカミーユは言葉を発した。
「御心をお示しくださり、ありがとうございました。このカミーユ、巨人と我がベラルーン王国の同盟を永くするためにも、必ずや黒鉄の飛竜の毒針を手に入れ、御前に戻ります」
父王ゾンネはその言葉を聞き、安心して頷いた。
「千人戦士カミーユよ。そなたならば必ずや黒鉄の飛竜の毒針を持ち帰るだろう。余はそれを待っておるぞ」
こうして、騎士カミーユは、父王ゾンネの頼みを引き受けた。
それは祭りのようだった。
新たな勇者、カミーユという御輿を担ぎ、巨人の戦士たちは舞い踊った。
カミーユはしばしその揺れに身を任せていた。
改めて疲労感が押し寄せ、思考が定まらなかった。
五分間ほど神輿にされたあと、カミーユは周囲の戦士たちに声をかけた。
「下ろしてくださいませんか。私にはやるべき事がございます」
戦士たちは大人しくなり、カミーユは下ろされた。
巨人の戦士たちの中で最も位の高いもの、新たな千人戦士であるカミーユの言葉を聞かぬ戦士はいない。
カミーユは大の字に倒れる戦士ダノンに近づいた。
そして、自らの身体に流れる竜の血から汲み上げた魔力で、戦士ダノンの傷を癒やした。
戦士ダノンの呼吸が落ち着くのを確認すると、カミーユは自身の顔の傷も治す。
戦士ダノンが目を開け、カミーユの方を見る。
「そうか。俺は負けたか」
カミーユは戦士ダノンを見る。
「はい。勝たせていただきました」
「おい、俺の顔はどうしたっていうんだ。折れた歯まで生えているじゃないか」
顎を押さえながら、戦士ダノンは上体を起こした。
「試し合いかと思いましたので、傷は治させていただきました」
カミーユは戦士ダノンと目線を合わせて話した。
「そうかい。試し合いの割には、良い拳だったぜ。カミーユ」
戦士ダノンはカミーユを呼ぶ時、人間の、を付けることをやめた。
「ダノン。あなたの剣も拳も本当に強かった。不意を打ち、組み打ちに持ち込まねば、私が負けていたと思います」
窓から晩春の日が差した。
光の中、カミーユは手を差し出す。
「ダノン。人間の挨拶で、友愛を示すために互いの手を握ります。私の手を取っていただけますか」
ダノンはカミーユの小さな手を握りしめた。
「もちろんだカミーユ。偉大な戦士よ。俺はお前の友であることを誇りに思う」
カミーユは微笑み、ダノンは豪快に笑った。
カミーユはその後、戦士たちに連れられ、食堂に導かれた。
ベラルーン王国の人間の食事は、主に朝と夜の二食である。
巨人族の戦士は、それに加えて昼食を取る。
当然、カミーユもそれに呼ばれた。
「千人戦士カミーユよ。大いに飲め、大いに食べよ」
戦士ダノンの弟、戦士ブルガが甲斐甲斐しくカミーユのテーブルに食事を持ってくる。
その量は朝食のときより多く、大きな骨付きの肉が凡そ百本、蒸した芋もそれに劣らないほど積まれている。
もちろん、分厚い縁を持つジョッキに注がれたエールも置かれている。
「ありがとうございます。戦士ブルガ。しかしながら、私はそれほど食べられないのです」
無礼に当たるかと思われたが、カミーユはそれらの歓待の食事を辞した。
カミーユは少食ではないが、これらの量はカミーユの常識を遥かに超えていた。
「そうか、千人戦士カミーユ。あなたがそう言うのなら、無理にはすすめない。だが、食事の席には居てほしい。千人戦士を食事の輪から蹴り出したなどとなれば、我らの名誉が傷つけられる」
百人戦士グルドがカミーユに願い出る。
無論、カミーユはそれを受け入れる。
「もちろんです。戦士グルド。私も少しだけいただきます」
カミーユはそう言うと、肉を手に取り頬張った。
これだけの量を食べる戦士たち。
そして、カミーユが勝ったとはいえ、恐ろしい武芸を誇る戦士たち。
カミーユは改めて、巨人族の国の武力を思い知った。
兵多く、精強で名高いベラルーン王国と、少数の巨人族は、長きにわたり争った。そのことにも頷けた。
「そう言えば、千人戦士が二人になってしまったな。我ら戦士を急に倍にはできぬぞ。どうする千人戦士ダノンよ」
エールで顔を赤くした百人戦士グルドが、戦士ダノンに問いかける。
「千人戦士はあくまで名誉。実際には戦士の数が千に届かなくとも、問題はあるまい」
カミーユの誠実さが口から飛び出す。
「ダノン。人間の私がいる前で、戦士の数を話すのは、父王陛下のご意思に反しませんか」
ダノンは笑いながら答える。
「他の人間の前では語らぬさ。だが、友の前だ、憚ることはなかろうよ」
カミーユは、戦士たちの信頼を心に刻んだ。彼らの友愛に背くわけには行かない。
「ありがとうございます。ダノン。私はその信頼、決して忘れることはありません」
戦士たちが昼食を終える頃、父王の側仕えの衛兵が食堂へ入ってきた。
「カミーユ。人間の騎士カミーユはいるか」
その声は高らかであり、騒がしい食堂でもよく通った。
「はい。カミーユは私です。何の御用でしょうか」
カミーユも同じく、よく通る声で答えた。
「父王陛下がお呼びである。王宮の大樹まで来られよ」
「かしこまりました。今うかがいます」
カミーユは座席を飛び降り、衛兵に従った。
王宮の大樹への道すがら、衛兵はカミーユに尋ねる。
「普段より騒がしかったが、何があったのか」
カミーユは少し考えて答える。いずれわかることだ。
「皆様、私が千人戦士となったことを、祝ってくださいました。それで、いつもよりも大きな声が出ていたのだと思います」
カミーユの声は凛々しく、朗々としており、そこに疑う余地はなかった。
「なんと、たしかにあの場には千人戦士ダノンもいた。これは失礼した。千人戦士カミーユ」
衛兵は、偉大な戦士に頭を下げた。カミーユはその真下から見上げる。
「良いのです。あの騒ぎではいずれあなたたちにも伝わったことと思います。それよりも、父王陛下が何故私を呼ばれたか、ご存知でしたら教えていただけますか」
カミーユは、道すがらの話しとして衛兵に尋ねた。
「父王陛下からは、人間の、すまない。千人戦士カミーユを連れてくるように、命じられただけなのだ。詳しいことは直接聞いてくれ」
カミーユは頷いた、話しているうちに、王宮の大樹へたどり着いた。
昼間に見る王宮の大樹は、陽の光を浴び、天空の葉は輝き、その幹もまた、磨いたかのように輝いていた。
そこからは、溢れる生命力が感じられた。
王宮の大樹は生きている。
大樹は、カミーユにそのように思わせた。
カミーユは衛兵に付き従い、大樹の周りの豆の蔓の上に作られた階段を登った。
過日降りるときにも感じたが、カミーユには一段一段が高い階段であった。
カミーユは今日も跳んでそこを通った。
カミーユは王宮の執務の間に入った。
そこはエトナ姫を送り届けた後宮と違い、多くの文官と思われる者たちが忙しなく働いていた。
文官たちは、戦士たちが着る革の鎧ではなく、麻のような衣をまとっていた。
カミーユは衛兵に従い、その間を抜ける。
文官たちの手には、粘土板が乗せられていた。あの文字は本来粘土板に彫るものであったのか。
カミーユは、師ゴダールが見せてくれた巨人族の書物の文字の楔のような形を思い出した。
カミーユたちはそのまま歩き、扉の前にたどり着いた。
「千人戦士カミーユをお連れいたしました」
衛兵が扉を開け、カミーユを中に導いた。
カミーユの眼前に机が見えた。それは大きく、カミーユの目には、机の天板の端までしか見通すことができなかった。
「騎士カミーユ。ただいま参上いたしました」
カミーユは立礼し、机の向こうにいると思われる、父王陛下に向かって声を発した。
「よく来た。千人戦士カミーユ。余はそなたの武芸、嬉しく思うぞ」
父王は立ち上がり、その姿を見せた。ゆっくりと机の横へ周り、そこにある椅子に腰掛けた。
カミーユと父王の距離は近い。自然と父王の魔力がカミーユに感じられた。
それはどこか遠くに、老いを感じさせるものであった。
カミーユは片膝を付いて頭を垂れた。
「父王陛下の御心に応えられたこと。光栄に思います」
カミーユは答え、父王の言葉を待った。
「千人戦士カミーユ。そなたに余の願いを伝える。これを叶えたならば、此度の姫の件、水に流そう」
カミーユは深く頭を垂れる。
「黒鉄の飛竜。と言う竜がいる。その名の通り、そのは鱗は鋼のように固く、空を飛び、その尾の先には猛毒の針を隠し持っている」
父王は一旦言葉を区切る。
「その飛竜の毒針を取ってくる。そして余に手渡す。それが余の願いだ」
普段のカミーユならば、王が椅子から立ち上がり去る。
それを待っただろう。
しかし、ここはベラルーン王国ではなく巨人の国である。
王国の代表として、それが正義の行いであるか、見定める必要があった。
カミーユは頭を下げ、言葉を発する。
「父王陛下。言葉を挟む無礼をお許しください。何故、その針が必要なのでしょうか。お下知に精励するためにも、お教えいただきたく存じます」
父王はしばし口をつぐんだ。そして言葉を発した。
「余の父祖らは、安住の大樹を得るまで、獣や飛竜の脅威にさらされていた。その時、飛竜の群れの長を倒し、皆を守ったものがいた。それが始まりの父王となった」
父王は言葉を続ける。
「以来、父王を継ぐものは、飛竜の長、黒鉄の飛竜の毒針を持ち帰る。それが習わしとなった。しかし、今ではそれは儀礼的なものとなり、戴冠の際に新たな毒針を身につける。そういった物となった」
父王は目を伏せる。しばしあり、言葉を続けた。
「余は長子カミンを、次の父王と考えておる。しかし、余の弟アルゴは、その子ドブルを次の父王にせんと企てておるのだ。それに、王弟アルゴは、ベラルーン王国との同盟を破棄しようと考えておる気配がある」
カミーユは王の言葉を待つ。
「千人戦士カミーユよ。余は老い、いつ倒れるやもしれぬ。その前に、わが幼き長子カミンに、あとを継がせたいと思うのだ。これが余の願いだ」
頭を垂れてカミーユは言葉を発した。
「御心をお示しくださり、ありがとうございました。このカミーユ、巨人と我がベラルーン王国の同盟を永くするためにも、必ずや黒鉄の飛竜の毒針を手に入れ、御前に戻ります」
父王ゾンネはその言葉を聞き、安心して頷いた。
「千人戦士カミーユよ。そなたならば必ずや黒鉄の飛竜の毒針を持ち帰るだろう。余はそれを待っておるぞ」
こうして、騎士カミーユは、父王ゾンネの頼みを引き受けた。
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