伊澄と聖華(死にわか番外編)

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腐れ縁

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 12歳のあの夜、長崎は大雨だった。おっかぁが日も落ち切った頃に熱を出して、不本意ではあったがアイツの家に助けを求めて飛び出した。

 全力で走っていたら物陰から足を引っ掛けられて、知らない男から暗がりに連れ込まれた。
 抵抗も虚しく、無理やり尻に男根をねじ込まれ、痛くて怖くて叫んでいたら、髪を隠すために被っていた手拭いを口に噛まされた。

「あ!? お前……まさか!」
 相手の男が俺の髪色を視認した時アイツがきた、大きな石で何度も何度も背後から殴り付けて、その男を殺してしまった。

 アイツは大店の長子だったのに、手を汚させてしまった……絶対に隠さなくちゃいけなかった。
 死体は二人で川に沈めた……運良く俺たちがやったとはバレなかった。

 俺が客に殺されたあの日も雨だった。報いを受けたのだと思った、良い行いなんて微塵もしてこなかったから。
 身体を売って、心を売って、傷ついて、傷つけて、なのにおっかぁは死んでしまったし……もうすぐ年季も明けるのに、行くところなんてどこにもなかった。もう、どうでも良かったんだ。

 増水した川へ落ちる最中、橋の上に居たアイツが見えた。

 今は雨が降らない、時々降ることもあるが滅多にない……そういう世界にいる、ここは死んだ後の世界。
 アイツはあの日も俺と一緒に川に飛び込んだらしく、死んだ後の魂まで……俺を掴んで離さなかったと聞いている。

 祝言をあげたばかりだと風の噂で聞いていた。お前にはお前の幸せがあったはずなのに……俺と一緒に居たら、アイツは不幸になるばかりだ。

 あれから200年、俺たちはまだ平行線のままだ。


伊澄いずみ聖華せいか

「お前、また他の男のところに行くのか?」
「アンタに関係ないでしょ?」

 長いブロンズ色の髪を器用に簪で巻き上げて、緑がかった薄い綺麗な瞳は西洋の人形のようだ。そんな首から上の派手さに似合わず、装いはオレンジと黄色の派手な男物の着物に、可愛らしくアレンジがされている。花のコサージュなんかを付け足して、一見男なんだか女なんだか分からないのが聖華だ。
 今日の年齢設定は16歳、聖華は自由に見た目の年齢を操れる。

 その聖華に詰め寄っているのは伊澄、後ろを刈り上げた天パでくるくるの短い短髪に、真っ黒の瞳、耳は悪魔耳で少し尖っているにも関わらず福耳だ。服装も聖華とは逆の色味で、紫紺や鈍い薄紫といった地味な男物の着物を着ている。

 職場からいの一番に退勤しようとした聖華に、伊澄が声を掛けて呼び出した。昼に引っ掛けた男のところへ行くのを邪魔されて、聖華は少々不機嫌になった。

 理由は明白だ、最近魔力の回復が悪い……少しでも長く、一人でダメなら二人、三人と渡り歩かなければ、到底一日のノルマが達成できない。達成できなければどうなるか……それは聖華の悪魔としての生命線である、見た目の年齢操作が出来なくなるのだ。
 正直周りの人間は聖華の見た目の年齢など全く気にしていないのだが、本人が気にしている死活問題なのだから仕方がない。

「アンタのせいでこっちは困ってんのよ! 早く退いて」
「なんで俺のせいなんだ?」
 その場から立ち去ろうとした聖華の腕を、伊澄は躊躇なく掴んで引き留めた。
 いつも鈍すぎるくらい鈍いくせに、なんでこういう時だけ……そう思って伊澄を睨み付けると、本気で分からないといった様子の顔をしていた、やっぱり伊澄は鈍かった。

 ユキにフラれたあの日、伊澄と勢いで激しめのキスを交わしたせいで、聖華は他の男との行為では魔力が回復しにくくなっていた。あの高揚感を一度知ってしまったら、他の男で満足できるはずもなかったのだ。

 それなのに何も知らない顔をして自分を引き止める伊澄に、期待2割の怒り8割といったところだった。正直責任を取ってもらいたい、さっさと自分に好きだと告白して掻き抱いて欲しい……そんな事を思っているのだが、自分からそれを言うのは絶対に嫌だった。二百年、保ち続けた意地である。

「俺じゃ駄目なのか?」
「……えっ、は!? えっ!? ななななななな何言ってんの!?」
「いや、だってお前ほら……この間は満足したって言ってただろ?」
「はぁ!? はぁぁあ!? 言ってない! 言ってないし!」

 いや、言った。
 本人も覚えているし、分かっている。

「俺とその……口吸いしたら満足するなら、俺がしてやっても」
「なんで上から目線なのよ何様!? あんなので満足するわけないでしょ! 二百年早いのよっ!」
 聖華は男の力よろしく、思いっきり伊澄を蹴っ飛ばしてその場から逃げ去った。

(なんで好きだって言わないんだ馬鹿、あんなんで満足するはずないだろ! アタシを誰だと思ってんの! 魔界の二大淫魔とまで言わしめた聖華よ!?)

 その日聖華は他の男のところに行ったものの、全く乗り気にならず……結局家に帰ってきて非常食(飴)で魔力を回復させた。

「絶対好きだって言わせてやる!」

 妄想をふんだんに行いながら自慰に使う予定だったその官能的な飴を、聖華は何も考えずにボリボリと噛み砕いてしまった。

 これは伊澄と聖華の、意地の張り合いのお話である。

-----
時系列
※本編 魔界編:第2章 繋がる 「焦燥感」の裏のお話

このカップルは……
※告白しないままの肉体関係
※受けは淫乱ビッチ(他の人に好きとか言うし、全然素直じゃない)
※アブノーマルなエッチ展開
※ひたすらR-18の予感しかしない

以上、注意事項です。
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