4 / 191
真里編:第1章 出会い
契約の対価
しおりを挟む
ヤバイヤバイ! 全部当たってる! これ100点取れちゃうんじゃないの!? って言っても所詮は小テストだけど……。
僕は今、悪魔の能力を信じはじめている。
事は昨晩、僕が悪魔を召喚したあの時に遡る。
ーーーーー
「で、真里 お前の殺したい相手は誰なんだ?」
さすが悪魔、直球だ。元人間って言ってたけど。
思わずあのページのまま召喚してしまったけど、人の命を左右するような事を、即決できるわけがない。口に出して言ってしまうと、後には引けない気がして口を噤んだ。
「まぁ、言わなくても大方予想はついてるけどな」
なんだろう、悪魔ってのは読心術でも使えるのか? それならわざわざ聞かないでほしい、少しムッとした。
「"願いが叶う"って書いてあったけど、悪魔に願いを叶えてもらうなら、対価が必要なんじゃないの……命とか?」
「ご明察、叶えてほしい願いによって対価が必要だ、言っておくが、悪魔は人間を幸せにするために、願いを叶えるわけじゃない。」
悪魔"ユキ"の説明はこうだ。
"幸せになりたい"などのアバウトな願いは叶えられない。
"大金持ちになりたい"みたいなのも、強盗が現金を自宅に突っ込んで逃げる。みたいな事が発生するから、オススメできない。
"好きな女と両想いになりたい"とかだと、元々交際していた男からの逆恨みなどは回避できない。それを回避するには、更に対価を支払う必要がある。しかし悪魔はその可能性を示唆しない。
最後に
"命に関わる対価"は命だけである。
これはかなり鋭い目つきで言われた、つまり自分が死んでまで、相手を殺したいかどうかって事だ、どう考えてもハイリスクだ。
「それ教えたら、人殺しなんて誰も頼まないんじゃない?」
「そうだな、でも俺はお前を"スカウト"に来たから、後から文句言われたり、面倒臭いのは嫌なんだよな」
「そういえば、さっきもスカウトがどうとか言ってたよね」
スカウトと言えば有名なのは芸能事務所だ、さっきも"見初めた"とか言ってたし、悪魔がスカウトするものって言えば……。
「真里 お前を悪魔にしたい! 死んで悪魔にならないか!」
僕は思わず、露骨に嫌そうな顔をしてしまった。
そしてそんな顔を見るや否や、"ユキ"はまた嬉しそうに笑った。
「本当に可愛いな! 悪魔の才能もあるし、俺のものにならないか?」
肩を抱き寄せられて、頬を指でツンツンされる……今のはスカウトに聞こえないんだけど。
「僕、男なんですけど?」
「奇遇だな、俺も男だ」
悪魔に性別という概念はないのか? いやだって元人間でしょ!? もしかして元からそっちの人なの?
"ユキ"が回して来た腕を払いのけて、少し距離をとった。
「とりあえず、本当に願いを叶えてもらえるのか知りたい……それに、叶える願いによってどれほど対価が変わるのか気になる、命を懸けるかどうかの話なら当然だろ」
「つまり、軽い願いで様子を見るという事か……真里が処女を差し出せば割となんでも叶えてやれるけどな」
しょっ……っ!?
キラキラの笑顔でなんてこと言いやがるこの悪魔! 耳まで熱く感じたところでマズイと思った、ほら! ニヤニヤしてる!
「悪魔は処女が大好きだろ?」
「ぼっ僕は男なんだから! そんなの無理だろ!」
「大丈夫 はじめてでも、ちゃんと気持ちよくさせてやるよ?」
顎を掴まれて強制的に目線を合わされた、今はじめてしっかり顔を見たけど、髪サラサラだし、まつ毛長いし、すっごい美人……いやいやいや、僕には10年以上片想いしてる人が……!
ん? 夢の中の人って好きな人って言えるのかな?
そんなことより、この状況への打開策だ!
「あっ、明日の小テスト! テストの内容を教えてほしい!」
我ながらとっさに思いついた割に、なかなかの案だと思った。これで少なくとも、明日学校でテストがあるまでは、色んなことを先延ばしできる。"ユキ"は僕の顎にかけていた手を、そのまま自分の顎へ持っていき、思案しだした。
「テスト……わかったぞ! 学生が最も恐れているというアレだな!」
「うーん、間違ってはない気がするけど、今回は小テストだからそんなに怖くはないよ。」
「ならば大した願いではないな……真里からのほっぺにチューで手を打とう」
正直拍子抜けした、もっとハードなの言われるかと思って身構えていた……もちろん期待してたわけではない! もっと凄いこと言われたら、それを理由に追い返そうと思ってただけだ!
「じゃあ……届かないからしゃがんでくれる?」
ユキの袖を軽く下に引っ張った、恥ずかしくて顔が見れないので、俯いてたら視界に入ったのが袖だった。
はい、って声がしたかと思ったら、眼前にユキの顔が近づいていた、うぅ、近い……! 緊張する! 肌真っ白……凄く綺麗。見てたらいつまでも決心がつきそうにないので、思いっきり目を瞑ってユキの頬にキスをした。
「こ……これでいいだろ!」
思わず押しのけて距離を取った、だって人にキスしたのははじめてだし! ほっぺだけど。
「俺からもしていい?」
「え! いや、だめ! だめ!」
断ってるのに、顔を横に向けられた! 晒された頬に冷たい感触が……うぅっ柔らかい!
ギュッと閉じていた目を恐る恐る開くと、まだ至近距離にあったユキの顔が視界に入る。なんなんだよその緩みきった笑顔は!! 悪魔のくせにそんな幸せそうな顔するんじゃない!
ユキはその緩んだ顔を少し引き締めて、軽く唇をペロッとすると、"確かに受領した"と言って何やら瞑想に入った。
「俺はテストとやらはよく分からないから、映像イメージとして伝えよう」
そう言って僕の頭に手を当てたところ、テストの問題用紙のイメージが頭に流れ込んできた。間違いなく、今日言われてたテスト範囲だ。
この時点で僕は9割、この願いは叶えられたと分かっていたけれど……。
「結果は明日学校に行かないと分からないね」
「そうか、ではまた明日願いを聞きに来る」
そういってユキは何のためらいもなく、さらっと目の前から消えて、その夜は一度も現れなかった。
ーーーーー
今思えば僕もどうかしていた、きっと悪魔に魅了されていたに違いない。実際にそんな能力を備えているのか知らないけど、そうとしか考えられない!
気を抜いていたら絆されて魂を抜かれそうだ、帰ったらまた絶対現れるだろうから、気を引き締めて相手しないと!
テスト内容を事前に把握していたお陰で、僕は余りまくった時間を悪魔対策への思考に費やした。
僕は今、悪魔の能力を信じはじめている。
事は昨晩、僕が悪魔を召喚したあの時に遡る。
ーーーーー
「で、真里 お前の殺したい相手は誰なんだ?」
さすが悪魔、直球だ。元人間って言ってたけど。
思わずあのページのまま召喚してしまったけど、人の命を左右するような事を、即決できるわけがない。口に出して言ってしまうと、後には引けない気がして口を噤んだ。
「まぁ、言わなくても大方予想はついてるけどな」
なんだろう、悪魔ってのは読心術でも使えるのか? それならわざわざ聞かないでほしい、少しムッとした。
「"願いが叶う"って書いてあったけど、悪魔に願いを叶えてもらうなら、対価が必要なんじゃないの……命とか?」
「ご明察、叶えてほしい願いによって対価が必要だ、言っておくが、悪魔は人間を幸せにするために、願いを叶えるわけじゃない。」
悪魔"ユキ"の説明はこうだ。
"幸せになりたい"などのアバウトな願いは叶えられない。
"大金持ちになりたい"みたいなのも、強盗が現金を自宅に突っ込んで逃げる。みたいな事が発生するから、オススメできない。
"好きな女と両想いになりたい"とかだと、元々交際していた男からの逆恨みなどは回避できない。それを回避するには、更に対価を支払う必要がある。しかし悪魔はその可能性を示唆しない。
最後に
"命に関わる対価"は命だけである。
これはかなり鋭い目つきで言われた、つまり自分が死んでまで、相手を殺したいかどうかって事だ、どう考えてもハイリスクだ。
「それ教えたら、人殺しなんて誰も頼まないんじゃない?」
「そうだな、でも俺はお前を"スカウト"に来たから、後から文句言われたり、面倒臭いのは嫌なんだよな」
「そういえば、さっきもスカウトがどうとか言ってたよね」
スカウトと言えば有名なのは芸能事務所だ、さっきも"見初めた"とか言ってたし、悪魔がスカウトするものって言えば……。
「真里 お前を悪魔にしたい! 死んで悪魔にならないか!」
僕は思わず、露骨に嫌そうな顔をしてしまった。
そしてそんな顔を見るや否や、"ユキ"はまた嬉しそうに笑った。
「本当に可愛いな! 悪魔の才能もあるし、俺のものにならないか?」
肩を抱き寄せられて、頬を指でツンツンされる……今のはスカウトに聞こえないんだけど。
「僕、男なんですけど?」
「奇遇だな、俺も男だ」
悪魔に性別という概念はないのか? いやだって元人間でしょ!? もしかして元からそっちの人なの?
"ユキ"が回して来た腕を払いのけて、少し距離をとった。
「とりあえず、本当に願いを叶えてもらえるのか知りたい……それに、叶える願いによってどれほど対価が変わるのか気になる、命を懸けるかどうかの話なら当然だろ」
「つまり、軽い願いで様子を見るという事か……真里が処女を差し出せば割となんでも叶えてやれるけどな」
しょっ……っ!?
キラキラの笑顔でなんてこと言いやがるこの悪魔! 耳まで熱く感じたところでマズイと思った、ほら! ニヤニヤしてる!
「悪魔は処女が大好きだろ?」
「ぼっ僕は男なんだから! そんなの無理だろ!」
「大丈夫 はじめてでも、ちゃんと気持ちよくさせてやるよ?」
顎を掴まれて強制的に目線を合わされた、今はじめてしっかり顔を見たけど、髪サラサラだし、まつ毛長いし、すっごい美人……いやいやいや、僕には10年以上片想いしてる人が……!
ん? 夢の中の人って好きな人って言えるのかな?
そんなことより、この状況への打開策だ!
「あっ、明日の小テスト! テストの内容を教えてほしい!」
我ながらとっさに思いついた割に、なかなかの案だと思った。これで少なくとも、明日学校でテストがあるまでは、色んなことを先延ばしできる。"ユキ"は僕の顎にかけていた手を、そのまま自分の顎へ持っていき、思案しだした。
「テスト……わかったぞ! 学生が最も恐れているというアレだな!」
「うーん、間違ってはない気がするけど、今回は小テストだからそんなに怖くはないよ。」
「ならば大した願いではないな……真里からのほっぺにチューで手を打とう」
正直拍子抜けした、もっとハードなの言われるかと思って身構えていた……もちろん期待してたわけではない! もっと凄いこと言われたら、それを理由に追い返そうと思ってただけだ!
「じゃあ……届かないからしゃがんでくれる?」
ユキの袖を軽く下に引っ張った、恥ずかしくて顔が見れないので、俯いてたら視界に入ったのが袖だった。
はい、って声がしたかと思ったら、眼前にユキの顔が近づいていた、うぅ、近い……! 緊張する! 肌真っ白……凄く綺麗。見てたらいつまでも決心がつきそうにないので、思いっきり目を瞑ってユキの頬にキスをした。
「こ……これでいいだろ!」
思わず押しのけて距離を取った、だって人にキスしたのははじめてだし! ほっぺだけど。
「俺からもしていい?」
「え! いや、だめ! だめ!」
断ってるのに、顔を横に向けられた! 晒された頬に冷たい感触が……うぅっ柔らかい!
ギュッと閉じていた目を恐る恐る開くと、まだ至近距離にあったユキの顔が視界に入る。なんなんだよその緩みきった笑顔は!! 悪魔のくせにそんな幸せそうな顔するんじゃない!
ユキはその緩んだ顔を少し引き締めて、軽く唇をペロッとすると、"確かに受領した"と言って何やら瞑想に入った。
「俺はテストとやらはよく分からないから、映像イメージとして伝えよう」
そう言って僕の頭に手を当てたところ、テストの問題用紙のイメージが頭に流れ込んできた。間違いなく、今日言われてたテスト範囲だ。
この時点で僕は9割、この願いは叶えられたと分かっていたけれど……。
「結果は明日学校に行かないと分からないね」
「そうか、ではまた明日願いを聞きに来る」
そういってユキは何のためらいもなく、さらっと目の前から消えて、その夜は一度も現れなかった。
ーーーーー
今思えば僕もどうかしていた、きっと悪魔に魅了されていたに違いない。実際にそんな能力を備えているのか知らないけど、そうとしか考えられない!
気を抜いていたら絆されて魂を抜かれそうだ、帰ったらまた絶対現れるだろうから、気を引き締めて相手しないと!
テスト内容を事前に把握していたお陰で、僕は余りまくった時間を悪魔対策への思考に費やした。
0
あなたにおすすめの小説
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる