46 / 191
魔界編:第1章 薬
守るべきもの
しおりを挟む
魔界に来てから1週間、ここでの生活も少し慣れてきた。
僕は管理課に、ユキは維持部隊に、それぞれの事務所に向かって、仕事を終えて家に帰る……少し前までバイトもした事がない高校生だったのに、突然社会人になった様な気分だ。
ただこの世界は本当にとても緩くて、出勤時間が無いから遅刻はないし、退勤時間もないからみんな割と自由に好き勝手している節がある。
まぁ大体今日はこれくらいでいいかって雰囲気になると、僕の居る管理課なんかはみんな適当に帰りはじめる。
その点ユキの維持部隊についてはシフト制で夜勤もあるらしい、今のところユキは毎日帰宅して、大概先に帰っている僕にしなだれかかってくる。
ソファーだったり、ベッドだったり……離したくないって感じで、どこかしらお互い触れている様に過ごしている。我ながらのぼせ上がっているなと、自覚はしているけども、幸せだなぁとも感じているので、当分僕から止める気はない。
この1週間でぐちゃくちゃだった管理課は、聖華が協力的になってくれたお陰で書類の山は無くなって、やっと普通の業務が出来るまでに整った。
暫く管理課にかかりきりだったので、誘われていた維持部隊の事務所にもなかなか顔を出せずにいた僕は、久々にユキの居る事務所へと赴いている。
アポ無しで来ちゃったけど大丈夫かな? と心配していると、中から楽しそうな笑い声が聞こえてきたので、まぁ大丈夫か……と事務所の引戸を開いた。
「こんにちはー」
顔を出すとルイさんが立ち上がって、いらっしゃい、おいでおいでと出迎えてくれた。
「なんだ真里、俺に会いに来たのか?」
応接室のソファーまで行くと、ユキがニヤニヤと見上げてきた。
「カズヤさんとの約束を守りにきたんだよ」
ユキとは帰れば毎日会っているし、朝起きればいつも目の前に居るし、夜もその……毎晩エッチな事はされてるわけで……ユキにわざわざ会いにくるほどユキ不足ではない。むしろユキ充だ、毎日お腹いっぱいです。
今日は全員事務所に居たみたいで、広い横長のソファーにカズヤさんとルイさんが、お誕生日席には飛翔さんが座っていた。ちょうどユキの隣が空いていたので、そこに座るよう促される。
「真里は律儀ですね」
「カズヤさんに稽古つけてもらいたかったので!」
へへっと少し照れながらカズヤさんへ返答すると、ユキがムスッとした顔でこっちを見た。
「強くなりたいなら俺に教わればよくない?」
「ユキだと絶対違う方向に逸れるから」
現に家ではイチャイチャしてばかりで、力の使い方を教えてくれた事なんてないじゃないか!
「エロい特訓になるから?」
「そこまで言ってない」
濁して言ってるんだから、わざわざ直球に言い直さないで欲しい、ねちっこく腰に回してきた手を振り解いた。
家だったら僕だって触りたいけど、人前で分別なくイチャつくのはダメだと思う。
「あ! じゃあオレとやろーよ! 本気の真里とやりたい!」
勢いよく立ち上がってノリノリになったのはルイさんだ、ハイハイって感じで手を上げて主張している。
「真里への実戦形式の試合は許可しない」
「えー! なんでーケチ!」
「駄目だ、真里の"傷に障る"」
そう聞いたルイさんがストンと座って、それじゃあしょうがないねと納得した。
「……? どういうこと?」
周りは納得したようだったけど、当事者の僕はサッパリだ。確かにいきなり試合しろなんて言われても、無理ではあるんだけど。
「真里の弱点や過去の話になる……話してもいいか?」
ユキが僕の左手をギュッと握った、そうか"傷に障る"ってそういう事か……多分表してるのはこの傷跡じゃなくて、心の傷。ここの人達に話すのは全く嫌では無い、ユキがそうした方がいいと判断したんだろう。
僕は静かに頷いて同意した。
「真里は幼少期に虐待を受けていた、その時ついた傷が左手の甲に残っている……ここに物を貫通させるのは避けてくれ」
僕の中でこの傷は、確かにあの時の記憶を呼び起こすものだ、悪魔になる直前のあの事件で、まざまざと思い知らされた。
それでも……僕はそんな事に気を使われるのは嫌だ、まるで僕があの女に負けたみたいじゃないか、庇われるだけ惨めになる気がする。
「それと、痛みや恐怖も与えないで欲しい……」
「腫れ物に触るように扱われるのは嫌だ」
少し下唇を突き出して不服を表した、そんな僕の顔を見て、ユキが少し困ったように眉を下げながらフッと笑った。
「わかった、じゃあ様子を見ながらな」
「意外だな! ユキが簡単に引き下がるなんて」
飛翔さんが感心するように、少し楽しそうにしながら僕の方を見て言った。確かにユキの僕への過保護っぷりから、もっとダメダメ言われるかと思ってたけど……。
「真里は見た目と違って中身はすこぶる頑固だ、言い出したら聞かない……俺が折れるしかない」
「ユキの弱点は真里だねー!」
今度は楽しそうにルイさんがケラケラ笑っている。頑固って……何か前にも似たような事を言われたような気がする。
既視感を覚えて首を傾げていると、ルイさんの横でカズヤさんが袖で顔を隠しながら、小さく震えているのに気付いた。
「カズヤさん、どうしたんですか!?」
「真里が、不憫で……」
スンッと鼻を鳴らす音が聞こえた、な、泣いてる!? 今の流れで!?
「カズヤは子供が痛いのがダメなんだー……カズヤの弱点って感じかな? だから真里もカズヤの前ではあまり大怪我しないでね」
ハンカチをカズヤさんへ差し出しながら苦笑するルイさんは、見た目の年齢が14歳で止まっていても、僕から見ればしっかり年上の人に見えた。
それでもその見た目は僕より幼くて……カズヤさんがルイさんを過保護にしてしまう理由は、やはりその弱点に起因したものなんだろう。
「なんだかみんなで弱みの晒し合いになってんねー! オレのも教えよーか!」
そう気持ちを切り替えるように明るくニカッと笑ったルイさんが、スカジャンの下に着た赤いTシャツをめくり上げた。
「オレの傷はここだよー! オレも刺し傷に弱いからあんまり狙わないでね!」
おヘソの右横辺りの肌が盛り上がって、周りの皮膚が引きつれているような傷跡があった。
前にユキから聞いてはいた、死んだ時の傷が弱点になりやすいって……だからルイさんがその若さで死んでしまった理由は、その刺し傷が原因なんだろう。
至極明るく見せてくれたのは、きっとカズヤさんを気遣っての事だ……。
「お互いの弱みが分かってたら庇いあえるからねー……だから真里が教えてくれて、オレ嬉しかったよ」
パッと服を下ろしたルイさんが、いつもの作り笑顔じゃない顔で……目を細めながらそう言ってくれて、心が暖かくなるような気がした。
庇われる事を惨めだとは思わなくていいのかも、庇いあえる事を嬉しいと思うルイさんの気持ちに、そういう考え方もあるのかと驚いた。
そして意固地になってる僕の感情を理解した上で、ユキはみんなに僕の弱点を教えたんだろう……負けたくないなんて思った自分の考えが、子どもっぽいもののように感じて、少し恥ずかしくなった。
「じゃあ俺も言わないとだよな……目の前でバラバラになっても引かないでくれな」
飛翔さんが両頬に手を当てながら……いつもの人好きのする笑顔は消え去り、顔面蒼白だ。
「何がバラバラになるんですか?」
「俺の、胴体が……」
……え、胴体?
飛翔さんと僕以外の三人が、固唾を呑むように少し前のめりになる。飛翔さんが口を開こうとして、閉じて、顔を歪めながらお腹を押さえた。何もしていないのに、両腕に巻かれていた包帯にジワっと血が滲み始める。
ちょっと待って! バラバラってまさか!
僕は管理課に、ユキは維持部隊に、それぞれの事務所に向かって、仕事を終えて家に帰る……少し前までバイトもした事がない高校生だったのに、突然社会人になった様な気分だ。
ただこの世界は本当にとても緩くて、出勤時間が無いから遅刻はないし、退勤時間もないからみんな割と自由に好き勝手している節がある。
まぁ大体今日はこれくらいでいいかって雰囲気になると、僕の居る管理課なんかはみんな適当に帰りはじめる。
その点ユキの維持部隊についてはシフト制で夜勤もあるらしい、今のところユキは毎日帰宅して、大概先に帰っている僕にしなだれかかってくる。
ソファーだったり、ベッドだったり……離したくないって感じで、どこかしらお互い触れている様に過ごしている。我ながらのぼせ上がっているなと、自覚はしているけども、幸せだなぁとも感じているので、当分僕から止める気はない。
この1週間でぐちゃくちゃだった管理課は、聖華が協力的になってくれたお陰で書類の山は無くなって、やっと普通の業務が出来るまでに整った。
暫く管理課にかかりきりだったので、誘われていた維持部隊の事務所にもなかなか顔を出せずにいた僕は、久々にユキの居る事務所へと赴いている。
アポ無しで来ちゃったけど大丈夫かな? と心配していると、中から楽しそうな笑い声が聞こえてきたので、まぁ大丈夫か……と事務所の引戸を開いた。
「こんにちはー」
顔を出すとルイさんが立ち上がって、いらっしゃい、おいでおいでと出迎えてくれた。
「なんだ真里、俺に会いに来たのか?」
応接室のソファーまで行くと、ユキがニヤニヤと見上げてきた。
「カズヤさんとの約束を守りにきたんだよ」
ユキとは帰れば毎日会っているし、朝起きればいつも目の前に居るし、夜もその……毎晩エッチな事はされてるわけで……ユキにわざわざ会いにくるほどユキ不足ではない。むしろユキ充だ、毎日お腹いっぱいです。
今日は全員事務所に居たみたいで、広い横長のソファーにカズヤさんとルイさんが、お誕生日席には飛翔さんが座っていた。ちょうどユキの隣が空いていたので、そこに座るよう促される。
「真里は律儀ですね」
「カズヤさんに稽古つけてもらいたかったので!」
へへっと少し照れながらカズヤさんへ返答すると、ユキがムスッとした顔でこっちを見た。
「強くなりたいなら俺に教わればよくない?」
「ユキだと絶対違う方向に逸れるから」
現に家ではイチャイチャしてばかりで、力の使い方を教えてくれた事なんてないじゃないか!
「エロい特訓になるから?」
「そこまで言ってない」
濁して言ってるんだから、わざわざ直球に言い直さないで欲しい、ねちっこく腰に回してきた手を振り解いた。
家だったら僕だって触りたいけど、人前で分別なくイチャつくのはダメだと思う。
「あ! じゃあオレとやろーよ! 本気の真里とやりたい!」
勢いよく立ち上がってノリノリになったのはルイさんだ、ハイハイって感じで手を上げて主張している。
「真里への実戦形式の試合は許可しない」
「えー! なんでーケチ!」
「駄目だ、真里の"傷に障る"」
そう聞いたルイさんがストンと座って、それじゃあしょうがないねと納得した。
「……? どういうこと?」
周りは納得したようだったけど、当事者の僕はサッパリだ。確かにいきなり試合しろなんて言われても、無理ではあるんだけど。
「真里の弱点や過去の話になる……話してもいいか?」
ユキが僕の左手をギュッと握った、そうか"傷に障る"ってそういう事か……多分表してるのはこの傷跡じゃなくて、心の傷。ここの人達に話すのは全く嫌では無い、ユキがそうした方がいいと判断したんだろう。
僕は静かに頷いて同意した。
「真里は幼少期に虐待を受けていた、その時ついた傷が左手の甲に残っている……ここに物を貫通させるのは避けてくれ」
僕の中でこの傷は、確かにあの時の記憶を呼び起こすものだ、悪魔になる直前のあの事件で、まざまざと思い知らされた。
それでも……僕はそんな事に気を使われるのは嫌だ、まるで僕があの女に負けたみたいじゃないか、庇われるだけ惨めになる気がする。
「それと、痛みや恐怖も与えないで欲しい……」
「腫れ物に触るように扱われるのは嫌だ」
少し下唇を突き出して不服を表した、そんな僕の顔を見て、ユキが少し困ったように眉を下げながらフッと笑った。
「わかった、じゃあ様子を見ながらな」
「意外だな! ユキが簡単に引き下がるなんて」
飛翔さんが感心するように、少し楽しそうにしながら僕の方を見て言った。確かにユキの僕への過保護っぷりから、もっとダメダメ言われるかと思ってたけど……。
「真里は見た目と違って中身はすこぶる頑固だ、言い出したら聞かない……俺が折れるしかない」
「ユキの弱点は真里だねー!」
今度は楽しそうにルイさんがケラケラ笑っている。頑固って……何か前にも似たような事を言われたような気がする。
既視感を覚えて首を傾げていると、ルイさんの横でカズヤさんが袖で顔を隠しながら、小さく震えているのに気付いた。
「カズヤさん、どうしたんですか!?」
「真里が、不憫で……」
スンッと鼻を鳴らす音が聞こえた、な、泣いてる!? 今の流れで!?
「カズヤは子供が痛いのがダメなんだー……カズヤの弱点って感じかな? だから真里もカズヤの前ではあまり大怪我しないでね」
ハンカチをカズヤさんへ差し出しながら苦笑するルイさんは、見た目の年齢が14歳で止まっていても、僕から見ればしっかり年上の人に見えた。
それでもその見た目は僕より幼くて……カズヤさんがルイさんを過保護にしてしまう理由は、やはりその弱点に起因したものなんだろう。
「なんだかみんなで弱みの晒し合いになってんねー! オレのも教えよーか!」
そう気持ちを切り替えるように明るくニカッと笑ったルイさんが、スカジャンの下に着た赤いTシャツをめくり上げた。
「オレの傷はここだよー! オレも刺し傷に弱いからあんまり狙わないでね!」
おヘソの右横辺りの肌が盛り上がって、周りの皮膚が引きつれているような傷跡があった。
前にユキから聞いてはいた、死んだ時の傷が弱点になりやすいって……だからルイさんがその若さで死んでしまった理由は、その刺し傷が原因なんだろう。
至極明るく見せてくれたのは、きっとカズヤさんを気遣っての事だ……。
「お互いの弱みが分かってたら庇いあえるからねー……だから真里が教えてくれて、オレ嬉しかったよ」
パッと服を下ろしたルイさんが、いつもの作り笑顔じゃない顔で……目を細めながらそう言ってくれて、心が暖かくなるような気がした。
庇われる事を惨めだとは思わなくていいのかも、庇いあえる事を嬉しいと思うルイさんの気持ちに、そういう考え方もあるのかと驚いた。
そして意固地になってる僕の感情を理解した上で、ユキはみんなに僕の弱点を教えたんだろう……負けたくないなんて思った自分の考えが、子どもっぽいもののように感じて、少し恥ずかしくなった。
「じゃあ俺も言わないとだよな……目の前でバラバラになっても引かないでくれな」
飛翔さんが両頬に手を当てながら……いつもの人好きのする笑顔は消え去り、顔面蒼白だ。
「何がバラバラになるんですか?」
「俺の、胴体が……」
……え、胴体?
飛翔さんと僕以外の三人が、固唾を呑むように少し前のめりになる。飛翔さんが口を開こうとして、閉じて、顔を歪めながらお腹を押さえた。何もしていないのに、両腕に巻かれていた包帯にジワっと血が滲み始める。
ちょっと待って! バラバラってまさか!
0
あなたにおすすめの小説
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
騎士×妖精
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる