165 / 191
魔界編:第12章
意思の世界
しおりを挟む
目の前の魔王様の恐ろしさに、言いたかったはずの言葉も出て来なくなった。
何を言えば正解なのか、どうすればこの怒りを治めることができるのか、ユキと一緒にいるために僕は何をすれば……そんな事ばかり考えてしまう。
ユキがどんな表情をしているのか確認することもできない。恐ろしくて少し動くだけでも命の危うさを感じる。
「正解を探さなくていい、真里の気持ちを答えればいいんだ」
ユキの緊張した声は少し上ずっていたけど、その言葉に勇気をもらった気がした。
『なぜ菖寿丸を表に出したのか』
その質問の答えを返せばいいだけだ。
ガタガタと震える歯を食いしばって、寒さを感じるほどのプレッシャーの中息を吸った。
「力を借りなければ、ユキを助けられませんでした」
「それは私との約束よりも大事なことか?」
「すみません、大事です……僕は強くないから、でもユキを守りたくて、だからその為なら何にだって頼ります」
あの時は必死で、魔王様との約束を忘れてなかったと言えば嘘になる。ただ無我夢中で、ユキを助ける事だけを考えていたから。
「もちろん、魔王様からの罰があるのなら……受けます、それでもユキと一緒に居させて下さい」
「真里の責任じゃない、菖寿丸を頼ることになったのは俺の責任だ! だから真里は……」
「いいよ」
その短い言葉が聞こえた瞬間、周囲のプレッシャーが嘘みたいに消えてなくなった。
「へ……?」
重くのしかかっていたものが一気に軽くなって、一瞬頭がクラッとし、思わず素っ頓狂な声が出た。
「君たちの想いを尊重しよう」
そう言って魔王様は何事もなかったかのように、いつも通り口元に薄い笑みをたたえていた。
「私は覇戸部の決意を尊重した、それが原因で起こった事を責めるのは、公平じゃないからね」
魔王様が終わりとでも言うように机の上に手を置くと、ユキの手の力が緩んだ。露骨ではないけれど、はぁと少し安心したように息を吐いて、僕の緊張も少し取れた気がした。
乗り切った……って事でいいんだろうか? ただ、僕には覇戸部を尊重したという魔王様に納得がいかない。
「不満そうな顔だ」
クスクスと、また見透かしたように魔王様が笑い、ユキはギョッとした顔で僕を見た。
「私が覇戸部を止めなかった事が不満?」
「……正直、疑問はあります」
知っていたのなら、事が起こる前に止められたはずだ。下手をすれば魔王様の大事な眷属たちが、バラバラになってしまうところだったのに……。
「真里、この世界はね『意志』で出来ているんだ。決死の覚悟というほどの強い想いを、私は軽視しない」
「意志……」
「だから、ユキを守りたいという真里の決意を尊重する」
魔王様の目は相変わらず笑っておらず、深い闇が怖いほどに暗い。けれどもその言葉の端々には、あくまで平等なのだと言われている気がした。
「ただ覚えておいて欲しい、私は本当に、君のその魂が嫌いなんだ」
許されたと思って気を抜いているところに、再び冷える空気と重いプレッシャー。
普段表情をほとんど表に出さない魔王様が、睨むような表情を見せる時は恐怖でしかない。
しかし、魔王様がそんな脅しをかけたのはほんの一瞬の出来事で、この場はすぐに元の空気に戻った。
ただ、僕とユキの顔は青ざめたまま、何も言えなくなってしまった。
「だから、できれば約束は守ってほしい。ユキと一緒に居たいのなら、アレの好きにさせるな」
「ッ……はい」
そう返事するしかなかった。
「急いでいるところ、引き止めてしまったね」
行っていいよと、勝手に開いた扉からユキと二人で退室した。
ギィと勝手に扉が閉まったところで、二人してはぁぁ~と長めのため息を思わず吐いた。
怖かった、緊張した、殺されるかと思った!
もう、ユキと一緒に居られないんじゃないかって……それが一番怖かった。
震えるユキの手が僕の手を握ってきて、ユキも同じ気持ちだったのかと顔を見合わせて苦笑してしまった。
「すまない、また怖い思いをさせたな」
「ううん、僕が軽率だったんだ……でも後悔なんてしてないよ、ユキを助けられたんだから」
もしあのまま体が動かなくなっていたら、間違いなくユキは傷つけられていた。
魔王様には申し訳ないけれど、僕は菖寿丸に感謝している。
だけど、『好きにさせるな』って魔王様の言い回しは、菖寿丸を信じてはいけないと言っているようだった。
それが魔王様なりの忠告なのであれば、僕は菖寿丸を信用してはいけない。
でも僕にはどうしても、あの人が悪い人だとは思えないんだ……。
「今度こそ向かうが、いいか?」
ユキにそう声をかけられて、一瞬どこに? と頭に疑問符が浮かんだが、すぐに思い出した。
そうだ、僕たちは事件のあった現場に、例の仕掛けの確認に行くところだったんだ!
ユキの手を握り返して頷くと、ユキからも軽く頷くような仕草があって辺りは白い光に包まれた。
目を空ければ、先ほどいた直轄領よりも暗い倉庫内、真っ暗闇に感じる。
目が慣れる前にユキはスタスタと歩きだして、例の怪しい仕掛けがある場所を探っていた。
自分が被害に遭った場所なのに、ユキは気にも留めていないような素振りだ。
急いでユキの後を追うようについていくと、棚を調べているユキの舌打ちが聞こえた。
「やられた……無くなってる」
「えっ!」
ユキが指し示す棚を確認すると、そこには明らかに何か隠してあったかのような空洞があった。
ただ不自然なくらい、そこには何の魔力の痕跡も残っていなかった。
もっと言うなら、この建物全体に付着していた筈の、僕やユキ、覇戸部の魔力さえきれいサッパリ消えてしまっていたのだ。
-----
覇戸部とハルキ
「なにやってるんですか本当、今まで築いたもの台無しにしちゃって、そんな事したかったんですか?」
ハルキの問いに覇戸部は何も答えなかった、意識が朦朧としているのか、それとも答えたくないのか……。
「ユキ様に憧れてる人間なんていっぱいいますよ、私だってその一人でした」
汗だくになった覇戸部の額を、その場で作り出したタオルで拭いながら、ハルキは独り言のように話しかけていた。
「ユキ様は誰にだって分け隔てなく接してくれますし、欲しい言葉をくれます……自分を分かってくれている人だと感じれば、みんなどうしたって魅かれてしまうんです」
ハルキは付けていた上半分の狐面を外して、左側についた飾り紐を懐かしく眺めた。
ハルキの死因は自殺だった。
頭部左側の損傷で、そこに大きな傷跡をつけたままこの世界の住人となった。
あまりにも醜く、人前に出ることも憚れると、この世界に来た当初のハルキは塞ぎ込んでいた。
そんな時に狐面を目の前で作ってみせて、隠れないところには飾り紐を添えてくれた。
『隠さなくても俺はいいと思うけどな』
なんて言葉をかけられて、優しくされて、誑かされていた。
自分はこの人の特別なんじゃないかと思い始めたころに、皆にそうなのだと気付くのだ。
けれど、一人だけそうじゃない男がいた。
五百年も想われ続けているのに、ユキが上っ面の優しさを見せない相手が。
ハルキにはそれが特別な事のように見えていた。
真里が来て、ユキの本当の特別を全員が知ることになった。
それでも諦めない覇戸部に、ハルキは憧れの感情を抱いて、つい肩入れしてしまったのだ。
「あなただけは、そんな凡庸な想いじゃなかったはずなのに」
そんな自分勝手な理想を語るハルキの言葉なんて、覇戸部の耳には入っていなかった。
ただ、自分もユキを好きだった理由が、その凡庸な想いとそう大差ないと思ってしまったのだ。
また静かに瞳に涙を溜めた覇戸部は、ハルキに一言も返事をしなかった。
その涙を動けない覇戸部の代わりに拭って、ハルキはフッと自嘲気味に笑った。
「慰めてあげましょうか?」
「……いらん」
その後覇戸部は動けるようになるまで、一人独房に放置されていたらしい。
何を言えば正解なのか、どうすればこの怒りを治めることができるのか、ユキと一緒にいるために僕は何をすれば……そんな事ばかり考えてしまう。
ユキがどんな表情をしているのか確認することもできない。恐ろしくて少し動くだけでも命の危うさを感じる。
「正解を探さなくていい、真里の気持ちを答えればいいんだ」
ユキの緊張した声は少し上ずっていたけど、その言葉に勇気をもらった気がした。
『なぜ菖寿丸を表に出したのか』
その質問の答えを返せばいいだけだ。
ガタガタと震える歯を食いしばって、寒さを感じるほどのプレッシャーの中息を吸った。
「力を借りなければ、ユキを助けられませんでした」
「それは私との約束よりも大事なことか?」
「すみません、大事です……僕は強くないから、でもユキを守りたくて、だからその為なら何にだって頼ります」
あの時は必死で、魔王様との約束を忘れてなかったと言えば嘘になる。ただ無我夢中で、ユキを助ける事だけを考えていたから。
「もちろん、魔王様からの罰があるのなら……受けます、それでもユキと一緒に居させて下さい」
「真里の責任じゃない、菖寿丸を頼ることになったのは俺の責任だ! だから真里は……」
「いいよ」
その短い言葉が聞こえた瞬間、周囲のプレッシャーが嘘みたいに消えてなくなった。
「へ……?」
重くのしかかっていたものが一気に軽くなって、一瞬頭がクラッとし、思わず素っ頓狂な声が出た。
「君たちの想いを尊重しよう」
そう言って魔王様は何事もなかったかのように、いつも通り口元に薄い笑みをたたえていた。
「私は覇戸部の決意を尊重した、それが原因で起こった事を責めるのは、公平じゃないからね」
魔王様が終わりとでも言うように机の上に手を置くと、ユキの手の力が緩んだ。露骨ではないけれど、はぁと少し安心したように息を吐いて、僕の緊張も少し取れた気がした。
乗り切った……って事でいいんだろうか? ただ、僕には覇戸部を尊重したという魔王様に納得がいかない。
「不満そうな顔だ」
クスクスと、また見透かしたように魔王様が笑い、ユキはギョッとした顔で僕を見た。
「私が覇戸部を止めなかった事が不満?」
「……正直、疑問はあります」
知っていたのなら、事が起こる前に止められたはずだ。下手をすれば魔王様の大事な眷属たちが、バラバラになってしまうところだったのに……。
「真里、この世界はね『意志』で出来ているんだ。決死の覚悟というほどの強い想いを、私は軽視しない」
「意志……」
「だから、ユキを守りたいという真里の決意を尊重する」
魔王様の目は相変わらず笑っておらず、深い闇が怖いほどに暗い。けれどもその言葉の端々には、あくまで平等なのだと言われている気がした。
「ただ覚えておいて欲しい、私は本当に、君のその魂が嫌いなんだ」
許されたと思って気を抜いているところに、再び冷える空気と重いプレッシャー。
普段表情をほとんど表に出さない魔王様が、睨むような表情を見せる時は恐怖でしかない。
しかし、魔王様がそんな脅しをかけたのはほんの一瞬の出来事で、この場はすぐに元の空気に戻った。
ただ、僕とユキの顔は青ざめたまま、何も言えなくなってしまった。
「だから、できれば約束は守ってほしい。ユキと一緒に居たいのなら、アレの好きにさせるな」
「ッ……はい」
そう返事するしかなかった。
「急いでいるところ、引き止めてしまったね」
行っていいよと、勝手に開いた扉からユキと二人で退室した。
ギィと勝手に扉が閉まったところで、二人してはぁぁ~と長めのため息を思わず吐いた。
怖かった、緊張した、殺されるかと思った!
もう、ユキと一緒に居られないんじゃないかって……それが一番怖かった。
震えるユキの手が僕の手を握ってきて、ユキも同じ気持ちだったのかと顔を見合わせて苦笑してしまった。
「すまない、また怖い思いをさせたな」
「ううん、僕が軽率だったんだ……でも後悔なんてしてないよ、ユキを助けられたんだから」
もしあのまま体が動かなくなっていたら、間違いなくユキは傷つけられていた。
魔王様には申し訳ないけれど、僕は菖寿丸に感謝している。
だけど、『好きにさせるな』って魔王様の言い回しは、菖寿丸を信じてはいけないと言っているようだった。
それが魔王様なりの忠告なのであれば、僕は菖寿丸を信用してはいけない。
でも僕にはどうしても、あの人が悪い人だとは思えないんだ……。
「今度こそ向かうが、いいか?」
ユキにそう声をかけられて、一瞬どこに? と頭に疑問符が浮かんだが、すぐに思い出した。
そうだ、僕たちは事件のあった現場に、例の仕掛けの確認に行くところだったんだ!
ユキの手を握り返して頷くと、ユキからも軽く頷くような仕草があって辺りは白い光に包まれた。
目を空ければ、先ほどいた直轄領よりも暗い倉庫内、真っ暗闇に感じる。
目が慣れる前にユキはスタスタと歩きだして、例の怪しい仕掛けがある場所を探っていた。
自分が被害に遭った場所なのに、ユキは気にも留めていないような素振りだ。
急いでユキの後を追うようについていくと、棚を調べているユキの舌打ちが聞こえた。
「やられた……無くなってる」
「えっ!」
ユキが指し示す棚を確認すると、そこには明らかに何か隠してあったかのような空洞があった。
ただ不自然なくらい、そこには何の魔力の痕跡も残っていなかった。
もっと言うなら、この建物全体に付着していた筈の、僕やユキ、覇戸部の魔力さえきれいサッパリ消えてしまっていたのだ。
-----
覇戸部とハルキ
「なにやってるんですか本当、今まで築いたもの台無しにしちゃって、そんな事したかったんですか?」
ハルキの問いに覇戸部は何も答えなかった、意識が朦朧としているのか、それとも答えたくないのか……。
「ユキ様に憧れてる人間なんていっぱいいますよ、私だってその一人でした」
汗だくになった覇戸部の額を、その場で作り出したタオルで拭いながら、ハルキは独り言のように話しかけていた。
「ユキ様は誰にだって分け隔てなく接してくれますし、欲しい言葉をくれます……自分を分かってくれている人だと感じれば、みんなどうしたって魅かれてしまうんです」
ハルキは付けていた上半分の狐面を外して、左側についた飾り紐を懐かしく眺めた。
ハルキの死因は自殺だった。
頭部左側の損傷で、そこに大きな傷跡をつけたままこの世界の住人となった。
あまりにも醜く、人前に出ることも憚れると、この世界に来た当初のハルキは塞ぎ込んでいた。
そんな時に狐面を目の前で作ってみせて、隠れないところには飾り紐を添えてくれた。
『隠さなくても俺はいいと思うけどな』
なんて言葉をかけられて、優しくされて、誑かされていた。
自分はこの人の特別なんじゃないかと思い始めたころに、皆にそうなのだと気付くのだ。
けれど、一人だけそうじゃない男がいた。
五百年も想われ続けているのに、ユキが上っ面の優しさを見せない相手が。
ハルキにはそれが特別な事のように見えていた。
真里が来て、ユキの本当の特別を全員が知ることになった。
それでも諦めない覇戸部に、ハルキは憧れの感情を抱いて、つい肩入れしてしまったのだ。
「あなただけは、そんな凡庸な想いじゃなかったはずなのに」
そんな自分勝手な理想を語るハルキの言葉なんて、覇戸部の耳には入っていなかった。
ただ、自分もユキを好きだった理由が、その凡庸な想いとそう大差ないと思ってしまったのだ。
また静かに瞳に涙を溜めた覇戸部は、ハルキに一言も返事をしなかった。
その涙を動けない覇戸部の代わりに拭って、ハルキはフッと自嘲気味に笑った。
「慰めてあげましょうか?」
「……いらん」
その後覇戸部は動けるようになるまで、一人独房に放置されていたらしい。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる