ユメのあとさき

あおあおの部屋

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第24話 希望の星

【第24話おまけエピソード②】情報屋・ルーツの日常③<ルーツ視点>

「ミナト……ユメちゃんの新情報仕入れたで。買う?」
「買う」
「いつも即決やな、お前……」

 おに一さんにバレると面倒やし、とっとと取引を終わらせたところで情報提供。
 もちろん、周りにあいつらがいないことは確認済みや。
 過保護な奴らにバレて取引できなくなったらオレも、この上客も困るし。

「で? 今回は?」
「なんと……ユメちゃんの好みのタイプ」
「なにそれ、詳しく」

 お、知らんかったみたい――よかった、金返さんで済む。
 ってか、普通はどんな情報か聞いてから買うもんなのに……ユメちゃんって聞いた瞬間にこいつ財布出すもんな。
 どんだけやねん、と内心呆れつつ、情報提供。

「――近すぎない人、やって」

 まぁ……ユメちゃん見てたら、どう考えても察するやろ。
 あんだけ、距離が近いの苦手って何度も言っとるんやから。

 ただ、普段は憎らしいほど頭がキレるこいつは、ユメちゃんに関してはポンコツになる傾向があるせいか、こんな分かり切った情報についても真面目な顔。

「……近すぎない人……ユメちゃんっぽい。真面目、とか優しい人、とかじゃないあたりが」
「そういうのもあるやろうけど、それ以上に適度な距離を保つ人がいいらしいで」
「適度、ね……」

 あ、考えこんどる。
 うんうん、やっぱな……ここで「そんなの知ってるよ」ってなられても困ったから、そこには一安心。
 うまいこと狙った通りに動いとる――もう一押しするか。

「せやから、もう少し距離開けた方がユメちゃんには好かれるんやない?」
「は? 十分、開けてるだろ。適度だよ」
「いや、どこが? 何回ユメちゃんに離れてって言われとんねん、お前」
「だから離れてんじゃん、そのたびに。ユメちゃん、怖がらせたくないし」
「そう思うなら言われる前にそうしろって話……って、聞いてへん」

 うーん、って悩む男を見て溜息が出る。

 いやいや……おれらとの距離を実践すればいいことやん。
 なんで、ユメちゃんへのほぼゼロ距離を『適度』って思ってるんやろ……思い込んでるんやろか。

「とにかく、そうやって距離考えんとユメちゃんに逃げられるで? もうちょっと、あの子の好みに近付かな――お前、ユメちゃんのために言い方とか態度に気遣えるぐらいやし、距離を少しだけ保つぐらい問題ないやろ」

 今までの自分を(ユメちゃんの前でだけ)改めるぐらいに惚れ込んでるミナトがこの話を聞けば、分かるはず――ユメちゃんの為にも。
 そう考えながら情報提供してくれた子の顔を思い浮かべてると。

「……これ以上、か……うん」

 お、やっぱな――これは成功したか。

 頷いたミナトに、こっちもうんうん頷いた瞬間。





「無理」





「……は?」
「考えたけど、無理。口調も態度はともかく、今以上に離れるのは無理」

 断言されて……こっちが呆気に取られる。

「え……そこまで?」
「無理。目の前に好きな子がいて、離れるとか意味分かんないし……その間に、誰かにかっさらわれたらどうすんだよ。ただでさえ、魔王とか魔族とかストーカーとかに付きまとわれてんのに」

 いや……お気持ちは、分かりますけれども。

「あの一……それでも、ユメちゃん本人が距離を保ってほしいって言ってるんやで? しかも、離れるって言ったって、普通に人と話す距離に居ればええやんってだけの話で」
「おれ的にはあの距離は十分離れてるよ。本当はずっとハグしてたいし、イチャイチャしてたいし、2人だけの世界にいたいのをグッと我慢して、ああしてるんだから」
「いや、こわっ! お前、ストーカー認定してたトーマと変わらんで!?」

 真面目な顔で言うな! 本気が伝わってくるから余計に怖い!

「あのケダモノと一緒にすんな。無理強いはしてないし、ユメちゃんが本気で怖がることはしないよ」
「……本気で嫌がることは?」
「してないだろ。ちゃんと見極めてる……ユメちゃんが距離を取りたがるのは恥ずかしいからだよ。あと、どうすればいいか分からなくて逃げたくなっちゃうだけ」

 えー、そこまで分かってんのに強行するって……というか、こいつ全部分かっててやってるっつーことやん。

「うわぁ、性悪。いじめっこなだけやん」
「今更? お前が誰より知ってんだろ――あ、ユメちゃん、みっけ。じゃ、また新情報あったらよろしく」
「あ、ちょ!」

 止める間もなくユメちゃんに声を掛けるミナト。
 ……遠目でも、ミナトの距離の近さに引いてるユメちゃんが見える。

「……せっかく教えてくれたのに……ごめんなぁ、ユメちゃん」





 ――少しだけでもいいから、距離が離れると話しやすい、かな。





 戸惑った目の情報提供者の願い、叶えられんかったなぁ……お詫びに、甘いもんでも何か買ってきてあげよ。

 ★一般的には測れないパーソナルスペース
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