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11 転移していきなり王都です
しおりを挟むゲートのある神殿はこちらも森の中だった。馬車が迎えに来ていて、また一人で乗る。森の中を小一時間走って、開けた場所に出た。街道は広く整備されて、あまり起伏の無い広い平野にぽつりぽつりと集落があり畑が広がる。ぽつりぽつりと建っていた家屋がやがて増えて高い建物もあって、その先に城壁のようなものが見えてきた。
「あれが王都だ」
「アルンシュタット王国、王都エルフルトだ」
行く手に二つの塔があり繋がった城壁がくりぬかれたようになっている。そこが入り口で、両脇に少し小さい入り口がある。馬車は躊躇いなくその真ん中を通り抜けた。門の中には両側に低い立派な建物が建っていて、門衛たちが並んで出迎える。その前を馬車はそのまま街中へと走っていく。
舗装された広いレンガ道には馬車が行き交い人通りも多い。陽が傾く頃に大きな聖堂に着いた。聖堂の前には広場があって周りには教会事務所や礼拝堂、教会の騎士団詰所、学校など幾つもの立派な建物がある。
先に聖堂の手前にある立派な建物、夏の離宮というらしい、に行って着替えるという。馬車を降りると沢山の司祭服を着た聖職者が出迎える。そのまま離宮の中に案内され、奥のホールに入った。
そこに高位の聖職者や女官などがぐるりと待ち構えている。
「エマ、もう隠蔽を解いても大丈夫だ」
「分かったわ」
ルパートに言われて隠蔽を解く。
私が隠蔽を解くと「おお」とも「ほうっ」とも息を吐くような声がして、周りにいる人が皆一歩下がった。
「私達はここまでだ。君は少しマナーを勉強をして学校に行くことになるだろう」
「そうなんですか」
もう決まっているんだな。突き放されたような寂しい気持ちだ。この世界に来て私とまともに接してくれた人は片手で数えられる。彼らの役目はここに私を連れてくる事だったのだ。
女官の中でも一番高位そうな女性が前に出て、挨拶をする。
「よくいらっしゃいました、エマ様。わたくしども一同心より歓迎いたします」
「彼女はカステル伯爵夫人だ。君の教育係兼側付きを担当する」
「よろしくお願いします」
ルパートは彼女を紹介して、私を夫人に託した。
「では頼む」「承りましたわ」
「我々はここで失礼するよ。エマ、頑張れよ」
「はい、ルパート様、キリル様、レオン様。お世話になりました」
頭を下げると三人は軍隊式に手を胸に持って来て挨拶を返し部屋を出て行った。
三人のイケメンはいなくなった。残念である。物語は逆ハーではないようだ。オバサンは寂しいけど泣かないよ。泣いて喚いて駄々を捏ねたりしないよ。クスン。
教育係のカステル伯爵夫人が二人の侍女を紹介する。
「エマ様。こちらは侍女のハイデと侍女見習いのカチヤです」
「「よろしくお願いします」」
そして頷く間もなく「お着替えを」と、私を浴室に案内する。二人の侍女も付いて来て、浴室で着ている物を全部剥ぎ取られて、寄ってたかって磨き上げられた。
久しぶりのお風呂だー、とゆっくりしている暇もない。
旅のホコリもすっかり洗い落として綺麗に磨き上げられた後、白に近い色の裾や胸元に刺繍の施されたエンパイア風のコットンの楽なドレスを着せられて、髪を濃いピンクのリボンで纏められ、薄くメイクをしてやっと終わった。
このドレスは寝間着に近い感じに薄々で少し寒いと思ったら、侍女のひとりが濃いローズ色の大判のストールを肩から掛けてくれた。
「ありがとう」
カシミヤっぽい暖かいストールにホッとする。
鏡の中の私は、いつか放流された先で見たほわほわの綿菓子のようなピンクの髪の美少女だった。磨かれて少しお化粧もされてあの時よりきれいだ。侍女たちが満足そうなやり切ったという顔をしている。かなり汚れていたんだね。恥ずかしい。
「こちらで暫らくお休みください」とお茶と菓子を出されて休憩となった。宛がわれた部屋は落ち着いた茶系の家具で纏められており、部屋でひとりになってやっと一息ついて、私はこっそり自分を『鑑定』した。
名前 エマ 十五歳 性別 女
スキル 隠蔽 鑑定
固有スキル 決め台詞
ギフト 【アイテムボックス】【異世界言語翻訳機能】【危機管理能力】【ご都合主義】
前に鑑定した時と変わっていない、…………。
あれ? ギフトの所、増えている。
【ご都合主義】ってなんじゃい。
私に都合よく展開してくれるのならありがたいことだけど、そういえばロンダリングの後に、こちらの世界の神様が適当に何か付けると言っていたなあと思い出す。大盤振る舞いなのかしらん。
このギフトはこちらの世界の人に見えない方がいいような気がする。ついでに隠蔽とか鑑定とか決め台詞も見えなくていいような気がする。
もう手遅れかもしれないが念の為だ。自分に『隠蔽』をかける。何かが覆いかぶさる感じはなかったが、一番上の名前のところ以外は半透明になった。
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