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第二部 探索編~子安
愛欲の館(3)
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女王は、己れが優位であることを演じ続けた。
「貴人が湯浴みしているときは、眼をそらすものじゃ」
笑みを含んだ声でいう。
「男の目に触れても、隠さぬのはそちらだろう。オレが眼をそらす理由はない」
草太が静かに返す。
彼が先ほどから繰り広げられている茶番になんの感傷もないことは明らかであった。
「女王に対して無礼であろう!」
女官が激した
「おけ、女官長。野で育った獣じゃ、礼節は知らぬ」
女王がゆったりと笑う。
(そうよな。都会の男ではないゆえ、駆け引きは必要ない。妾が手を差し伸べてやらねば、な)
やがて、女王が湯壷から立ち上がった。
滑らかな肌から湯が玉となって零れ落ちる。
濡れ濡れとした黒髪を女奴隷が掬いきれず、桜色に上気した肌にまとわりつくのは、煽情的な様であった。
さすがに女王の裸身を隠すように奴隷たちが取り囲んだ。甲斐甲斐しく女主人の躰から水分をのぞき、髪を梳く。化粧を施し、衣を着せた。
却って、衣服をつけた女王の装いに草太は目を見張った。
長い髪の下半分を垂らしたまま上部を丸めて、かんざしを指している。
シャラシャラと涼やかな音をたてる長く垂れた耳飾りと、首には胸まである光沢のある石を連ねた首飾りをさげている。
長い上着には袖はなく、前をゆったりと腰紐で抑えている。その下には、長い波打った襟をもつ着物を身につけていた。その袖は腕を動かすと女性のなまめかしい腕が袖から割れて見えるよう、割れている布を肘のところで飾り紐で留めていた。
女官長や奴隷たちのつけているものは上着は似ていたが裾はひきずってはいない。襟は直線的で短く、袖も筒袖になっていたので、高貴な女性の身に付けるものだけ衣裳を凝らしてあるようであった。
男の衣裳は上着は膝丈くらい。下に付ける着物は、女王の衣服のように袖は括ってあったが、割れて腕はみえないようになっており、足も膝の処で紐で留めるようになっていた。
(邦が変ると衣服も変るものだ……)
草太はあらためて旅をしている、という感慨をもった。
風土の違いというものはまず如実に衣服に顕れる。諸国を探索し始めて、しみじみと思ったことの一つである。
(流石、女を売って商いをしてる邦だ)
この邦は大した特産品があるわけではないが、女を商っていることで人が多く往来を行きかい、情報が飛び交う。外交の邦として成り立っている。
(このやさしい着物を菜をに着せたら、どうなのだろう)
ふと、草太は思った。
髪を結い上げ、紅を唇にひき。胸と腰を強調するためにぎゅっと腰紐を結い、やわらかな腕を露出する、女が女であることを強調する為の衣裳。
菜をがこの邦の王族の衣装を着こんでいる映像がアタマの中にうかび、草太は振り払った。
そんな草太の感慨を女王は都合よく解釈した。
(野出しの猪には、かえってこういった都会的なものをぶつけてやればよいのじゃ……)
女王は内心ほくそ笑み、草太を、女王の寝間へと誘った。
「貴人が湯浴みしているときは、眼をそらすものじゃ」
笑みを含んだ声でいう。
「男の目に触れても、隠さぬのはそちらだろう。オレが眼をそらす理由はない」
草太が静かに返す。
彼が先ほどから繰り広げられている茶番になんの感傷もないことは明らかであった。
「女王に対して無礼であろう!」
女官が激した
「おけ、女官長。野で育った獣じゃ、礼節は知らぬ」
女王がゆったりと笑う。
(そうよな。都会の男ではないゆえ、駆け引きは必要ない。妾が手を差し伸べてやらねば、な)
やがて、女王が湯壷から立ち上がった。
滑らかな肌から湯が玉となって零れ落ちる。
濡れ濡れとした黒髪を女奴隷が掬いきれず、桜色に上気した肌にまとわりつくのは、煽情的な様であった。
さすがに女王の裸身を隠すように奴隷たちが取り囲んだ。甲斐甲斐しく女主人の躰から水分をのぞき、髪を梳く。化粧を施し、衣を着せた。
却って、衣服をつけた女王の装いに草太は目を見張った。
長い髪の下半分を垂らしたまま上部を丸めて、かんざしを指している。
シャラシャラと涼やかな音をたてる長く垂れた耳飾りと、首には胸まである光沢のある石を連ねた首飾りをさげている。
長い上着には袖はなく、前をゆったりと腰紐で抑えている。その下には、長い波打った襟をもつ着物を身につけていた。その袖は腕を動かすと女性のなまめかしい腕が袖から割れて見えるよう、割れている布を肘のところで飾り紐で留めていた。
女官長や奴隷たちのつけているものは上着は似ていたが裾はひきずってはいない。襟は直線的で短く、袖も筒袖になっていたので、高貴な女性の身に付けるものだけ衣裳を凝らしてあるようであった。
男の衣裳は上着は膝丈くらい。下に付ける着物は、女王の衣服のように袖は括ってあったが、割れて腕はみえないようになっており、足も膝の処で紐で留めるようになっていた。
(邦が変ると衣服も変るものだ……)
草太はあらためて旅をしている、という感慨をもった。
風土の違いというものはまず如実に衣服に顕れる。諸国を探索し始めて、しみじみと思ったことの一つである。
(流石、女を売って商いをしてる邦だ)
この邦は大した特産品があるわけではないが、女を商っていることで人が多く往来を行きかい、情報が飛び交う。外交の邦として成り立っている。
(このやさしい着物を菜をに着せたら、どうなのだろう)
ふと、草太は思った。
髪を結い上げ、紅を唇にひき。胸と腰を強調するためにぎゅっと腰紐を結い、やわらかな腕を露出する、女が女であることを強調する為の衣裳。
菜をがこの邦の王族の衣装を着こんでいる映像がアタマの中にうかび、草太は振り払った。
そんな草太の感慨を女王は都合よく解釈した。
(野出しの猪には、かえってこういった都会的なものをぶつけてやればよいのじゃ……)
女王は内心ほくそ笑み、草太を、女王の寝間へと誘った。
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