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第一部 再興編
我、礎となりて(3)
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その夜。
草太と疾風が寝起きする場所と定められている小屋。
「しかし奇策を考え付くものだな。じい様、いや頭領も!」
疾風が感嘆したように呟いた。
時苧がが阿蛾に策を授けた。
その事で、阿蛾は里の者から疎まれるであろう。
菜をが庇い、場を納める為に草太がわざと阿蛾を恫喝したのだと考えたのだ。
恋人を己が手で弑さねばならなかった男。
そして、誰からも愛され受け入れられている娘がああ言えば、あえて否を唱える者はおるまい。
疾風は、そう理解したのだ。
「あの策を頭領に持ち込んだのは、本当に菜をだ」
草太が静かにいう。
「なに?」
疾風が眼をむいた。
「菜をが阿蛾を、わざわざ里から爪弾きさせるようなことを言うか?」
疾風は信じられなかった。
「阿蛾は、こはと亡き後、菜をただ一人になついているんじゃなかったのか?
あんなに大事に思っている妹を、わざわざ窮地に陥れるか?」
その通りであった。
疾風の脳裏には、草太の言葉を疑う、という思考はない。
……思考はないが疾風の知っている菜をは、他人が嫌がることは決してしない、させない娘だ。
他人に苦しみを背負わせるなら、自分が出来る限りその荷物を背負おうとする娘。
何も菜をは、特に阿蛾一人だけを大切に思っている訳ではない。
云ってみれば、周りの全てを大事に出来る娘なのだ。菜をは誰の懐にも飛び込めるし、面倒見がよく誠実である。
騒々しいし、悪戯好きでお調子者であることも否定できない。
が、不思議と年上の者にも可愛がられ、年下の者にも懐かれている。
年も同じ頃の少年少女が何十人とおれば、好き嫌いも生まれるし、群れも出来る。
陰湿なものではないが。それでも毎日、諍いは起こっていた。
菜をはその中に割って入る。
双方の言い分をとことん聞き、時には力づくで仲裁する。
誰にでも本心から接する娘であるので、菜をに仲裁に入られると、仲間たちは諍いの矛をおさめる。
そんな中、阿蛾は他人とうまく関わることが出来ぬようで、どこの群れにも入っていなかった。
子供というものは残酷な生き物で、自分の群れに入っていない者を攻撃する。
こはと亡き後、阿蛾が孤立していたのも皆の雰囲気がそうさせたのだ。
阿蛾は、こはとには、懐いていた。
菜をが里の太陽のような存在であるならば、こはとは、里の母のような存在であった。
こはとが亡くなってから、自分の殻に閉じこもるようになった阿蛾を、なにくれとなく構っていたのが菜をであった。阿蛾も、菜をには心を開けるようであった。
「それが、菜をのこはとへの想いなんだ。
阿蛾が傷つけられたら、そいつを討ってから自分も死ぬ覚悟で阿蛾に頼んだ」
「だけどな」
「阿蛾も、間者に疑われることを承知で、菜をの覚悟を汲み取って、協力した。」
草太と疾風が寝起きする場所と定められている小屋。
「しかし奇策を考え付くものだな。じい様、いや頭領も!」
疾風が感嘆したように呟いた。
時苧がが阿蛾に策を授けた。
その事で、阿蛾は里の者から疎まれるであろう。
菜をが庇い、場を納める為に草太がわざと阿蛾を恫喝したのだと考えたのだ。
恋人を己が手で弑さねばならなかった男。
そして、誰からも愛され受け入れられている娘がああ言えば、あえて否を唱える者はおるまい。
疾風は、そう理解したのだ。
「あの策を頭領に持ち込んだのは、本当に菜をだ」
草太が静かにいう。
「なに?」
疾風が眼をむいた。
「菜をが阿蛾を、わざわざ里から爪弾きさせるようなことを言うか?」
疾風は信じられなかった。
「阿蛾は、こはと亡き後、菜をただ一人になついているんじゃなかったのか?
あんなに大事に思っている妹を、わざわざ窮地に陥れるか?」
その通りであった。
疾風の脳裏には、草太の言葉を疑う、という思考はない。
……思考はないが疾風の知っている菜をは、他人が嫌がることは決してしない、させない娘だ。
他人に苦しみを背負わせるなら、自分が出来る限りその荷物を背負おうとする娘。
何も菜をは、特に阿蛾一人だけを大切に思っている訳ではない。
云ってみれば、周りの全てを大事に出来る娘なのだ。菜をは誰の懐にも飛び込めるし、面倒見がよく誠実である。
騒々しいし、悪戯好きでお調子者であることも否定できない。
が、不思議と年上の者にも可愛がられ、年下の者にも懐かれている。
年も同じ頃の少年少女が何十人とおれば、好き嫌いも生まれるし、群れも出来る。
陰湿なものではないが。それでも毎日、諍いは起こっていた。
菜をはその中に割って入る。
双方の言い分をとことん聞き、時には力づくで仲裁する。
誰にでも本心から接する娘であるので、菜をに仲裁に入られると、仲間たちは諍いの矛をおさめる。
そんな中、阿蛾は他人とうまく関わることが出来ぬようで、どこの群れにも入っていなかった。
子供というものは残酷な生き物で、自分の群れに入っていない者を攻撃する。
こはと亡き後、阿蛾が孤立していたのも皆の雰囲気がそうさせたのだ。
阿蛾は、こはとには、懐いていた。
菜をが里の太陽のような存在であるならば、こはとは、里の母のような存在であった。
こはとが亡くなってから、自分の殻に閉じこもるようになった阿蛾を、なにくれとなく構っていたのが菜をであった。阿蛾も、菜をには心を開けるようであった。
「それが、菜をのこはとへの想いなんだ。
阿蛾が傷つけられたら、そいつを討ってから自分も死ぬ覚悟で阿蛾に頼んだ」
「だけどな」
「阿蛾も、間者に疑われることを承知で、菜をの覚悟を汲み取って、協力した。」
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