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第一部 再興編
二人を繋ぐ痣(4)
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ひそかに、水音がした。
あるか、ないか。
瘤瀬の者でなければ、聞き取れないくらいの、微かな水音。
小さな獣でも入ってきたようだ。
里の者の気配は、もっと騒々しいのだ。
現に疾風の気配が、反対方向からしてきた。
ちょうど、音がした方は枝がかぶさり、よく見えない。
波紋が広がってき、どうやら、中心部=草太のいる方向に向かってきているようだ。
草太は、見るともなしに、その方向に眼をやっていた。
波紋の動きがとまり、そこに落ち着いたようだった。
「(!)」
草太は気配を懸命に押し殺した。
女だ。
黒髪をたらし背中をこちらに向けて、ちょうど湯の中に腰を落としている格好だ。
女は完全に緊張をといているらしく、辺りに気を配ろうとしていないようにさえ見える。
にもかかわらず、草太には感知できなかった。
里の者であろうとも思ったが、人の気配と感じさせない自然への同化の仕方といい。普段見知っている里の者以上の術者と見た。
草太も、その女と同程度には気配を殺せる。草太は相手を確認する為、いったん湯の外に出ることにした。
その時。
女が動いたので、草太は自分の動きを止めた。
(勘付かれたか?)
草太の静かな、しかし焦燥をよそに、女は髪を自分の前に全て寄せ、丁寧に洗いだした。
「!っ」
今度こそ、草太は驚愕を押し殺せず、気配を女に悟られてしまった。
女の気配が闘気に変じた。
「しっっ」
呼吸を押し出す音より先に、後ろ向きのまま女が放った何かが、漆黒の矢と化した。正確に草太の瞳と瞳の間を狙ってきた。
そして振り向きざま、一気に間合いを詰めてくる。
驚いた為、瞬き一つ分反応が遅れた。
避けたり、叩き落したりすれば隙が生じる。次の攻撃を防ぐ為にも、それは出来ない。
咄嗟にいかなる時であろうと、鉄をまいたままの右腕を顔の前に出したのが精一杯であった。
そして、左腕を犠牲にする覚悟で、次の攻撃に備えた。
自らは攻撃に転じるつもりはなかった。
何故ならば。
「あ……、兄者?」
草太の牽制の動きと、女がすんでのところで第二波の攻撃を止め、
女の躯の緊張が解け、、草太の眼前で呆然と呟いたのは、ほぼ同時であった。
「菜を……か」
草太も呟いた。
2人は、しばし、お互いの息が届く距離で立ちつくしていた。
その枝の先端の尖らせ具合、その狙いの正確さ。誰の髪を止めている枝が飛んできたのか、わかってはいたのだが。
否。
その背中に、自分の左腕にある痣と同じ痣を認めたときから、そこにいる女が誰であるかはわかっていたのだ。
同じ痣。
何を意味するのか。
あるか、ないか。
瘤瀬の者でなければ、聞き取れないくらいの、微かな水音。
小さな獣でも入ってきたようだ。
里の者の気配は、もっと騒々しいのだ。
現に疾風の気配が、反対方向からしてきた。
ちょうど、音がした方は枝がかぶさり、よく見えない。
波紋が広がってき、どうやら、中心部=草太のいる方向に向かってきているようだ。
草太は、見るともなしに、その方向に眼をやっていた。
波紋の動きがとまり、そこに落ち着いたようだった。
「(!)」
草太は気配を懸命に押し殺した。
女だ。
黒髪をたらし背中をこちらに向けて、ちょうど湯の中に腰を落としている格好だ。
女は完全に緊張をといているらしく、辺りに気を配ろうとしていないようにさえ見える。
にもかかわらず、草太には感知できなかった。
里の者であろうとも思ったが、人の気配と感じさせない自然への同化の仕方といい。普段見知っている里の者以上の術者と見た。
草太も、その女と同程度には気配を殺せる。草太は相手を確認する為、いったん湯の外に出ることにした。
その時。
女が動いたので、草太は自分の動きを止めた。
(勘付かれたか?)
草太の静かな、しかし焦燥をよそに、女は髪を自分の前に全て寄せ、丁寧に洗いだした。
「!っ」
今度こそ、草太は驚愕を押し殺せず、気配を女に悟られてしまった。
女の気配が闘気に変じた。
「しっっ」
呼吸を押し出す音より先に、後ろ向きのまま女が放った何かが、漆黒の矢と化した。正確に草太の瞳と瞳の間を狙ってきた。
そして振り向きざま、一気に間合いを詰めてくる。
驚いた為、瞬き一つ分反応が遅れた。
避けたり、叩き落したりすれば隙が生じる。次の攻撃を防ぐ為にも、それは出来ない。
咄嗟にいかなる時であろうと、鉄をまいたままの右腕を顔の前に出したのが精一杯であった。
そして、左腕を犠牲にする覚悟で、次の攻撃に備えた。
自らは攻撃に転じるつもりはなかった。
何故ならば。
「あ……、兄者?」
草太の牽制の動きと、女がすんでのところで第二波の攻撃を止め、
女の躯の緊張が解け、、草太の眼前で呆然と呟いたのは、ほぼ同時であった。
「菜を……か」
草太も呟いた。
2人は、しばし、お互いの息が届く距離で立ちつくしていた。
その枝の先端の尖らせ具合、その狙いの正確さ。誰の髪を止めている枝が飛んできたのか、わかってはいたのだが。
否。
その背中に、自分の左腕にある痣と同じ痣を認めたときから、そこにいる女が誰であるかはわかっていたのだ。
同じ痣。
何を意味するのか。
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