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第1章
石化するのは、男性陣。
しおりを挟むパーティー、当日。
普段はスザンヌが、私にドレスを着せてくれたり、髪を結ってくれたりするのだけれど、今日ばかりは、ウィンストン公爵家に仕えて長い侍女達が私の身なりを整えてくれた。
ほんのりと施されたメイクに、器用に結い上げられた髪。青空を想像させる程、鮮やかで明るい色をした水色のドレスと、キラキラと輝く小ぶりのアクセサリーは、デビュタントに相応しい。
本来、デビュタントとはもう少し遅いらしいのだが、私の場合は、ウィンストン公爵家の養女して他の貴族に顔を覚えてもらう必要があったことに加え、既にアリソン殿下と顔見知りだったということもあり、この歳での社交界デビューとなった。
「お嬢様…!なんてお美しい…!」
「ありがとう。」
「今宵のパーティーで最も美しいと賞賛される女性は、お嬢様で間違いないかと思われます!」
「大袈裟。」
スザンヌは、私のことを過大評価し過ぎなのだ。“馬子にも衣装”とは、よく言うだろう。
「王宮でのパーティー、楽しんできてくださいね!」
「別に楽しみではないんだけど…とりあえず行ってくる。」
「はいっ!行ってらっしゃいませ!」
スザンヌに見送られて、部屋を出た私。
ドレスに足を引っ掛けないよう気をつけながら玄関ホールへと向かえば、正装に身を包んだヒューゴ、エイダン、カーシーの3人が既に待っていた。見送りなのか、公爵様と奥様も居る。
「お待たせ致しました。」
声を掛けたことにより、5人の視線が、一斉にこちらを向く。
「……。」
「……。」
「……。」
「……。」
そして何故か、訪れる沈黙。
皆が私に視線を向けたまま固まるものだから、どこか変なのだろうかと心配になるも、唯一石化していない奥様が、私の心情を察して、『どこも変じゃないから安心して』と言ってくれる。
ならば何故、彼等は動かないのだろうか。
怪訝な顔をする私に対して、奥様はクスクスと面白そう笑っている。
「…おい、どうすんだよ、これ。」
沈黙を破ったのは、エイダンだった。
「う~ん…、どうしようか。これはちょっとまずいかも?」
「まずいかも?…じゃないよ、兄さん!どうしてあの性悪王太子とお義姉ちゃんを会わせちゃったのさ!」
もう!とヒューゴに対して怒りを見せるカーシー。そんな弟に、兄は『ごめん…』と素直に謝る。
カーシーが怒っている理由はいまいち分からないけれど、これだけは言える。
私もあの性悪王太子とは会いたくはなかった。
それはそうと、さっきからこの兄弟は、いったい何の話をしているのだろうか。
状況が全く理解出来ずに怪訝な顔を深める私に、さらなる追い打ちをかけたのは、公爵様だった。
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