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「人間」使用監視委員会
「人間」使用監視委員会④
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町田の家は本当にすぐ近くで、居酒屋から徒歩数分のところのアパートだった。
「さ、そのへんの床に座ってください」
志保がどうしていいか分からず立っていると町田が声をかけた。志保が床に座ると少し距離を開けて斜め前くらいに町田も座った。
周りをみまわすと必要なもの以外あまりものがないのに、どこかぐちゃっとしている。(独身の男の家の模範だわ…)志保はそう思うと少しクスッと笑った。
「なんですか、天野さん」
「別に」
「さ、天野さんさえ大丈夫なら続きを話してください。……ここなら、泣いても大丈夫ですからね」
町田は少し躊躇ったあとそう付け加えた。あぁ、そうか、と志保は思った。(そうか、町田は私が泣きそうなのを察してくれたのね)志保は町田のその気遣いが嬉しかった。そして、ふっと息を吐くと話し始めた。
――――
幸太は家から12キロほど離れた住宅地のゴミ置き場から見つかった。幸太は、いや、かつて幸太の肉体を構成していた肉は真っ黒な中身の見えないゴミ袋に入れられそのゴミ置き場に無造作に捨てられていた。住民が異臭を放つそれを不審に思い警察に連絡して見つかったのだ。肉塊は幸太の形をしていなかった。頭部手足胴体は切り離され、それが更にバラバラにされていたりぐちゃぐちゃに潰されていたりしており、また、遺体の一部は無くなっていた。しかしもっと酷いことがあった。警察が死因などを具体的に知るために詳しく調べると分かったことなのだが、幸太は生きている時に体がバラバラに切り離されたり、ぐちゃぐちゃに潰されたのだ。その事実を警察から告げられた時、母は半狂乱になった。父と共に、狂ったように泣き叫び続ける母を抱きしめつつ志保自身も自分の中にふつふつと湧くどす黒い感情を必死に抑えていた。(今、私が感情的になってはだめ。今は、母さんを支えなきゃ)
それから、6日後犯人が判明した。『「人間」も人間と同じである』という思想を掲げて活動している団体は世界にいくつもあるが、日本で最大の規模を持つ『人間平等変革社』という名の団体から派生した過激な組織『ロード』に所属している前橋一真の犯行だった。
『「人間」を人間にしたかったんだ。俺は「人間」を人間にするための方法を色々試してた。それで、「人間」に人間を食わせてみるのも一つの手だなって思ったんだよ。でも失敗だった。全然人間にならねぇ。』
逮捕後の前橋のその供述は日本中を震撼させた。ロードが組織的にそのようなことを行っているのではないかと警察は調べたが証拠はなく、結局前橋の個人的反抗だと断定された。
『「人間」に人間のあのガキを食べろって命令したらなんの躊躇いもなく縛ってたガキの右手を切断して食べた。次の日は左手、その次は足……毎日ちゃんと食べさせたのに全然人間にならねぇし、しまいには吐いちまう。俺はどこを失敗したんだろうな』
裁判の時も反省の色はなくこのようなことをぶつぶつと呟き続けていたこともあり、裁判所はこの男に無期懲役の判決を下した。志保としてはこの男を自分の手で殺したいほど憎んでいたので死刑にならないことが不満だった。そしてなにより、志保はとても前橋個人の犯行とは思えなかった。(絶対、絶対あのロードって組織がやったことだ)
「さ、そのへんの床に座ってください」
志保がどうしていいか分からず立っていると町田が声をかけた。志保が床に座ると少し距離を開けて斜め前くらいに町田も座った。
周りをみまわすと必要なもの以外あまりものがないのに、どこかぐちゃっとしている。(独身の男の家の模範だわ…)志保はそう思うと少しクスッと笑った。
「なんですか、天野さん」
「別に」
「さ、天野さんさえ大丈夫なら続きを話してください。……ここなら、泣いても大丈夫ですからね」
町田は少し躊躇ったあとそう付け加えた。あぁ、そうか、と志保は思った。(そうか、町田は私が泣きそうなのを察してくれたのね)志保は町田のその気遣いが嬉しかった。そして、ふっと息を吐くと話し始めた。
――――
幸太は家から12キロほど離れた住宅地のゴミ置き場から見つかった。幸太は、いや、かつて幸太の肉体を構成していた肉は真っ黒な中身の見えないゴミ袋に入れられそのゴミ置き場に無造作に捨てられていた。住民が異臭を放つそれを不審に思い警察に連絡して見つかったのだ。肉塊は幸太の形をしていなかった。頭部手足胴体は切り離され、それが更にバラバラにされていたりぐちゃぐちゃに潰されていたりしており、また、遺体の一部は無くなっていた。しかしもっと酷いことがあった。警察が死因などを具体的に知るために詳しく調べると分かったことなのだが、幸太は生きている時に体がバラバラに切り離されたり、ぐちゃぐちゃに潰されたのだ。その事実を警察から告げられた時、母は半狂乱になった。父と共に、狂ったように泣き叫び続ける母を抱きしめつつ志保自身も自分の中にふつふつと湧くどす黒い感情を必死に抑えていた。(今、私が感情的になってはだめ。今は、母さんを支えなきゃ)
それから、6日後犯人が判明した。『「人間」も人間と同じである』という思想を掲げて活動している団体は世界にいくつもあるが、日本で最大の規模を持つ『人間平等変革社』という名の団体から派生した過激な組織『ロード』に所属している前橋一真の犯行だった。
『「人間」を人間にしたかったんだ。俺は「人間」を人間にするための方法を色々試してた。それで、「人間」に人間を食わせてみるのも一つの手だなって思ったんだよ。でも失敗だった。全然人間にならねぇ。』
逮捕後の前橋のその供述は日本中を震撼させた。ロードが組織的にそのようなことを行っているのではないかと警察は調べたが証拠はなく、結局前橋の個人的反抗だと断定された。
『「人間」に人間のあのガキを食べろって命令したらなんの躊躇いもなく縛ってたガキの右手を切断して食べた。次の日は左手、その次は足……毎日ちゃんと食べさせたのに全然人間にならねぇし、しまいには吐いちまう。俺はどこを失敗したんだろうな』
裁判の時も反省の色はなくこのようなことをぶつぶつと呟き続けていたこともあり、裁判所はこの男に無期懲役の判決を下した。志保としてはこの男を自分の手で殺したいほど憎んでいたので死刑にならないことが不満だった。そしてなにより、志保はとても前橋個人の犯行とは思えなかった。(絶対、絶対あのロードって組織がやったことだ)
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