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勇者の国 編
ある日森の中、変人に出会った
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翌日。
「いて」
レオは頭に痛みを感じて目を覚ます。
昨日、寮の一室を選んで自分の部屋とした。
(20室ほど余っているのでリアンは2室使っている)
部屋に用意されていたベッドに倒れ込むと、さすがに疲れていたようですぐに眠れた。
そして今、何やら頭が痛い。
「いててて」
何か尖ったもので頭をつつかれ続ける。
「痛いって!!!」
レオは叫びにも似た声を発して起き上がる。
見ると、そこにはフクロウがいた。
「うお!?」
「ホホウ。ホウ」
どうやら彼(彼女?)がレオをつついていたようだ。
何かを伝えようとしている。
が、もちろんレオには伝わらない。
その時、誰かが部屋の扉を叩いた。
ミラだった。
「起きたか。っていうか起きてねぇと困る」
フクロウはその姿を見た瞬間、ミラの方へ飛んでいく。
そして肩に乗った。
「おはようミラ!そのフクロウってミラのペットなん?」
「いや、ペットじゃない。図書館の仕事仲間だ」
「そうなんや!フクロウさんよろしくな~」
「それより、お前さっさと馬鹿を仕事場に連れてってくれ」
「あ、そっか。俺今日から働くんか」
レオは身体を起こし、階段を下りて洗面所へ向かう。
顔を洗おうと鏡を見ると、異世界に来て1番驚くべき事が起こった。
「な!なんやこれ!!!!」
「(コイツ朝からうるせえ!!)」
ミラが顔をしかめて耳を塞ぐが、レオは気にしない。
そこには平凡な黒い髪に────青い眼が映っていた。
「な、な!?目が青い!!!!!!」
何度見ても、青い。
ミラは呆れた様子でレオを見る。
「何言ってんだお前。元々青だったじゃねーか」
「…え?いやいや、普通に黒やで」
「私と会った時からずーっと青だよ!」
2人の間からリアンがひょっこり顔を出す。
「…この時間に起きてくるの珍しいな」
「2人ともおはよ~!レオの声で起きちゃった!」
リアンは何が面白いのか笑っている。
そんなことより、彼女の言う事が確かなら、レオの目は異世界に来た時点で青だったのだろう。
レオは鏡に映る青眼に手を当てる。
「そ、そんな────
「レオ…よくわかんないけど、気にしない方が良いよ…?」
レオが落ち込んでいるのかと、リアンは心配そうに覗き込む。
────かっこいいやん!!!」
レオは目を輝かせている。まっっったく落ち込んではいないし、不気味にも思っていないようだ。
ミラは「元気そうで何よりだ」と面倒くさそうに呟く。
とか何とか、朝っぱらから元気なレオ。
ケイトから貰った軍服に袖を通し、白竜の紋章がきちんと付いていることを確認する。
そして昨夜リアンからもらったグローブを手につける。
指が出るタイプなので、ずっとつけていても支障が無い。
その時、リアンがノック無しに部屋に入ってきた。
「レオーー!!準備できた?」
「おっけーやで!」
2人は仲良く寮を出発した。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
そして、2人はケイトの書記室へやってきた。
リアンは再びノック無しにドアを勢いよく開ける。
「ケイトおっはよーー!!」
「ノックしろって何度も何度も……って、え?」
ケイトは時計を見る。
「起きれたのか!?」
「皆そこに驚くんや…」
そう、リアンはいつも昼から出勤するのだ。
羨ましい限りである。
「ま、私が本気を出せば余裕だよ」
リアンは格好つけて髪をはらう。
「それでケイト、今日の仕事は?」
「今日のって、団長…昨日の仕事終わってないだろ?」
「あー、あっ!森に行く前にレオに会ったから昨日何にもしてないや。あはは」
「……………“働かざる者食うべからず”」
ケイトがボソリと呟いたその言葉に、リアンは過剰に反応する。
そして、急に真顔になる。
「仕事、して来るよ」
シリアスな顔つきでそう言うと、レオの袖を引っ張って出ていこうとする。
部屋を出る瞬間、ケイトはレオを引き止めた。
「まあ、気楽にな。初めはこの団の雰囲気を掴んでくれたらそれでいい」
「分かりました!」
「…あと、団長が暴走したら止めてくれ」
「え?」
「頼んだっ!!」
そう言った瞬間、扉は閉じられた。
鍵までかけられた。言い逃げである。
「ちょっとお!ケイトさん!?嫌な予感するんやけど!?……ねえ!うんとかすんとか言ってくださいよ!!」
レオは扉を叩いて叫ぶが、「すん」としか返ってこなかった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
結局、嫌な予感はあったものの仕事なので、リアンについて行った。
すると街を抜け、何やら恐ろしげな森の前まで来た。
「今から盗賊騒ぎを調査しに『迷いの森』に入るけど、絶対私から離れないでね!帰れなくなるから、私が」
「そっちが!?!?」
リアンは胸元から羅針盤を取り出し、「私使えないんだよね」と笑いながらレオに渡す。
普通の羅針盤で、東西南北を示している。
レオの世界と全く同じだ。
「どこにいるか分からなくなっても、北に進めば帰れるから!よろしくね!」
「ごくり、いきなり責任重大やな…」
「じゃあしゅっぱーつ!!!」
リアンはいきなり走って森の中へ入ってしまう。
「ええ!?ちょっと待ってや!!」
慌ててレオも森の中へ入る。
中は薄暗く、四方八方が木で塞がれており、不気味な雰囲気が漂う。
どこからか囁くような声が聞こえ、誰かといないと自分を見失いそうである。
その時、少し離れた位置から声が聞こえた。
「や、やめて!!白竜団呼ぶわよ!?」
レオとリアンは顔を見合わせる。
そして声のした方へ走り出す。
木々を掻き分けていくと、そこにはローブを羽織った少女と、ギャングらが言い争っていた。
「だから、ぼくが可愛いからって争うのはやめて!サインは順番に書いてあげるからっ」
「いやだから違うんスけど……」
なにやら困ってるのはギャングの方のようだ。
レオとリアンは間に割って入る。
「はーい、白竜団だよ!どうしたの?」
その時、少女のローブの頭巾がはらりと落ちた。
少女はピンクの髪に、可愛らしい容姿をしている。
「ぼくが可愛いあまりこの人達、誰が先にサインを貰うかで争い始めてしまったの…」
「いやだから違うッス!」
「はあ、可愛いって罪だね…」
少女は鏡を出して眺め始めた。
ギャング3人組は疲弊している。
「オレら、羅針盤を無くしちまったんスよ。
帰れないからこの子に羅針盤持ってないか聞いただけなんスよ!」
「どうしてこんな事になっちまったんだ…」
「早く“キング”に届けにいかなきゃいけねえのによ」
3人の会話を聞いて、レオは「この人達が盗賊なのでは」と疑いの目を向ける。
「届けに」とは、盗んだ金品なのではないかと思ったのだ。
何より見た目がそれっぽい。
しかしリアンは全く疑っていないようで、
「それは大変だったね…!えっと、私たち今あっちから真っ直ぐきたから、あっちに進んだら森を抜けられるはずだよ!!」
と、親切に帰り道を教えてしまう。
レオは慌ててリアンの袖を引っ張り、耳元で小声になって警告する。
「あの人ら怪しいって!リアンちゃんの言ってた盗賊騒ぎってあの人らちゃうん!?」
「え~?そうかなぁ」
リアンはしばらく首を捻ったあと、ギャングらに近寄り、
「ねえ、君たち盗賊?」
とド直球に質問する。
「うおおおおおい!?!?!?」
レオは驚きを禁じ得ない。
慌ててリアンの口を塞ぐが意味は無い。
ギャング3人組も驚く。
「いやまさか違うッスよ!!」
「そんなことするわけねぇだろ!!」
「そうだそうだ!そんな最低なことするわけない!」
口を揃えて猛反発する。
白竜団に疑われては、焦るのは当たり前だ。
しかも直接聞かれては余計にそうだ。
「だよね!疑うようなこと言ってごめん!」
リアンは申し訳なさそうにそう応えた。
ギャング3人組は逆に驚いている。
「い、いや、疑われるような格好のオレらも悪いッス」
「謝るのはこっちの方だな」
「信じてもらえて嬉しいぜ」
「めっちゃいい人たちやん!!!疑った自分が恥ずかしい!!!」
その後、3人組はリアンに教えてもらった方向へ進むことにした。
レオ達に手を振る。
「この恩は必ず返すッス~!」
「ありがとな!」
「お仕事頑張れよな!!」
と行って薄暗い森の中へ消えてった。
「めっっちゃいい人やったわ…。仕事に“お”付けてたし…」
レオはぽつりと呟く。
人は見た目で判断してはいけないものである。
ギャングらと話していた間、頭巾の少女はずっと「可愛すぎる…♡」と言いながら鏡を見つめていた。
レオは口をへの字に結ぶ。
────この癖の強い人どうしたらええんや……
レオとリアンは「おーい」と話しかけるが、鏡に夢中で応えてくれない。
すると、痺れを切らしたリアンがグッと顔を近づけた。
「ねえ!君はここで何してるの?」
「・・・・きゃあああ!?!?」
少女はリアンの顔を見た瞬間に後ろへ飛び退き、尻もちをつく。
────何この子……可愛すぎる!?!?
少女は驚愕の表情でリアンを見る。
リアンはその反応にショックを受けた。
一方少女もショックを受けていた。
────嘘でしょ…。噂には聞いてたけど、“死神ちゃん”がこんなに可愛いなんて!
…もしかしてぼくより?い、いやいや!
あの子は美人系!やっぱりぼくが1番可愛いっ!
レオは少女の言動が理解できなかったが、とりあえず手を差し伸べる。
「大丈夫?」
「ええ、結局ぼくが1番可愛いって分かったよ」
「大丈夫じゃなさそうやな」
そして少女は「自分で立てるよ」とレオの手を払い、立ち上がる。
ショックを受けているリアンの代わりに、レオは少女に問う。
「あのさ、今俺たち最近ここに出るらしい盗賊について調べてんねんけど、なんか知ってる?」
「ぼくが可愛いってことしか知らない」
「(会話が成立せーへん!!!)」
レオは再び口をへの字に曲げる。
「ならいいわ。あんたはこの森から出れるん?大丈夫なん?」
「もちろん。ぼく、羅針盤いっぱい持ってるから」
少女は鏡を見ながら答える。
「……え?」
レオは少女を見る。
彼女は手鏡を下ろし、レオを冷ややかな目で見る。
「そんなことより、これって売ったらいくらになるのかな?」
彼女の手には、白竜団の紋章があった。
レオは自分の胸元を見る。
紋章が、無い。
「盗賊ってそっちなんかぁぁぁい!!!」
少女はローブをとる。
ひらりと布が舞い、彼女の容貌が明らかになる。
ゆるふわピンクのツインテールに、ピンクの瞳、可愛らしいロリータ系のワンピースを着ている。
「せいかーい!あなたたちが探してたのは、この可愛いぼ・く♡」
少女は身軽に跳ぶと、木の上に着地した。
2人を見下ろす。
「死神ちゃん、あなたが来るのを待ってたんだ」
「え?私を?」
「王女サマに伝言をお願いしたいの────ぼく達『六罪』が世界連合軍をぶっ潰すって♡」
少女は不敵な笑みを浮かべる。
「いて」
レオは頭に痛みを感じて目を覚ます。
昨日、寮の一室を選んで自分の部屋とした。
(20室ほど余っているのでリアンは2室使っている)
部屋に用意されていたベッドに倒れ込むと、さすがに疲れていたようですぐに眠れた。
そして今、何やら頭が痛い。
「いててて」
何か尖ったもので頭をつつかれ続ける。
「痛いって!!!」
レオは叫びにも似た声を発して起き上がる。
見ると、そこにはフクロウがいた。
「うお!?」
「ホホウ。ホウ」
どうやら彼(彼女?)がレオをつついていたようだ。
何かを伝えようとしている。
が、もちろんレオには伝わらない。
その時、誰かが部屋の扉を叩いた。
ミラだった。
「起きたか。っていうか起きてねぇと困る」
フクロウはその姿を見た瞬間、ミラの方へ飛んでいく。
そして肩に乗った。
「おはようミラ!そのフクロウってミラのペットなん?」
「いや、ペットじゃない。図書館の仕事仲間だ」
「そうなんや!フクロウさんよろしくな~」
「それより、お前さっさと馬鹿を仕事場に連れてってくれ」
「あ、そっか。俺今日から働くんか」
レオは身体を起こし、階段を下りて洗面所へ向かう。
顔を洗おうと鏡を見ると、異世界に来て1番驚くべき事が起こった。
「な!なんやこれ!!!!」
「(コイツ朝からうるせえ!!)」
ミラが顔をしかめて耳を塞ぐが、レオは気にしない。
そこには平凡な黒い髪に────青い眼が映っていた。
「な、な!?目が青い!!!!!!」
何度見ても、青い。
ミラは呆れた様子でレオを見る。
「何言ってんだお前。元々青だったじゃねーか」
「…え?いやいや、普通に黒やで」
「私と会った時からずーっと青だよ!」
2人の間からリアンがひょっこり顔を出す。
「…この時間に起きてくるの珍しいな」
「2人ともおはよ~!レオの声で起きちゃった!」
リアンは何が面白いのか笑っている。
そんなことより、彼女の言う事が確かなら、レオの目は異世界に来た時点で青だったのだろう。
レオは鏡に映る青眼に手を当てる。
「そ、そんな────
「レオ…よくわかんないけど、気にしない方が良いよ…?」
レオが落ち込んでいるのかと、リアンは心配そうに覗き込む。
────かっこいいやん!!!」
レオは目を輝かせている。まっっったく落ち込んではいないし、不気味にも思っていないようだ。
ミラは「元気そうで何よりだ」と面倒くさそうに呟く。
とか何とか、朝っぱらから元気なレオ。
ケイトから貰った軍服に袖を通し、白竜の紋章がきちんと付いていることを確認する。
そして昨夜リアンからもらったグローブを手につける。
指が出るタイプなので、ずっとつけていても支障が無い。
その時、リアンがノック無しに部屋に入ってきた。
「レオーー!!準備できた?」
「おっけーやで!」
2人は仲良く寮を出発した。
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そして、2人はケイトの書記室へやってきた。
リアンは再びノック無しにドアを勢いよく開ける。
「ケイトおっはよーー!!」
「ノックしろって何度も何度も……って、え?」
ケイトは時計を見る。
「起きれたのか!?」
「皆そこに驚くんや…」
そう、リアンはいつも昼から出勤するのだ。
羨ましい限りである。
「ま、私が本気を出せば余裕だよ」
リアンは格好つけて髪をはらう。
「それでケイト、今日の仕事は?」
「今日のって、団長…昨日の仕事終わってないだろ?」
「あー、あっ!森に行く前にレオに会ったから昨日何にもしてないや。あはは」
「……………“働かざる者食うべからず”」
ケイトがボソリと呟いたその言葉に、リアンは過剰に反応する。
そして、急に真顔になる。
「仕事、して来るよ」
シリアスな顔つきでそう言うと、レオの袖を引っ張って出ていこうとする。
部屋を出る瞬間、ケイトはレオを引き止めた。
「まあ、気楽にな。初めはこの団の雰囲気を掴んでくれたらそれでいい」
「分かりました!」
「…あと、団長が暴走したら止めてくれ」
「え?」
「頼んだっ!!」
そう言った瞬間、扉は閉じられた。
鍵までかけられた。言い逃げである。
「ちょっとお!ケイトさん!?嫌な予感するんやけど!?……ねえ!うんとかすんとか言ってくださいよ!!」
レオは扉を叩いて叫ぶが、「すん」としか返ってこなかった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
結局、嫌な予感はあったものの仕事なので、リアンについて行った。
すると街を抜け、何やら恐ろしげな森の前まで来た。
「今から盗賊騒ぎを調査しに『迷いの森』に入るけど、絶対私から離れないでね!帰れなくなるから、私が」
「そっちが!?!?」
リアンは胸元から羅針盤を取り出し、「私使えないんだよね」と笑いながらレオに渡す。
普通の羅針盤で、東西南北を示している。
レオの世界と全く同じだ。
「どこにいるか分からなくなっても、北に進めば帰れるから!よろしくね!」
「ごくり、いきなり責任重大やな…」
「じゃあしゅっぱーつ!!!」
リアンはいきなり走って森の中へ入ってしまう。
「ええ!?ちょっと待ってや!!」
慌ててレオも森の中へ入る。
中は薄暗く、四方八方が木で塞がれており、不気味な雰囲気が漂う。
どこからか囁くような声が聞こえ、誰かといないと自分を見失いそうである。
その時、少し離れた位置から声が聞こえた。
「や、やめて!!白竜団呼ぶわよ!?」
レオとリアンは顔を見合わせる。
そして声のした方へ走り出す。
木々を掻き分けていくと、そこにはローブを羽織った少女と、ギャングらが言い争っていた。
「だから、ぼくが可愛いからって争うのはやめて!サインは順番に書いてあげるからっ」
「いやだから違うんスけど……」
なにやら困ってるのはギャングの方のようだ。
レオとリアンは間に割って入る。
「はーい、白竜団だよ!どうしたの?」
その時、少女のローブの頭巾がはらりと落ちた。
少女はピンクの髪に、可愛らしい容姿をしている。
「ぼくが可愛いあまりこの人達、誰が先にサインを貰うかで争い始めてしまったの…」
「いやだから違うッス!」
「はあ、可愛いって罪だね…」
少女は鏡を出して眺め始めた。
ギャング3人組は疲弊している。
「オレら、羅針盤を無くしちまったんスよ。
帰れないからこの子に羅針盤持ってないか聞いただけなんスよ!」
「どうしてこんな事になっちまったんだ…」
「早く“キング”に届けにいかなきゃいけねえのによ」
3人の会話を聞いて、レオは「この人達が盗賊なのでは」と疑いの目を向ける。
「届けに」とは、盗んだ金品なのではないかと思ったのだ。
何より見た目がそれっぽい。
しかしリアンは全く疑っていないようで、
「それは大変だったね…!えっと、私たち今あっちから真っ直ぐきたから、あっちに進んだら森を抜けられるはずだよ!!」
と、親切に帰り道を教えてしまう。
レオは慌ててリアンの袖を引っ張り、耳元で小声になって警告する。
「あの人ら怪しいって!リアンちゃんの言ってた盗賊騒ぎってあの人らちゃうん!?」
「え~?そうかなぁ」
リアンはしばらく首を捻ったあと、ギャングらに近寄り、
「ねえ、君たち盗賊?」
とド直球に質問する。
「うおおおおおい!?!?!?」
レオは驚きを禁じ得ない。
慌ててリアンの口を塞ぐが意味は無い。
ギャング3人組も驚く。
「いやまさか違うッスよ!!」
「そんなことするわけねぇだろ!!」
「そうだそうだ!そんな最低なことするわけない!」
口を揃えて猛反発する。
白竜団に疑われては、焦るのは当たり前だ。
しかも直接聞かれては余計にそうだ。
「だよね!疑うようなこと言ってごめん!」
リアンは申し訳なさそうにそう応えた。
ギャング3人組は逆に驚いている。
「い、いや、疑われるような格好のオレらも悪いッス」
「謝るのはこっちの方だな」
「信じてもらえて嬉しいぜ」
「めっちゃいい人たちやん!!!疑った自分が恥ずかしい!!!」
その後、3人組はリアンに教えてもらった方向へ進むことにした。
レオ達に手を振る。
「この恩は必ず返すッス~!」
「ありがとな!」
「お仕事頑張れよな!!」
と行って薄暗い森の中へ消えてった。
「めっっちゃいい人やったわ…。仕事に“お”付けてたし…」
レオはぽつりと呟く。
人は見た目で判断してはいけないものである。
ギャングらと話していた間、頭巾の少女はずっと「可愛すぎる…♡」と言いながら鏡を見つめていた。
レオは口をへの字に結ぶ。
────この癖の強い人どうしたらええんや……
レオとリアンは「おーい」と話しかけるが、鏡に夢中で応えてくれない。
すると、痺れを切らしたリアンがグッと顔を近づけた。
「ねえ!君はここで何してるの?」
「・・・・きゃあああ!?!?」
少女はリアンの顔を見た瞬間に後ろへ飛び退き、尻もちをつく。
────何この子……可愛すぎる!?!?
少女は驚愕の表情でリアンを見る。
リアンはその反応にショックを受けた。
一方少女もショックを受けていた。
────嘘でしょ…。噂には聞いてたけど、“死神ちゃん”がこんなに可愛いなんて!
…もしかしてぼくより?い、いやいや!
あの子は美人系!やっぱりぼくが1番可愛いっ!
レオは少女の言動が理解できなかったが、とりあえず手を差し伸べる。
「大丈夫?」
「ええ、結局ぼくが1番可愛いって分かったよ」
「大丈夫じゃなさそうやな」
そして少女は「自分で立てるよ」とレオの手を払い、立ち上がる。
ショックを受けているリアンの代わりに、レオは少女に問う。
「あのさ、今俺たち最近ここに出るらしい盗賊について調べてんねんけど、なんか知ってる?」
「ぼくが可愛いってことしか知らない」
「(会話が成立せーへん!!!)」
レオは再び口をへの字に曲げる。
「ならいいわ。あんたはこの森から出れるん?大丈夫なん?」
「もちろん。ぼく、羅針盤いっぱい持ってるから」
少女は鏡を見ながら答える。
「……え?」
レオは少女を見る。
彼女は手鏡を下ろし、レオを冷ややかな目で見る。
「そんなことより、これって売ったらいくらになるのかな?」
彼女の手には、白竜団の紋章があった。
レオは自分の胸元を見る。
紋章が、無い。
「盗賊ってそっちなんかぁぁぁい!!!」
少女はローブをとる。
ひらりと布が舞い、彼女の容貌が明らかになる。
ゆるふわピンクのツインテールに、ピンクの瞳、可愛らしいロリータ系のワンピースを着ている。
「せいかーい!あなたたちが探してたのは、この可愛いぼ・く♡」
少女は身軽に跳ぶと、木の上に着地した。
2人を見下ろす。
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ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。
そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。
母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。
双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた──
前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
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