推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん

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8歳

21

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地面に縫い付けられてぐるぐると唸ってるソレ。
はぁ~。まさかの獣人。獣人奴隷か。本来なら奴隷市場で売られてるんだけど…。闇市か。いいじゃん。

《ねぇ。わんちゃん。取引しない?》

獣人語習っといてよかった。母様ありがとう。これから必要になるとか言ってるのを戯れ言とか言ってごめん。ほんとごめんなさい。

《なにをだ。》

《ここから助けてあげる。その代わり僕の屋敷で働いてよ。》

《肉壁か。そういう趣味か。》

《獣人そのものに興味があるの。ちょっと実験の手伝いしてくれればいいよ。嫌なことはさせないと約束しよう。》

《約束だぞ。人間。》

契約成立ね。
気分がいいなぁ。奴隷上がりだからお金もかかんないし。いいじゃん。いいじゃん。

「ふふ。わんちゃんがなんか言ってる。」

さてと。あとは人間との取引だ。


「取引しよう。コレ、僕に頂戴。くれるならここは引いてあげる。くれないなら解放して君ら殺してもらう。どう?」

「そりゃ売りもんだ!!!持ってくなら━━━━━━

パタタッと獣人の頬に血が飛んだ。
リーダーらしき人の隣にいた野蛮人可哀想。

ダメか。じゃあ1人目。
バレないようにしないとね。証拠隠滅~。


魔法で拘束した相手なら怖くない。だって僕より弱いもん。

ぎゃあぎゃあと足元で喚き始めた犯罪者集団。

「ねぇ取引しようよ。コレ頂戴。くれるならここは引いてあげる。くれないなら解放して君ら殺してもらう。どう?」

壊れたようにもう一度同じことを聞いてみる。ダメかな。

「雇い主に聞いて━━━━━━━

あーあ。また血が飛んだ。
次いこ、次。


「ねぇ取引しようよ。コレ頂戴。くれるならここは引いてあげる。くれないなら解放して君ら殺してもらう。どう?」

「ひぃっ。」

効果てきめんかな。もう一押し。



「取引しようよ。コレをくれるならここは引いてあげる。くれないなら皆殺し。どう?」

影魔法で地面に縫いつける力を増やした。同時に相手の震えが魔法を通して感じる。

「最後だよ。取引しよう。」そう伝えようとした時、獣人がでてきた部屋からまた光が差し込んできた。

よく見えないけど背筋がしっかりしてる。戦い慣れてるかも。厳しいな。


「かまわん。持って行ってくれ。」

は?
すっごく意外なこと言われた。
本気でいいのかな。

「…ありがとう。代わりにここのこと黙っといてあげるね。」

「助かる。」

顔は見えない。でも…あれ誰だ?聞いたことのある声だった。貴族だろうけど。貴族はたくさん会ってるからなぁ。わかんない。

自分の記憶力のなさに泣きそうだよ。


影魔法でテオを守るように囲んで浮かせる。
獣人は足に影魔法を着けたまま引っ張る。怪我してないだろうし大丈夫でしょ。まぁしてたら薬草くらい出したげる。


えぇと。馬車はどこまで来たかなぁ。

探索魔法を出したら結構近くに来てた。向こうもこれが見えるから便利だよね。ほんと好きかって動いてくれちゃってさ。執事として心持ちが足りてないよ。全く。

ちょっと道端で待ってたらやっと来た馬車。
イライラするから八つ当たり気味で乗り込んでやる。

「おーそーい!!」

テオ様を魔法で優しく馬車の中に入れる。テオ様は一番奥に入って少し震えてた。可愛い。怖かったよね。僕も怖かった。

でもテオ様が無事でよかった。

馬車の入口でウロウロと視線を泳がしてる。入ればいいのに。

《馬車の乗り方知らないの?》

《乗っていいのか?》

《いいよ。早くして。さっさと帰りたいの。》

獣人はさっき戦ってた時とは大違いにゆっくりゆっくりと足場を確かめるように入ってきた。獣人なんだからもっと早く動けるだろうに。



夜の街は静かだ。特に貴族街なんかは早々に閉まる。開いてるのは演劇場や合法のオークション場とか。
あとはパーティやってる貴族家とかもあるね。それでも貴族の屋敷は広いから騒音とかはない。

今日は疲れたかも。

そっと目を閉じる。家に着いたらすぐに寝よう。明日も早い。お腹は…空いてない。

獣人はどうしようか。

明日アルと考えようか。どっちかと言えば執事兼護衛として育てたい。

数年後訪れるであろう物語のきっかけになる少年。
主人公の初恋の相手であり、攻略相手に殺されるであろう僕らの弟。ネヴィルという少年のために。

その少年が殺されなければ物語は始まらない。何がなんでも守りたいところだね。















馬車から降りたテオ様は目頭に皺を寄せて下を向いてる。なんか今日一日でわかった気がする。テオ様、下向いてる時は不機嫌だ。かっわいいね。


「獣人は嫌い?」

「平民以下の奴隷ではないですか。いくら所有物と認識されようとも同じ家で暮らすなど怖気が走ります。」

もう差別意識はあるんだ。
やっぱりきっかけは公爵家ではなく男爵家。
幼い頃からの常識というのは変えられないことが多いから諦めるしかないのかなぁ。この帝国の常識として異種族は受け入れてないからね。
人間以外はゴミ以下。これが人間国家の常識。
母様はこれも変えようとしてらした。まぁ死んだからどうにもならないけど。
僕は日本という国で過ごしてた分、あまり受けいれられてない。獣人は力が人間を超えてくる。

純粋にさ、仲間に引き入れたいじゃない?
もし獣人国家とやり合ったとして僕は獣人を大切にしてましたよ。って言えるもん。
……していいなら解剖もしたいけど。

「ふぅん。でも強いよ。元の実力が違うからね。損は無い。」

「それより強くなれば俺を重畳してくれますか?」

「強くなくても僕はテオを見てるよ。」

「…はい。」

??
なにを確かめたかったんだろう。


それにしてもテオ様、獣人のことずっとそれ・・呼びだったなぁ。


そのままテオ様は一礼して僕に背を向けた。部屋に戻るんだろうけど…小さい背中だなぁ。

まぁ可愛いからいいよね。
テオ様ならなんでも許されるってね~。







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