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8歳
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しおりを挟むツカツカと自信ありげというか目の前で親の仇を蹴り飛ばしているんじゃないかと思うほどの勢いで階段をかけ登ってくる。
待ってたらぱっぱとドレスを確認して僕を睨みつける。怖いなぁ。
「いいわよ。」
「微笑んでくださいね。」
「わかってるわよ。やってやるわ。」
「口調も気をつけてください。」
キッとただでさえ恐ろしい目なのにそれで睨まれたら怖いよ。
まぁこれ以上言うのは野暮か。心配だけど…はぁ。心配だ。
扉の前の近衛兵に頷く。
『シルヴェスター公爵家一家ご入場です』
眩い程の光が夜を包む。これ全部魔法石なんだよ。お金どこから来てんだろ。いいなぁ。
ばっと視線がこちらを向く。大丈夫。僕はクラウス。ゲームのクラウスです。
いつものように微笑みを貼り付けてフロアへ降りる階段を使う。ポイントは足元を見ずにまっすぐ前を向くこと。何度落ちても練習したからお手の物だよ。母様、容赦ないからね。
今、あの痛みがないと自分の足でこの場に立てなかったかもしれない。
「お久しぶりですな。シルヴェスター公子様。」
降りきった瞬間に話しかけてきたのは国の宰相してる伯爵様。父様が仕事しないせいで押し付けられた人だ。可哀想に。
息子の僕も労ってあげないとね。まぁ権力欲の塊だから好きじゃないけど。人としては真っ当な欲だと思う。真っ当な人間だよね。
「お久しぶりです。伯爵。」
「今回の大会は見られませんでしたが最年少での優勝、おめでとうございます。」
「いえ、こういう機会を授けてくださった方々のおかげですよ。」
お互いニコニコと挨拶をする。向こうもよく思ってないんだろうなぁ。
けれど僕の後ろにいる義母にチラチラと目がいってる。いい女でしょ。立ち振る舞いを覚えさせたからね。怒鳴ったりヒスったりしなければいい女だ。
でも父様の奥さんだよ。手は出さないで欲しい。
父様もロクデナシだけど顔はいいから伯爵は選ばれないだろうけど。
義母に視線でどっか行けと合図する。舌打ちしそうな見下げた目で壁に向かって歩き始める。
ほんと好きな人は好きそうな顔だよね。
母様は見た目だけは優しそうだったから。侯爵家ならではの薄緑の髪と目。人前ではいつも微笑んでてタレ目でただただ優しそうな人。内面はバリキャリで怖かったけど。
義母は内面も外面も怖い。こういうのが父様の性癖なのかな。まぁテオ様が推しな僕が人のこと言えないけど。
「シルヴェスター公子、おめでとうございます。」
「ヴィンディッシュ侯爵、ありがとうございます。」
表舞台だ。いつものように馴れ馴れしく接する訳にもいかない。
この人が推薦してくれたんだよね。恩を渡すために皇帝陛下にも推薦してもらったけどしなくても良かったかな。
「この度は大会への推薦ありがとうございます。」
伯父上にはまずお礼。あなたのおかげで優勝出来ましたよ~ってお礼だ。まぁ僕の方が身分上だから頭は下げないけど。
少し杖をグネグネと伯爵が動かした。侯爵は微笑んだまま固まった。こう見てると余所行きの母親と同じ顔の作りしてんな。
なーんか隠してる?やっぱり政の近くに人を置かないとダメか。もう少し僕が歳とってたらなぁ。
伯爵がチラッと侯爵を見て右の口角を釣り上げた。こういうの見たらさぁ、侯爵の完璧な仮面纏ってる方がすげぇなって思うよ。どんだけいま頭フル回転させてんだろ。
()「公子、侯爵は反対しておりました。誰かとお間違えではないですか?」
だろうね。今の反応見たらわかる。伯父上は初めっから僕の味方をする気はなかったんだね。
貴族が貴族との約束を破るのはどれだけ重いのか知ってるだろうに。
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