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8歳
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しおりを挟む「いらっしゃい。よく来たね、お疲れだろうし荷物を置いてゆっくりしてね。」
何度同じ言葉を言っただろう。
使わなくなった別邸を綺麗にさせて全員そこに押しこめる。悪いけど他人を屋敷に泊まらせたくないもん。
今日の主人公のテオ様も一緒に並んでご挨拶してれるからやってられる。本当にめんどくさい。お出迎えなんてテオ様にだけでいいと思うんだけど?
「先程の方で最後ですね。」
「そうだね。少しはゆっくりできるよ。さっきの子は1番遠いところから来てくれてるからギリギリになったのかもね。」
「兄上が慕われてる証ですね。」
本当にこの子は口がうまい。可愛いし口が上手いし。悪いところなんてない。
「皆テオを祝いに来てるんだよ。さて、僕らもゆっくりしようか。」
こくんと頷いたテオ様の手を引いてサロンへと向かう。お菓子と茶葉と魔法のポットを用意しといてって言っといたからテオ様好みのものがあるはず。
でも今日はテオ様の好きなご飯全部出るからあまり食べさせないようにいっぱいお話しなきゃね。
▽
▽
サロンで色々テオ様と今日の流れを確認しながらテオ様を堪能できた。テオ様に面倒なことなんてさせられないから本当に簡単なことしか頼んでない。
身内でのパーティだから大層なことはしない。プレゼントだってもうテオ様の部屋にあるからね。
義母様まで珍しく祝ってくれてる。父様?いるわけないじゃん。相変わらず当主の席は空いたまま。だから僕が今回は代わりを務めてる。本当なら義母がやるはずなのに何もしないどころか部屋から出てこないからね。この家の大人たちはろくでもない。
息子のお祝いくらいしてあげなよ。たった1人の母親なんだから。
…いや。僕がいない所でプレゼント渡してたりするのかな。義母から送られてくる買ったものの明細書からはそのプレゼントが読み取れなかったけれど。
甘いかぼちゃのスープ。
香辛料を染み込ませて焼いたチキン。
この2つはことさらテオ様が好きなものらしい。本人の口から出たのがこれだからね。かぼちゃのスープなんて素朴で可愛い。よく庶民の間でも食されるものらしいけど男爵家での思い出でもあるのかな。
それに最後のデザートは僕たちの力作。
チョコタルトだよ。
僕はタルトの縁がしとしとのものが好きなんだけどテオ様はパリパリしてるクッキーが好きだから今回は固めのタルト生地。
でも中身は生クリームも加えた柔らかめのチョコレート。
気に入ってくれるかな。
「これは?」
「はじめて見るデザートですな。」
「黒いぞ。クラウス様、これは食べられるのですか?」
みんな失礼すぎじゃない?僕らが力を入れて作ったんだよ。黒いのは…ほらシルヴェスターだからってことで許してよ。さすがになんでチョコレートがなんで黒いのかなんてわかんない。
僕が1番初めに口をつける。その次にテオ様。
まぁ妥当だね。僕らがこの場で1番偉いもん。義母は絶対に1番に口を付けようとしないだろうし。
テオ様がほんの少しだけを口に入れて目を見開いた。
「兄上、とても美味しいです。」
「良かった。結構頑張ったんだよ。」
そりゃそうでしょ。生半可なものをテオ様にあげるわけがない。頬を赤くさせて早くも二口目をいくテオ様ほんと可愛い。え~。頑張ったかいがあった。正にプライスレス。
「このケーキを売り物にしようと思うから色んな意見を聞きたい。批評も受け付けるから聞かせて欲しいな。」
そういうと次々に少量を口に運んでいく。
僕が食べたのにいらないなんて非常識な人はいないらしい。良かった。
でもやっぱり見た目が悪いのかな。食べるまでに時間がかかりすぎてる。今まで黒い食べ物なんてないもんね。どうやって受け入れて貰うかが鍵かもしれない。
貴族の女性達に受け入れられれば社交界で広まると思う…。
やっぱり皇后陛下を使うしかないのかな。あまり頼りたくないけれど。
そこはテオ様に相談するべきか。
…いや待つべきかな。テオ様に気づいて欲しいところだ。
かと言って無視は可哀想だから、ここで僕が問題提示してあげればいいのかな。
「1番の問題は見た目かな。」
「ですが、この菓子ということで定着すればコレにしかない強みになりますな。」
「味はとてつもなく美味い。食べてくれさえすればすぐに受け入れられるだろうな。」
「金箔でもまぶす?」
「黒に金とはクラウス様を表したような菓子ですな。」
「これの責任者はテオにする予定だから赤がいいね。チェリーとかもありかな。」
「…クラウス様持ちでは?」
「土地と人、道具は準備してる。でも残りの作業はテオに任せるよ。そこでさ、この中にテオの秘書になりたい子いない?」
様子を伺うか目をそらすか。そんなに嫌かな?
僕からしたらテオ様の近くにいつもいられるなんて幸せなんだけど。変わって欲しいくらい。
でもテオ様を裕福に幸せにするためには僕がテオ様の秘書になるわけにも…はぁ。人生ままならないね。
あぁそれとだ。
「テオの後には僕の秘書と義母様の秘書も1人づつ欲しい。合計3人をこの中から引き抜きたいの。勿論、領主代理の地位にいる子もいいよ。次の代理を次代に任せられるならね。」
はぁ。うん。お通夜みたいにシーンとなる。
まぁそうだよね。出世かと思って来てみれば1枠以外は出世コースから離れちゃう。このまま領主代理になった方がいいよね。分かる。分かるけどその分、こっちでも出世ルートは用意してあげるのに。
宮廷官僚くらいならできるよ。あんまりルディにあげたくないけど。
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