推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん

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8歳

100 番外編《風呂場作成》

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「で、できた!!!」

やっと完成した魔力の固定化。
まだまだ僕が魔力の補充をしないと持たないけどそれでも月に一回の魔力補充で事足りるようになった。空間魔法の中身は水も火も生活魔法も僕の闇魔法で充填できる。
外ではこれは使えないからこの空間だけなんだけど。

試作として実際に作るお風呂場の模型をそのまま忠実に再現したものが魔力が途切れることなく動いてる。


「出来ましたね!クラウス様!!!」
「やっと…。」

数週間前から山場だと北から来てくれたり店を休んで集まってくれた僕の可愛い錬金術師たちは僕の声に安心したのかそのままぶっ倒れた。

「アルフレート!!!」

「こちらに。」

「建物の準備は?」

「今週中には終わる予定です。」

前々からお金が無いなりにも作り始めといてよかった。早く魔法陣を埋め込みたい。
寝ないと…。寝ないといけないのに…眠いのに…興奮しすぎて眠れない。

何しよう。子の状態で領主としての仕事をしてもきっとミスが出る。

そうだ。テオ様。テオ様に会いに行こう!

「テオは?」

「今は皇宮です。」

「じゃあ魔物狩りに行く。」

「危険です。」

うるさい。この調子じゃ眠れない。魔法撃ちまくって興奮収めないとマジで眠れない。

「テオ様を呼び戻しますから静かにしていて下さい。」

うーるーさーい。
アルの魔力が僕の部屋の前の廊下から消えたのを確認して庭に出る。昔使ってた建物があったよね。自分で結界を張れば使えるはず。



部屋に着いた僕は適当に結界を張って美しさも魔力効率も無視してとにかく魔力を魔法として放ちまくる。
何が嫌とか腹立つって訳じゃないけどなにもかも忘れたい。無視したい。眠りたい。

そのために魔力なんだか魔法なんだかよくわかんないものを放つ。少しは落ち着くかと思ったけど無理だな。むしろ自分の魔力が濃すぎて酔いそう。

今回ばかりは誰もいない。そう結界も張ったし誰にも教えてないから無様でも床に横たわって魔力を出す。疲れたら眠れるかな。眠れたらいいな。


※※※※※※※※※※※※※※

《テオside》

ルディ様の一撃を凌いで次の攻撃に備える。備えた意味もなく木刀で顔面殴られたが。

…一撃を凌げるだけでも成長した…と思う。
まだまだ兄上に報告はできないが。

最近は兄上も魔獣相手に手応えが無くなってきたのかあまり訓練に出なくなった。それに月1以上の頻度でルディ様と魔法も剣術も組み合わせた手合わせしてる。

見学させてもらっているがついていける気がしない。
ルディ様は今も俺相手に手加減してるんだろう。

「2撃目にも反応できてた。強くなったな。」

「まだまだです。」

手を伸ばしてくれたルディ様の手を取って立ち上がる。それと一緒に刻魔法で治してくれる。
早く強くならないと。兄上だけに危険なことを背負わせてしまう。

「シルヴェスター公子様。至急戻ってきて欲しいと伝言を預かりました。」

欲しい・・・?兄上からではないのか?
兄上に何かあったとかか?

ルディ様が眉をひそめて低い声で俺を見て告げる。

「…テオ、今日は帰れ。」

「は、はい。殿下、先生、失礼致します。」

持ってきたものなんて愛用の木刀と杖くらいだ。手に引っ掴んで一礼して待ってくれていたシルヴェスターの馬車に乗る。 

兄上に何かあったのだろうか。最近は酷いクマを作って錬金術師達と部屋にひきこもってらしたが……。
兄上のことを思うと気が気ではない。

これだからああいう身分の低い奴らと仲良くするのはやめた方がいいと言ったんだ。なのに兄上は「僕も錬金術師だから。」などと…。
兄上は錬金術師である前に貴族であるのに何も分かっていない。血筋がどれだけ大切か。才能だって決めるのは血筋。権力も血筋。逆に血筋があってできないことなんてないのに。

馬車から降りれば珍しくアルフレートが待っていてくれた。アルフレートは兄上付きだから兄上がいなければ俺の前にわざわざ顔を出してこない。
やっぱり兄上関係だ。ついに倒れられたのだろうか。

「アルフレート、兄上はどちらに?」

「部屋におられるかと。仕事もひと段落したのですが興奮冷めやらぬ様子でございまして、お休みになられません。手をお貸しくださいませんか?」

「できる限りの事はする。」

あまり期待されてもな。俺にできることなんて話をするのと聞くくらいだ。

パタパタと軽い足音がこちらに向かってくる。はしたない。でもこの屋敷でそんなマナー知らずはいないから急用か何か大変なことでも起きたのだろう。

アルフレートと音のする方を見ていたらスカートを少しあげて走ってくるメイド。
俺と目が合った瞬間に肩を揺らした。

「…テオ様、おかえりなさいませ。」

「なにがあった?」

ますます礼を深めてメイドが答える。

「お茶を準備して部屋に向かったところ、クラウス様が部屋におられませんでした。」

「あのお方は…本当に…。」

同意見だがお前が言うことではないだろう、アルフレート。

かと言ってうだうだ悩んでいても仕方ないので魔力探知で兄上を探す。
アルフレートが玄関にいたのなら敷地内にいるはずだ。空間魔法で転移されていては終わりだがそこまでする必要も無いだろう。

ルディ様と手合わせすることで覚えた魔力探知。逆にこれを覚えるまではボコボコにされてた。師範よりも容赦なく殴ってくるし魔法を打ち込んでくるし誰もいないところでどれだけ泣いたか分からない。

兄上が行くのを渋るのもわかる。
兄上が嫌だったのはルディ様よりも師範だったらしいが。


…見つけた。
結界が張られているのか薄い魔力だが広く薄くそこに停滞してる。


「向こうに何かあるのか?兄上の魔力が向こうにある。」

「先代まで使われていた訓練所があります。」

ならそこだな。
とは言っても歩けば遠いと感じる距離。魔法を使うか。馬車をこのために動かすのも…いや。兄上が疲れているかもしれない。それなら馬車で行くか。

「馬車で行く。」

「かしこまりました。」

アルフレートは外から風魔法を使って付いてきてくれる。
風魔法は知れば知るほど便利だと思う。特に弓矢などの武器を使う場合は。これは師範と戦ってよくわかった。
自分で動いたり速い魔法を打つには風と光魔法が1番手っ取り早い。これは師範とルディ様で学んだ。
まだまだ兄上と手合わせするには分不相応すぎる。

ルディ様は同じ師を仰いでるから戦えるだけで本来なら手合わせすらできないだろう。よく殿下も文句言わないと思う。俺ならふざけるなって無視してる。こんな弱いの相手にしても力にならないからな。


着いた建物は公爵家には似合わないみすぼらしいもの。

でも確かに兄上の魔力で結界がはられている。ドアノブに手を触れた瞬間バチッと弾かれた。
これ…どうすばいいんだろうか。

「誰?アル?」

「兄上、テオです。」

中からバシッと何かを叩くような音が聞こえたかと思うといつもの微笑みを貼り付けた兄上が顔を出した。

「少し離れててね。魔力酔いするかもだから。」

魔力酔い?確か洞窟や地下のような魔力の流れが悪いところで魔力が停滞しているところに入ることで起こったはず。こんな広々とした場所起こるだろうか。

でもまぁ兄上の言うことだから馬車の方に向かって下がる。兄上に間違いなんてないんだ。

俺が馬車のところにたどり着く前に後ろからブワッと体を包み込む魔力。どれだけあの人は魔法を撃ちまくったんだか。


しばらく魔力の塊となっている建物を見てたら中から魔力と同じような服装の兄上が出てきた。

「テオ!おかえり。早いね。」

「色々…ありまして。兄上はクマが凄いですが大丈夫ですか?眠れるまで話しますか?」

「テオが話してくれるの?嬉しいね。」

なんだかいつもよりふわふわしてる。頭があまり回ってないんだろうか。不眠は判断力を鈍らせるって自分で言っていたのに自分でするとは…。何をやっていたんだろう。俺も混ぜて欲しかった。

「兄上、なにを作られていたんですか?」

アルフレートが兄上に手を差し出して馬車に案内する。次に俺。

「魔法の固定化だよ。ある程度までできるようになったから錬金術師を北から呼び戻して作ってたの。」

「成果は出ましたか?」

「うん!模型の中じゃ僕の魔力でずっと稼働できるよ。本番になったらどこまでできるか分からないから早く試したいんだ。」

さすがだな。あれから数ヶ月しか経ってないのに全く新しいもの開発するとか尊敬してしまう。たとえそれが、下民が好む錬金術と言えどここまで全く新しいものを作るなんてさすが兄上だ。

「仕組みを説明していい?」

「はい。聞きたいです!」

正直兄上じゃなかったら帰ってる。

でも兄上と言えど興味なさすぎてとても楽しそうに話してる兄上を見てるのに眠くなってくる。いつもなら眠くすらならなくてどうにか理解しようとするのに今日ばかりは眠い…。

「それでね、魔法陣を魔力で埋め込めなかったから空間魔法の中に魔法陣を埋め込んだんだ。そのためにね、固定化する魔法陣を考えないといけなくてそれを思いついたのが数週間前なの。どんな魔法陣だと思う?こういうね、神の時代と呼ばれる時代の昔話から引っ張り出してきた文献をね……皇宮の……。」

全く意味がわからない。皇宮の図書館も使って凄い昔の文献を持ってきたってことだけしか分からない。

相変わらずよく分からないことしてるな。

ウトウトしながらも頭を降ったりしていたのに部屋についてアルフレートが入れてくれたお茶を飲んでからますます眠気が強まった。
なにか入れたのだろうか。兄上も段々と話す速度がゆっくりになってる。

「それでね…。ちょっとコレ見てよ。」

それでも止まらない兄上のお話。
隣に座ってよく分からない文字を見せてきてそれはそれは楽しそうに説明してくださる。

俺には全く分からない文字。これにも意味があるらしい。聖皇国にも似たような文字があるらしい。俺も勉強しているが分からん。まだまだ学ぶことがあるもんだ。

段々と兄上の顔が歪んでくる。
兄上の声は聞こえるのに何言ってるのか分からない。でも自分が頷いてるのはわかる。






眠気となんとか戦ってたが途中からの記憶がない。
途中てで眠ってしまったのだろうか。

次に目を覚ました時には俺の部屋のベットにいた。
でもなんだか腹の辺りが重たい。
何かわからない重いものをどかそうと触れたらあたたくて白い……?腕?

やっと目を開けて確認したら、隣にはすぅすぅと大人しい寝息を立てる兄上。

なんで?

でも酷いクマの兄上を起こす気にもならない。やっと眠れたんだろう。俺は結局兄上の話を聞きながら眠ってしまったのだろうか。兄上が起きたら謝らなければ。

本当に綺麗な顔をしているものだ。
長いまつ毛も頬にかかってる黒い髪も兄上の白い肌を強調してる。同じ父親だとは思えないくらい印象が違う。パーツパーツは似てると兄上とルディ様のお墨付きなんだが似てないと思う。

たまにニコニコしすぎて頬が釣らないのかと心配になるのに。やっぱり眠る時は笑わないんだな。

今日くらいはいいだろうか。

兄上の顔を見ながらもう一度眠ろう。それで兄上に起こしてもらおう。目を閉じて惰眠を貪ってやる。本当ならしないけど兄上がいるなら…今日だけ。今日だけだ。














「ふふ。可愛い。」

テオ様も二度寝するんだ。狸寝入りしたかいがあったなぁ。起きるまで眺めとこ。

それでテオ様に起こしてもらうんだ。











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