182 / 232
12歳《中等部》
78 ネヴィルside
しおりを挟む
やっとアイツらが屋敷から出ていって次の日。
俺の兄ちゃんと姉ちゃんがやってきた。いつも会うのは訓練場。一応、俺の部屋も許可は出されてるけど正直入れたくない。屋敷はどこからも視線を感じて見張られてるみたいだし。でも、姉ちゃんが「訓練場と言うには重厚な魔法が敷きつめられていて気持ち悪い。」って言ってた。訓練場も監視魔法とか使われてそうだ。
公爵家の馬車がゆっくりと訓練場の前で止まる。外では俺は公子として接さないとなに言われるかわかったもんじゃない。
本当は外で待ってることもいい顔されない。
兄ちゃん姉ちゃんもそれは分かってるから受け入れてくれてるけど、本当はもっと気安く昔みたいに遊びたい。
「こっちだ。」
兄ちゃんたちの冒険者パーティを案内するように俺から中に入る。
はぁ。長かった。
俺の従者のラージャもいるけどこいつはほとんど口出してこないから大丈夫。出ていけって言えば出てくし。ほんとうにクラウス兄様が選んだのか心配になるレベル。
一先ず準備してたお茶会用の場所に通して、ラージャに外に出てろって命令した。
ラージャが出ていったのを確認して兄ちゃんたちと視線を合わせる。
いつもより自分の体が硬くなってることは自覚してる。戦い慣れてる兄ちゃん達なら、俺の本気伝わったかもしれない。
珍しく甘い菓子に口をつけずに姉ちゃんが防音魔法と感知魔法を使った。盗聴はされてないらしい。
それを確認して兄ちゃんが頷いた。
「俺が逃げるのを手伝って欲しい。見つかったら全部俺のせいにして。金で雇われたっていっていいから。」
誰もが真面目な顔。
誰様神様私様の姉ちゃんだって珍しく唇を噛んで言い淀んでる。
暫くそんな感じでダメか…って思った時兄ちゃんがため息とともに少しだけ微笑んだ。
「いつだ?」
「やんの?」
驚いたような兄ちゃんの友達が言う。盗賊だったかな。目立たないけどカッコイイやつ。
「弟が頼んでるんだ。やるしかない。とはいえ…。シルヴェスターを敵に回すんだ。もう帝国には来られねぇな。」
「聖皇国もだね。あそこの第3皇子はネヴィルの1番目の兄と仲がいいと聞くよ。」
「なんもねぇけど故郷に戻るか?」
確かになんにもない。帝都だってここより酷いところはいっぱいある。俺たちは少し郊外だから自給自足できるけど帝都じゃ何も育たねぇよ。全部石畳だもん。少し路地に入ったところだって土も悪いし。
「東に行くのもいいかもね。」
魔獣が多いと聞くけどさすがにそこまで行けばあの兄たちだっておってこないだろう。
「悪巧みはいつだってネヴィルが1番バレなかったな。どうする?」
提案したのは俺だ。もちろん考えてるさ。
「3日後。夜じゃなくて昼。姉ちゃん、結界の解除できるって言ってたよな。綻びのある場所見つけてるからそこの結界解いてくれ。俺らが会った次の日に俺がそこから逃げる。あとは時間の問題だけど大丈夫そう?」
姉ちゃんは「できるに決まってるじゃない。」と鼻を鳴らす。やっぱり俺の姉は頼りになるな。
「くっそ高いけど幻術の魔法具を準備する。それでネヴィルの幻影を部屋に置いとこう。」
「あれは子供の遊び程度よ。バレるわ。」
「大丈夫。誰も俺に興味ねぇ。いるなって分かればなんも言わねぇよ。」
ほんとにそう。気にかけてるのなんてクラウスくらいだ。それだってなんのためか分かんねぇけど絶対に裏はある。そうじゃなきゃ優しくする意味がねぇもん。
今はアイツがいないから監視の役割は使用人たちになってる。けどあいつらは元から興味が無いから姿さえ見れれば話しかけてさえこない。
なら、低レベルの幻術で問題ないはずだ。だだ、孤児の俺からしたらめちゃくちゃ高価だし。そんなもん買うくらいなら飯を買う。兄ちゃんだってきっとそう。いくら強くなって稼いでも根元は変わんねぇもん。
俺のために大枚叩いてくれる兄ちゃんやその仲間達には頭が上がらない。
いつか絶対に返してみせる。
俺の兄ちゃんと姉ちゃんがやってきた。いつも会うのは訓練場。一応、俺の部屋も許可は出されてるけど正直入れたくない。屋敷はどこからも視線を感じて見張られてるみたいだし。でも、姉ちゃんが「訓練場と言うには重厚な魔法が敷きつめられていて気持ち悪い。」って言ってた。訓練場も監視魔法とか使われてそうだ。
公爵家の馬車がゆっくりと訓練場の前で止まる。外では俺は公子として接さないとなに言われるかわかったもんじゃない。
本当は外で待ってることもいい顔されない。
兄ちゃん姉ちゃんもそれは分かってるから受け入れてくれてるけど、本当はもっと気安く昔みたいに遊びたい。
「こっちだ。」
兄ちゃんたちの冒険者パーティを案内するように俺から中に入る。
はぁ。長かった。
俺の従者のラージャもいるけどこいつはほとんど口出してこないから大丈夫。出ていけって言えば出てくし。ほんとうにクラウス兄様が選んだのか心配になるレベル。
一先ず準備してたお茶会用の場所に通して、ラージャに外に出てろって命令した。
ラージャが出ていったのを確認して兄ちゃんたちと視線を合わせる。
いつもより自分の体が硬くなってることは自覚してる。戦い慣れてる兄ちゃん達なら、俺の本気伝わったかもしれない。
珍しく甘い菓子に口をつけずに姉ちゃんが防音魔法と感知魔法を使った。盗聴はされてないらしい。
それを確認して兄ちゃんが頷いた。
「俺が逃げるのを手伝って欲しい。見つかったら全部俺のせいにして。金で雇われたっていっていいから。」
誰もが真面目な顔。
誰様神様私様の姉ちゃんだって珍しく唇を噛んで言い淀んでる。
暫くそんな感じでダメか…って思った時兄ちゃんがため息とともに少しだけ微笑んだ。
「いつだ?」
「やんの?」
驚いたような兄ちゃんの友達が言う。盗賊だったかな。目立たないけどカッコイイやつ。
「弟が頼んでるんだ。やるしかない。とはいえ…。シルヴェスターを敵に回すんだ。もう帝国には来られねぇな。」
「聖皇国もだね。あそこの第3皇子はネヴィルの1番目の兄と仲がいいと聞くよ。」
「なんもねぇけど故郷に戻るか?」
確かになんにもない。帝都だってここより酷いところはいっぱいある。俺たちは少し郊外だから自給自足できるけど帝都じゃ何も育たねぇよ。全部石畳だもん。少し路地に入ったところだって土も悪いし。
「東に行くのもいいかもね。」
魔獣が多いと聞くけどさすがにそこまで行けばあの兄たちだっておってこないだろう。
「悪巧みはいつだってネヴィルが1番バレなかったな。どうする?」
提案したのは俺だ。もちろん考えてるさ。
「3日後。夜じゃなくて昼。姉ちゃん、結界の解除できるって言ってたよな。綻びのある場所見つけてるからそこの結界解いてくれ。俺らが会った次の日に俺がそこから逃げる。あとは時間の問題だけど大丈夫そう?」
姉ちゃんは「できるに決まってるじゃない。」と鼻を鳴らす。やっぱり俺の姉は頼りになるな。
「くっそ高いけど幻術の魔法具を準備する。それでネヴィルの幻影を部屋に置いとこう。」
「あれは子供の遊び程度よ。バレるわ。」
「大丈夫。誰も俺に興味ねぇ。いるなって分かればなんも言わねぇよ。」
ほんとにそう。気にかけてるのなんてクラウスくらいだ。それだってなんのためか分かんねぇけど絶対に裏はある。そうじゃなきゃ優しくする意味がねぇもん。
今はアイツがいないから監視の役割は使用人たちになってる。けどあいつらは元から興味が無いから姿さえ見れれば話しかけてさえこない。
なら、低レベルの幻術で問題ないはずだ。だだ、孤児の俺からしたらめちゃくちゃ高価だし。そんなもん買うくらいなら飯を買う。兄ちゃんだってきっとそう。いくら強くなって稼いでも根元は変わんねぇもん。
俺のために大枚叩いてくれる兄ちゃんやその仲間達には頭が上がらない。
いつか絶対に返してみせる。
505
あなたにおすすめの小説
俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜
小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」
魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で―――
義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
【完結】我が兄は生徒会長である!
tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。
名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。
そんな彼には「推し」がいる。
それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。
実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。
終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。
本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。
(番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)
流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。
時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!?
※表紙のイラストはたかだ。様
※エブリスタ、pixivにも掲載してます
◆4月19日18時から、この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」を1話ずつ公開予定です。そちらも気になったら覗いてみてください。
◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
メインキャラ達の様子がおかしい件について
白鳩 唯斗
BL
前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。
サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。
どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。
ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。
世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。
どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!
主人公が老若男女問わず好かれる話です。
登場キャラは全員闇を抱えています。
精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。
BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。
恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる