推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん

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12歳《中等部》

78 ネヴィルside

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やっとアイツらが屋敷から出ていって次の日。
俺の兄ちゃんと姉ちゃんがやってきた。いつも会うのは訓練場。一応、俺の部屋も許可は出されてるけど正直入れたくない。屋敷はどこからも視線を感じて見張られてるみたいだし。でも、姉ちゃんが「訓練場と言うには重厚な魔法が敷きつめられていて気持ち悪い。」って言ってた。訓練場も監視魔法とか使われてそうだ。


公爵家の馬車がゆっくりと訓練場の前で止まる。外では俺は公子として接さないとなに言われるかわかったもんじゃない。
本当は外で待ってることもいい顔されない。

兄ちゃん姉ちゃんもそれは分かってるから受け入れてくれてるけど、本当はもっと気安く昔みたいに遊びたい。


「こっちだ。」

兄ちゃんたちの冒険者パーティを案内するように俺から中に入る。
はぁ。長かった。

俺の従者のラージャもいるけどこいつはほとんど口出してこないから大丈夫。出ていけって言えば出てくし。ほんとうにクラウス兄様が選んだのか心配になるレベル。


一先ず準備してたお茶会用の場所に通して、ラージャに外に出てろって命令した。









ラージャが出ていったのを確認して兄ちゃんたちと視線を合わせる。
いつもより自分の体が硬くなってることは自覚してる。戦い慣れてる兄ちゃん達なら、俺の本気伝わったかもしれない。

珍しく甘い菓子に口をつけずに姉ちゃんが防音魔法と感知魔法を使った。盗聴はされてないらしい。

それを確認して兄ちゃんが頷いた。


「俺が逃げるのを手伝って欲しい。見つかったら全部俺のせいにして。金で雇われたっていっていいから。」

誰もが真面目な顔。
誰様神様私様の姉ちゃんだって珍しく唇を噛んで言い淀んでる。

暫くそんな感じでダメか…って思った時兄ちゃんがため息とともに少しだけ微笑んだ。

「いつだ?」

「やんの?」


驚いたような兄ちゃんの友達が言う。盗賊だったかな。目立たないけどカッコイイやつ。


「弟が頼んでるんだ。やるしかない。とはいえ…。シルヴェスターを敵に回すんだ。もう帝国には来られねぇな。」

「聖皇国もだね。あそこの第3皇子はネヴィルの1番目の兄と仲がいいと聞くよ。」

「なんもねぇけど故郷に戻るか?」

確かになんにもない。帝都だってここより酷いところはいっぱいある。俺たちは少し郊外だから自給自足できるけど帝都じゃ何も育たねぇよ。全部石畳だもん。少し路地に入ったところだって土も悪いし。


「東に行くのもいいかもね。」


魔獣が多いと聞くけどさすがにそこまで行けばあの兄たちだっておってこないだろう。


「悪巧みはいつだってネヴィルが1番バレなかったな。どうする?」

提案したのは俺だ。もちろん考えてるさ。


「3日後。夜じゃなくて昼。姉ちゃん、結界の解除できるって言ってたよな。綻びのある場所見つけてるからそこの結界解いてくれ。俺らが会った次の日に俺がそこから逃げる。あとは時間の問題だけど大丈夫そう?」

姉ちゃんは「できるに決まってるじゃない。」と鼻を鳴らす。やっぱり俺の姉は頼りになるな。


「くっそ高いけど幻術の魔法具を準備する。それでネヴィルの幻影を部屋に置いとこう。」

「あれは子供の遊び程度よ。バレるわ。」

「大丈夫。誰も俺に興味ねぇ。いるなって分かればなんも言わねぇよ。」

ほんとにそう。気にかけてるのなんてクラウスくらいだ。それだってなんのためか分かんねぇけど絶対に裏はある。そうじゃなきゃ優しくする意味がねぇもん。

今はアイツがいないから監視の役割は使用人たちになってる。けどあいつらは元から興味が無いから姿さえ見れれば話しかけてさえこない。

なら、低レベルの幻術で問題ないはずだ。だだ、孤児の俺からしたらめちゃくちゃ高価だし。そんなもん買うくらいなら飯を買う。兄ちゃんだってきっとそう。いくら強くなって稼いでも根元は変わんねぇもん。

俺のために大枚叩いてくれる兄ちゃんやその仲間達には頭が上がらない。

いつか絶対に返してみせる。










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