きらきらひかる

白川ゆい

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恋の季節です。

平和な日常が崩れる音がした。03

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 今日はチワワちゃんいるし屋上じゃなくて裏庭にしようか!という梨香の謎の提案によって俺たちは裏庭に来た。桜が咲く裏庭はこの季節生徒たちに人気で、俺たちの他にもたくさんのグループがいた。

「ここにしよ!」

 梨香が四人がけの、木でできたテーブルに座る。はっしーはもちろん梨香の隣に座り、俺は必然的にチワワの隣に座ることになった。
 ……ていうか隣に行くだけで嬉しそうな顔しないでくれる。それにいつの間にかチワワとかって呼んでる自分が一番嫌だ。

「二人はどういう知り合いなの?」

 梨香の質問にチワワが答える。ストーカーに追われていたところにたまたま俺が居合わせたこと。俺が彼女の手を引いて走ったこと。公園で、キスしたこと。……そして。

「私、好きになってしまいました」

 ブッとお茶を噴き出す俺と、楽しくて仕方ないって顔をするはっしーと梨香。ほんとにもう、勘弁してくれ。

「いいじゃんいいじゃん付き合っちゃえば!」
「あ、浩紀の連絡先教えてあげるよ」

 はっしーが俺の連絡先を表示したスマホをチワワに渡す。わー!とか言って喜んでるチワワにそれが渡るのを寸前で阻止した。

「そういうの勝手にやめてくれない」
「ダメですか?」

 目に涙を溜めてウルウルし出すチワワ。最低ー!と言って俺を責めるはっしーと梨香。めんどくさい……。はぁぁぁ、と大きなため息を吐いてスマホをチワワに渡した。やった!って大袈裟に喜んだチワワは自分のスマホに俺の連絡先を登録した。

「よかったね、チワワちゃん」
「はいっ!ありがとうございます!」
「あ、チワワちゃんの連絡先教えてー」
「はい、もちろん!」

 梨香と連絡先を交換し合うチワワを見てまたため息。この二人が友達になったらまためんどくさいことが起きる気がする。そんなことを考えているとチワワと目が合った。

「あ、先輩もしかして今私に見惚れてました?!」
「あんたがそう思うならそれでいんじゃない」

 いちいちツッコむのもめんどくさくなってきたよ……。

「今先輩って言ったってことはやっぱり1年生?」
「はい、この前入学したばかりです。入学したばかりで出会えるなんてこれはもうきっと運命です」

 もし本当に運命なら何とかしてねじ曲げたいな、その運命。

「浩紀が2年3組だってどうしてわかったの?」
「お昼休みになった瞬間1年生の教室から全部見て回ったんです。同じ高校だってことは朝にわかってましたから。2年生でよかったです、3年生だったら探すの大変だった」
「確かにね」

 そう言って笑いあう3人に唖然とする。え、おかしいと思わないの?俺らが教室出た時お昼休みに入ってまだ5分とかしか経ってなかったよ?5分で1年生10組と2年生3組まで見て回ったってこと?怖……。

「あっ、浩紀帰り送ってあげなよ」
「……はい?」

 またとんでもないことを言い出した梨香を唖然として見る。

「朝のストーカーいたら大変じゃない?」

 俺の隣に座ってるチワワこそストーカーになりかけてるけどね。俺のことはどうでもいいってか。

「い、いいんですか?!」
「……めんどくせ」

 梨香にペットボトルで頭を殴られた。地味に痛い。

「今日俺塾なんだけど」
「あ、終わってからでもいいです!」
「………」

 遠回しの拒否はチワワには通じなかった。

「浩紀、よろしくね!」

 何がよろしくだ、何が。チラリとチワワを見ると嬉しそうにニコニコしていた。……ほんと、めんどくせ……。
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