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安心
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何だか朝から体が怠い。ずっしりと重くて、そのくせ頭の中はふわふわしている。体調が悪いのは明白だけれど、バイトを休んで自分の部屋にいても1人だし寂しいだけなので、私は先生の家に来ていつも通り仕事をしていた。
「ひより、茶が欲しい」
「はい、ただいま」
縁側でシロを抱きながらぼんやりしていたら、先生が来た。隣に座るとシロはどこか嬉しそうに先生の膝に乗る。そして安心したように丸まって眠る。先生は「毛がチクチクすんだよ」なんてぶっきらぼうに言いながら、シロを撫でる手付きは優しい。微笑ましくてニヤニヤしてしまう。
「何だよ」
「ふふ、いいえ。お茶淹れてきますね」
「ああ、悪いな」
先生の膝の上のシロを一撫でして立ち上がる。でも脚に力が入らなくてフラフラと座り込んでしまった。
「ひより?」
先生が不思議そうにこっちを見る。私は笑って誤魔化して、もう一度立とうとする。……でも。
「ひより!」
ふにゃふにゃと脚の力が抜けた。そばにいた先生に寄りかかってしまう。
「っ、熱いぞお前!」
「ごめんなさいぃ……」
「早く言え!」
フワリと体が浮いた。先生に抱き上げられたことはすぐに分かった。目の前に先生の顔がある。こんな時ですらときめいてしまう自分が少し恥ずかしかった。
「ここで寝てろ。今何か温かいもの持ってくる」
先生が連れて来てくれたのは先生の寝室のベッドだった。いつも先生が寝ているベッド。
「悪いな。布団がここしかなくて。嫌ならすぐにでも買ってくる」
「嫌じゃない、です。先生に包まれてるみたいで安心する……」
「はっ?!……いや、まあいい。何か持ってくる……」
先生は何故かフラフラしながら部屋を出て行った。シロが心配そうに私の顔を少し眺めて、そして足元に行って丸くなる。シロがそばにいてくれる気なのだと安心して微笑んだ。
しばらくすると先生が戻ってきた。お盆にはマグカップが2つ。
「風邪の時に何がいいか分かんねぇからとりあえずココア持ってきた」
少し起き上がってココアを受け取る。先生みたいに温かくて安心する。
「先生、お仕事はいいんですか?」
「ああ、今日はもう一段落ついた。後で原田が原稿取りに来るから買い物頼むか。何が食える?」
「うーん、あんまり食欲ないです」
そういえば朝から何も食べていない。体調が悪いのは自分で分かっていたから、飲み物だけは飲むようにしていたけれど。
「気付かなくて悪かったな」
「いえ、気付かれないようにしてたし!」
「あ?何で」
「帰れって言われるのが嫌で……」
よく考えたら先生からしたら迷惑な話だ。風邪を移される可能性があるし、それに多少なりとも看病をしなくてはならない。
「……前から考えてたんだけどな」
「はい」
「客間が余ってるからお前の部屋にすればいい」
「えっ」
「あとひより用のベッドを買ってくる」
先生の言葉は本当に嬉しすぎるのだけれど。甘えてもいいのだろうか。だってベッドって高いし、部屋だって勝手に私の部屋にしちゃったらお客さん来た時困るだろうし……
「客は来ないから平気だ」
確かにお客さんは来たことないけど。ベッドは……
「気になるならたまにあの店のケーキ買ってきてくれ」
私が大好きなお店のケーキ。結局私が食べることになりそうだけど。
先生の中でそれはもう決定していて、その決定を覆す気はなさそうだった。
「いつでも泊まっていいからな」
先生は私を甘やかしすぎだと思う。
「ほら、もう寝ろ」
マグカップをベッドサイドの棚に置いて布団に潜る。先生の匂いがする。先生はサラッと頭を撫でてくれて、一瞬で離れたのが少し寂しかったけれど安心する。目を瞑るとすぐに眠りに入った。
「ひより、茶が欲しい」
「はい、ただいま」
縁側でシロを抱きながらぼんやりしていたら、先生が来た。隣に座るとシロはどこか嬉しそうに先生の膝に乗る。そして安心したように丸まって眠る。先生は「毛がチクチクすんだよ」なんてぶっきらぼうに言いながら、シロを撫でる手付きは優しい。微笑ましくてニヤニヤしてしまう。
「何だよ」
「ふふ、いいえ。お茶淹れてきますね」
「ああ、悪いな」
先生の膝の上のシロを一撫でして立ち上がる。でも脚に力が入らなくてフラフラと座り込んでしまった。
「ひより?」
先生が不思議そうにこっちを見る。私は笑って誤魔化して、もう一度立とうとする。……でも。
「ひより!」
ふにゃふにゃと脚の力が抜けた。そばにいた先生に寄りかかってしまう。
「っ、熱いぞお前!」
「ごめんなさいぃ……」
「早く言え!」
フワリと体が浮いた。先生に抱き上げられたことはすぐに分かった。目の前に先生の顔がある。こんな時ですらときめいてしまう自分が少し恥ずかしかった。
「ここで寝てろ。今何か温かいもの持ってくる」
先生が連れて来てくれたのは先生の寝室のベッドだった。いつも先生が寝ているベッド。
「悪いな。布団がここしかなくて。嫌ならすぐにでも買ってくる」
「嫌じゃない、です。先生に包まれてるみたいで安心する……」
「はっ?!……いや、まあいい。何か持ってくる……」
先生は何故かフラフラしながら部屋を出て行った。シロが心配そうに私の顔を少し眺めて、そして足元に行って丸くなる。シロがそばにいてくれる気なのだと安心して微笑んだ。
しばらくすると先生が戻ってきた。お盆にはマグカップが2つ。
「風邪の時に何がいいか分かんねぇからとりあえずココア持ってきた」
少し起き上がってココアを受け取る。先生みたいに温かくて安心する。
「先生、お仕事はいいんですか?」
「ああ、今日はもう一段落ついた。後で原田が原稿取りに来るから買い物頼むか。何が食える?」
「うーん、あんまり食欲ないです」
そういえば朝から何も食べていない。体調が悪いのは自分で分かっていたから、飲み物だけは飲むようにしていたけれど。
「気付かなくて悪かったな」
「いえ、気付かれないようにしてたし!」
「あ?何で」
「帰れって言われるのが嫌で……」
よく考えたら先生からしたら迷惑な話だ。風邪を移される可能性があるし、それに多少なりとも看病をしなくてはならない。
「……前から考えてたんだけどな」
「はい」
「客間が余ってるからお前の部屋にすればいい」
「えっ」
「あとひより用のベッドを買ってくる」
先生の言葉は本当に嬉しすぎるのだけれど。甘えてもいいのだろうか。だってベッドって高いし、部屋だって勝手に私の部屋にしちゃったらお客さん来た時困るだろうし……
「客は来ないから平気だ」
確かにお客さんは来たことないけど。ベッドは……
「気になるならたまにあの店のケーキ買ってきてくれ」
私が大好きなお店のケーキ。結局私が食べることになりそうだけど。
先生の中でそれはもう決定していて、その決定を覆す気はなさそうだった。
「いつでも泊まっていいからな」
先生は私を甘やかしすぎだと思う。
「ほら、もう寝ろ」
マグカップをベッドサイドの棚に置いて布団に潜る。先生の匂いがする。先生はサラッと頭を撫でてくれて、一瞬で離れたのが少し寂しかったけれど安心する。目を瞑るとすぐに眠りに入った。
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