黄昏一番星

更科二八

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3章 バーンデッドディザスター

503話 大晦日のやらかし

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今日は大晦日だ!
「俺は今日働かねえ!明日もだ!」

いつものように自然とアンジェリカが使っていた家に朝から集まりラグナが焼いていた魚を強奪しつつ今日の予定を決めようとしていたらなんと今日は大晦日だというのだ。
なんとまあいつの間にやらだ。
だから別にこの村とか他の地域出身の皆さんがどうだか知らんが俺の感覚では年末年始は休みなので休んでしまう事にした。

「いったいどうした?」
「ベリルは今日は他の誰かに遊んでもらえ」
「子供扱いするな!だいたい休んでいる暇があるのか?社とやらの建築は全然進んでないのだろ」
「いや決めた!休むったら休むの!」

案の定ベリルは小言を言ってくるが俺の意思は固く揺るがない。
これ以上他のやつからも意見される前にアンジェリカの家を飛び出した。
とはいえ相変わらずのノープランである。
どうしたもんか。
仕事っぽい事はしない事に決めたのだが、他に何かやりたいことがあるかというと特に思い付いてはいない。
強いて言えば年越しにまずい飯食うのは嫌だからちゃんとした飯を作りたいぐらいか。
俺って別に趣味とかあるわけではないし、暇な時にすることといえば修行か魔法研究。
休むと決めたのにそれもなんだかなー。せっかくの休み、ちゃんと有意義にしたい。

「やっぱ飯か」

このあいだ大量に食材を買い込んできて少しは食糧事情も改善したが、相変わらずメイン食材である魔物肉の外れ率が高く、せっかく買ってきた他の食材と合わせても台無しにしがちだ。
俺が買ってきた食材も限りがある。まずい肉を食いたくないがために消費されては無くなるのも早い。非常に良くない。
なのでまずは問題である魔物肉の状態を見るために村の北西にある倉庫へと向かった。

倉庫の前では村人数人が今日使う分の魔物の解体の作業をしていた。

「タイガさん?何か御用で?」
「朝の分のお肉無くなったからいまおろしてるところだべ。もうちょっと待っててくれー」

解体作業中の村人たちは血塗れで悪臭を放ちながらも頑張って巨大な魔物の死体と格闘していた。
今日の肉もダメそうだ。
そしてまあこの状況でだいたい察した。
まず解体されてる魔物だが、獲ってこられたのは結構前のはずだ。それを氷とか雪とかが詰め込まれてる倉庫で保管されて今解体されてるわけだが、獲れてから今までとくに何か処理されてはいなかったのだろう。血抜きも不十分で内臓も抜かれてない。
だから肉に臭みが移ってやばい事になってるわけだろう。

「肉を貰いに来たんじゃないんだが、ちょっと倉庫の中見せてもらうぞ」

村人に断ってから倉庫の中に入り保管されてる他の魔物の死体を確認してみると、ちゃんと処理をされてるのは1/4程度、あとはほぼ処理されないまま置いてあった。

「なあ、ほとんどの魔物が処理されないまま置いてあるのなんで?」
「作業が追いつかなかったんだべ、ジェシカちゃんどんどん狩って来ちゃうもんだからさ。村の周りから危ない魔物いなくなったから助かったんだけどもねー」

なるほどねー。切り裂き魔が張り切った結果かー。
魔物の大きさは1メートルぐらいのやつからでかいのは4メートルを超えるような奴まで様々。それなりに大きさがあるから、魔物の処理はたとえ力の強い獣人の村人たちでも結構な重労働だ。立て続けに魔物獲ってこられたら作業追いつかなくもなるか。
でも切り裂き魔も村の為を思ってやった事だろうし、普通に村の周りに魔物いすぎだし、村のためにはなっている。ペースを考えろとこっちの都合だけ押し付けるわけにもいくまい。
だが魔物肉の状態を確認して改善案も分かった。

「肉ひと切れもらうぞ」
「一切れと言わずタイガさんならどんどん持ってっていいだべ」
「いや、ひと切れで」

今解体中の魔物肉をひと切れもらってそれに浄化と消臭の魔法を施してから焼いて食べてみる。

「んー・・・まだマシか?」

いつも肉を食う時に気になっていた臭いに関しては魔法のおかげで消えたのだが、肉本来の風味までかなり消えてしまっているように思う。
魔物肉はクセが強いのも多いから食べやすくはなっているがなんとも味気なくなっている。
塩とかかけてないしそれも要因か。

「何やったんだべ?」
「美味しくなる魔法?」
「そんなんじゃねえよ」

村人たちが俺の行動が気になっていたようなので、居合わせた村人たちにも試食させてみた。

「すげーー!!食える!」
「うめー!!」
「美味くはないだろ」
「でも食えるべ!タイガさんすごい人だべ!」

村人たちはめちゃくちゃ感動していた。
やっぱりみんなこの肉食うのは嫌だったんだな。
そんじゃまあ肉の解決策はこの方向で確定として、臭い肉を食えるようにする魔道具を作ろう。

まずはこないだ採ってきた石材ブロックから2メートル四方で板を切り出して、表面に浄化と消臭の金剛魔法の魔道具用の魔法陣を描いて表面を掘り込んだ。
これだけでは未完成で魔法陣部分は魔力を通しやすい物質にする必要があるので今度はそれを作る。
炭焼き窯に行き、相変わらず粘土遊びをしてるサルから粘土と釉薬の原料を分けてもらった。
そしてまた解体作業場に行き魔物の骨と血を分けてもらい、その後で村中回って空になった魔石も回収した。
最早普通に仕事してる感じになっているのはもう気にしない。
集めてきた骨と魔石は細かく砕き魔物の血とちょっと魔法素材として弱そうだったから俺の血も混ぜてから水分がなくなり焦げ付くまで火にかけて、更に細かく粉状になるまですり鉢で粉砕してから粘土と釉薬の材料と一緒にしっかり混ぜ合わせた。
普段魔法陣作成に使う魔法インクの代わりの魔法粘土である。
出来上がったものを石の板に掘り込んだ魔法陣の溝に埋め込んで魔法で徹底乾燥、あとは高温で焼くだけ。

「なんだかんだ仕事してるじゃん」
 錦秋百景茜燦燦紅紅葉大瀑布きんしゅうひゃっけいあかねさんさんくれないもみじだいばくふ
「は?」

忙しなく村中を走り回ってたからかザーグにも仕事してると突っ込まれたが無視して俺が使える火属性の魔法で一番火力出そうな上級魔法を発動。
魔法陣を描いた石の板の上に巨大な炎の滝が出現し辺り一帯を燃やし、大量の火の粉が弾け火花を散らして魔法名通りの光景を作り出した。

「あっつ!!!おい!いきなりこんなやばい魔法使うな!アホ!!」
「錦秋百景茜燦燦紅紅葉大瀑布」

火力はかなり出ているのだが、やはり窯とかじゃないから温度が安定せず、粘土をしっかり焼き切るにはちょっと威力不足を感じたので、魔法発動中ではあるがもう一発重ねがけする。
炎の滝の中心は黄金色に輝き、200メートルほど距離を取っていたのに俺のいる場所も肌が焦げるような強烈な熱が伝わってくる。流石に普通に死ぬ環境なのでザーグを水で包んで熱から守る。

「ははは!いいね!爽快爽快!」

俺の普段使う魔法ってそんなに派手なものがないしたまにはこんないかにも強力な攻撃魔法使うと気分も上がる。

「こらー!何やってんの!村の方まですごい熱波来てるんだけど!」

上級魔法をテンション高く見守っているとシモンとラグナが血相変えてとんできた。

「何って焼き物、でも確かに想定以上に火力上がっちまったな、ほい」

村から離れた場所で魔法使ったのだが、いつもの如く想定の甘かったようだ。
炎の上級魔法を囲うように水の壁を作って熱を遮断。解決!

「対策出来るならよし!しかし景気のいい魔法だねー」
「よし!じゃないですよ!村人たち怯えてるから!」
「まあ普通の町でやったなら処刑案件だけどね」
「俺だってその辺は弁えてるし」

魔法による犯罪やテロって割と少なくはない。でも強い魔法を使うと残留魔力とか調べられて結構あっさり犯人特定される。それに俺みたいに強力な魔法になれた奴以外は上級魔法の発動に何時間もかかり、発動前に気づかれて摘発されたりと、ちゃんと町の警備が機能してれば大事になる事は少ないと聞く。
そしてもしも実際やらかしてしまった場合は普通の犯罪よりも罪が重くなるのは魔術師の中では常識だ。
俺だって犯罪者になりたいわけじゃないから普通ならこんな事はしたりしない。
この村ならまだ何やっても許されそうだからこそだ。

「お前の奔放さで住人を怯えさせていい訳がないだろう馬鹿者が!」

ベリルには許されなかった。
鬼のような形相でない手足を魔法で作り出して歩いてきてキレている。

「ベリルが歩いてる!!」
「そんな事は今はどうでもいい!タイガ!力を持つものの振る舞いとして正しいといえるのか?これを是とするならば、大恩のあるお前でも俺はお前を否定するし、これ以上この村には関わらせるわけにはいかない!」
「!」

大正論だった。俺の行動は一応村人のことを思っての事だが怯えられてしまってはやってる事は意味をなさないし、信頼もなくなる。
今後村人たちは俺を怖がり顔色伺うようになるだろう。いや、今でも割とそうなのだが、これが決定打になる。
これじゃ俺が恐怖政治行なってるようなもんで、村人たちの心はいつまでも自由にならない。

「すまん!」
「俺に謝ってどうする!」
「すまん!」

最早謝ってなんとかなるのか怪しいやらかしだが俺はまた村中駆け回り村人たちに謝りまくった。
休むと言ったのに全く気が休まらねえ!
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