黄昏一番星

更科二八

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1章 呪いの女

208話 朝練

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「りゃぁぁぁ!」

早朝の兵舎にエドガーの気合のこもった声が響く。
エドガーの切り込みに対して身を交わしつつ、モーガンは足払いをかける。
それをエドガーは読めていたとばかりに余裕で交わし追撃をかける。

「読めてゔぇああ!」

エドガーは突っ込んだ先にしれっと置かれた剣の先に慌てて体制がやや崩れた。
そこにモーガンの追撃の足払いと見せかけていた蹴りが良い感じに入る。
重心を崩したエドガーに体重の乗った熊獣人の蹴りが入るとエドガーはゴロゴロと転がり吹き飛んでいった。
これで今日5回目だ。

動きつつも氣で相手の動く方向も読めているのだが、まだまだ駆け引きがさっぱり弱い。
モーガンはエドガーの思考を徐々に奪い行動を狭めていっている。
勝てる状況になるようにしっかりと組み立ててから動いていっている。
エドガーは表面的な動きばかりに気が取られて1番の狙いに気付けないでいる。
俺が言わなくても身に染みているだろう。

「くそー全く俺のやりたいようにできないな」
「そりゃそうだよー、相手に好きにさせたら負けるでしょ」

全くその通りだ。
俺も耳が痛い。

「2人とも、その辺でそろそろ今日の仕事始めるっすよー」
「ちょっと水浴びしてくるー」
「俺もー」

1時間ほど撃ち合いをしていたので2人とも汗をかいているしエドガーは土埃に塗れている。
あの2人で水浴びは初めてだ。
モーガンちょっとデカそうなんだよな。
俺が昨日エドガーにあげた温風の魔道具も使うんだろうな。
水浴びのことは予想できてた。それに合わせて俺の鍛錬もしてれば一緒に行けたのだが、エドガーの剣を見ることを優先したので俺は汗一つかいていない。
後でどうだったか聞こう。

「昨日スズナはどうだった?」
昨日俺たちと別れてトレイとモーガンは作った名簿をスズナに持っていっている。
「朝と変わらずな様子っすね。先にできた分持ってったのはやっぱり良かったみたいだったっす。エドガーが協力してくれてること伝えたら報酬はちゃんとくれるって言ってたっすよ」
「俺は?」
「考えとくだそうっす」
「うーんまあ俺が言い出しっぺだしなー。でもタダ働きすぎるのもなんか癪だな。切り裂き魔とか教皇の分もまだもらってねえし」
「あーやっぱり教皇捕まえたのってタイガだったんすね。
教皇の調査時間かかりそうだし国からの報酬になるっすからね、数ヶ月はかかると思うっす」
「そんなにかーまあ良いや」

スズナの方には金が時間かかるなら現物でも良いからなんかくれって言ってみるかな。
聖女のこと終わってから。

「そいや、教皇の手下のこと聞いたぞ。竜人の奴だけ釈放なんだな。てっきり3人で魔王領かと思ってたぞ」
「3人揃って行かせた方が生き残れそうっすけどね。犯罪歴のない奴を魔王領送りにはできないという事じゃないっすか。
この国では魔王領送りはかなり重い罰っすもん」
「ほーそうなんだな」
「魔王領の方まで山道は続いてるっすけど、管理されてはないし歩いて人里までたどり着くとなると1月ぐらいかかるみたいっす。ほぼ死ににいくようなもんっす。
切り裂き魔とか魔物の対処はできそうっすから頑張れば生き残れるかもっすね」

魔王領はこの街からしばらく北にある大きな山脈を越えた先ににある。
割と違い距離なのでふらっと行けるもんだと思っていたが人里までそんなに遠いんだな。
魔王領の首都となると更にずっと遠い。
俺が元いた九孫からずっと真北に進むとあると言われてた。九孫を出てこの街まで8ヶ月ぐらいかけてたどり着いたから魔王領首都もそのぐらいかかりそうだ。
魔王領は広い、この大陸の半分ほどあると言われている。
切り裂き魔たちは魔王領に送られてどうするだろうな。
そのまま魔王領で生きていくのか、魔王領を抜けてこの国の隣国へ向かうのか。
もう会うこともないだろうから気にしてもしょうがないか。

「竜人のやつは腕も立つならそのうちどっかで噂くらいは聞くかもな」
「リーガルって名前っすよ」
「そうか、噂を聞けば思い出すかな」
「覚えないんすね」
「そんなに関わりない奴らはなーなかなか覚えきれん」

魔法学園の下働きは教授と学生の名前は覚えろと言われていたが一生無理だったからな。

「俺は結構得意っすよ。むしろ趣味っす」
「良い特技じゃないか。今もこうやって辺境伯婦人直々に仕事頼まれるぐらいだしな」
「そっすね!」

トレイもモーガンも兵士の顔見ただけで迷わず名簿と一致させていくからほんと凄いと思う。
働き者だしどんどん評価されていってほしいな。
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